本資料は、米バイオジェン社が 2017年1月13日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

ヌシネルセンが乳児期発症型脊髄性筋萎縮症の死亡または永続的な人工呼吸器装着リスクを有意に低減したことを示す新データを発表

英国小児神経学会の年次会議で主要評価項目の臨床試験終了時解析データを発表

マサチューセッツ州ケンブリッジ – 2017年1月13日:バイオジェンはSPINRAZA™(一般名:ヌシネルセンナトリウム)の第III相ENDEAR試験で得られた新データを発表しました。この新データは、ヌシネルセンによる治療を受けた脊髄性筋萎縮症(SMA)の乳児の死亡リスク、または永続的な人工呼吸器装着のリスクが、治療を受けなかった乳児に比べて統計学的に有意に低下したことを示したものです。これらのデータは、英国ケンブリッジで1月11日から13日まで開催された英国小児神経学会(BPNA)の年次会議で発表されました。

2016年8月、バイオジェンはENDEAR試験の中間解析で、あらかじめ規定されていた主要評価項目である「ハマースミス乳児神経学的検査(HINE)で測定した正常運動発達到達の比率」において当初の目標が達成されたと報告しました。このポジティブな中間解析を受けて、バイオジェンは同治験を早期に終了させ、全治験参加者が非盲検延長試験においてヌシネルセンの投与を受けられるようにしました。1月13日、バイオジェンは治験終了時(EOS)解析で得られたあらかじめ規定されていた主要評価項目である「死亡または永続的な人工呼吸器装着までの期間」を初めて発表しました。BPNAで発表されたこれらEOS最終結果は、治験終了を発表した後、患者さんの最終来院時に得られたデータを含むものであり、中間解析には反映されていなかったものです。

バイオジェンの臨床開発部門シニア・メディカル・ディレクターであるWildon Farwell, M.D., M.P.H.は次のように述べています。

「ENDEAR試験はポジティブな中間解析結果に基づいて中止されましたが、この試験ではヌシネルセンによる治療を受けなかった乳児に比べ、治療を受けた乳児では、明らかにより多くの乳児が生存していること、それらの乳児が永続的な人工呼吸器装着を必要としなかったことが示されています。これらのデータは、ヌシネルセンがこの非常に重篤な疾患の患者さん一人ひとりに与えうるインパクトを改めて強調するものです。今週、米国のSMAの患者さんたちが既にヌシネルセンによる治療を開始したことは大きな喜びであり、私たちは世界各国の規制当局と緊密に作業を続け、この治療薬を世界中の患者さんにできるだけ早くお届けしたいと考えています」。

ヌシネルセンは「ENDEAR試験EOS」において、死亡リスクまたは永続的な人工呼吸器装着リスクを47%低下させ、あらかじめ規定されていた主要評価項目を達成し、統計学的有意差を示しました(p<0.01)。このEOS解析では、ヌシネルセンによる治療を受けた乳児(39%)に対して、治療を受けなかった乳児ではより高い割合(68%)で死亡または永続的な人工呼吸器の装着を必要とするに至りました。

ヌシネルセンは忍容性のある安全性プロファイルを示しています。報告された多くの有害事象は呼吸関連のイベントや便秘であり、SMAの乳児の一般的な母集団で起きがちな症状の報告との一貫性を認めました。ENDEAR試験で今後得られるEOSでの有効性と安全性は、この先に実施される医学会議で発表される予定です。

ENDEAR試験は乳児期発症型(1型を発症する可能性が高い)SMAの患者対象の無作為化・二重盲検・シャム(偽処置群)対照試験です。EOSの有効性解析には全ての患者さん(n=121)が含められました。その中には中間解析後の最終治験来院患者さん(n=78)と、6カ月目の来院評価を受ける機会があった患者さんが含まれています。

ヌシネルセンの臨床試験プログラム状況
バイオジェンはヌシネルセンの世界的な開発・製造・商業化権を、アンチセンス治療のリーダーであるIonis Pharmaceuticals社(NASDAQ略号: IONS)からライセンス導入しました。バイオジェンとIonis社は革新的な臨床プログラムを実施し、2011年に臨床試験でヌシネルセンを初めてヒトへ投与し、2016年には規制当局による初の承認を獲得しました。

ENDEAR中間解析で得られた有効性と安全性のデータは、1、2、3型SMAの発症前および発症後の患者さんおよび今後発症する可能性のある患者さんの非盲検データと同様、米国においてFDAがヌシネルセンを小児患者と成人患者のSMA治療薬として承認したことの裏付けとなっています。それにより、SMAの患者さんにとっての世界で初めて承認された治療薬が世に出ることとなりました1

2016年10月、欧州医薬品庁(EMA)は10月にヌシネルセンの承認申請(MAA)を有効と認め、EMAのヒト用医薬品委員会(CHMP)が加速評価対象に指定しました。さらに、バイオジェンは、日本、カナダ、オーストラリアで既に承認申請を提出しており、2017年にはこれら以外の国々でも申請を開始する予定です。

SMA 2-6について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。最も重篤で生命を脅かす1型SMAの患者さんではSMNタンパク質がほとんど生成されず、支えなしに座ることや呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。2型と3型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重篤度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

SMAの疾患啓発支援のため、バイオジェンは米国で「Together in SMA」というプログラムを立ち上げ、SMA関係者に資料や情報提供を行っています。詳細は、https://www.togetherinsma.com/をご覧ください(USのみ)。
www.TogetherinSMA.jp/(日本のみ)。

ヌシネルセンについて
ヌシネルセンはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

ヌシネルセンはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるよう デザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります7。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、ヌシネルセンは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

ヌシネルセンは髄腔内注射によって投与されます。これにより、SMNタンパク質のレベルが不足することにより運動ニューロンの変性が起きている患者の脊髄の周囲の脳脊髄液(CSF)8に直接治療薬を届けています9

ヌシネルセンについて最も多く報告されている有害事象は、上気道感染、下気道感染、ならびに便秘です。重篤な有害事象としてヌシネルセン治療を受けた患者において無気肺がより多く報告されました。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されており、易出血性の危険性が増す症例の可能性があります。また、いくつかのASOでは、投与後に致死的糸球体腎炎発症の可能性を含む腎毒性が観察されています。ヌシネルセンは腎臓で同定、排泄されます。

バイオジェンについて
最先端の科学と医学を通じて、バイオジェンは神経変性疾患、血液疾患、自己免疫疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者様に提供します。1978年に設立されたバイオジェンは、世界で最も長い歴史のある独立したバイオテクノロジー企業の一つであり、多発性硬化症と血友病の治療法における先進性と革新性で世界中の患者さんに貢献しています。製品情報、プレスリリース、同社に関するその他の情報については、https://www.biogen.com およびバイオジェン社専用Twitter(https://twitter.com/biogen)をご覧ください。

Ionis Pharmaceuticalsについて
Ionis(発音:アイオニス)社はRNA標的化医薬品の発見と開発におけるリーディング企業であり、重篤な希少疾患など最もアンメットニーズの大きい患者さんのための医薬品開発に注力しています。Ionis社は独自のアンチセンス技術を使い、ファースト・イン・クラスとベスト・イン・クラスの医薬品の大規模なパイプラインを構築してきました。このパイプラインには12種類以上の中期から後期の開発品が含まれています。現在、第III相試験が行われている医薬品の中でもvolanesorsenについては100%子会社のAkcea Therapeuticsを通じての製品化を計画中です。Volanesorsenは家族性カイロミクロン血症症候群または家族性部分的リポジストロフィーの治療薬です。IONIS-TTRRxはIonis社がGSKと共同開発している医薬品であり、あらゆる形態のTTRアミロイドーシスの患者さんの治療薬です。ヌシネルセンはバイオジェンと共同開発中の、脊髄性筋萎縮症の乳児と小児対象の治療薬です。Ionis社の特許は同社の医薬品とテクノロジーを強力かつ幅広く保護しています。Ionis社についての追加情報は次のサイトで入手できます。www.ionispharma.com

参考文献
  1. Biogen. SPINRAZA USPI. December 2016. 
  2. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145. 
  3. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell. 1995;80(1):155-165. 
  4. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26. 
  5. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183. 
  6. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain. 2014;137(Pt 11):2879-2896. 
  7. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44. 
  8. Evers MM, Toonen LJ, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev. 2015;87:90-103.Evers MM, Toonen LJ, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev. 2015;87:90-103
  9. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133. .
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