バイオジェンの「スピンラザ®髄注12mg」
乳児型以外の脊髄性筋萎縮症(SMA)への効能追加承認取得

バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:鳥居慎一)は、「スピンラザ®髄注12mg」(一般名:ヌシネルセンナトリウム)について、乳児型以外の脊髄性筋萎縮症(SMA)の適応症で、本日効能追加承認を取得しましたことをお知らせします1

「スピンラザ®髄注12mg」は、乳児型SMA治療薬として、2017年7月3日に承認され、8月30日の薬価収載と同時に発売いたしました。この度、乳児型以外のSMAへの効能追加を受けたことで、欧米と同様、すべてのSMAの治療に使用できるようになりました。

スピンラザはSMA治療薬として開発され、日本で初めて承認されたアンチセンス核酸医薬品です。SMAは乳幼児の死亡の主要な遺伝的原因のひとつであり、進行性で筋力の低下を特徴としています2。乳児型SMAの適応症はオーファンドラッグ指定のもと、申請から約7カ月で承認されました。また乳児型以外のSMAの適応症についても、PMDAによる迅速審査のもと、追加申請から約5カ月で承認されました。

スピンラザの投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液(CSF)中に直接送達するものです3。SMA患者の脊髄では、サバイバルモーターニューロン(SMN)タンパク質の発現レベルが不十分なため、運動ニューロンが変性しています4

乳児型以外のSMA治療においては、初回投与後、4週及び12週に投与し、以降6カ月の間隔で投与を行います。(乳児型の場合は、初回投与後、2週、4週及び9週に投与し、以降4カ月の間隔で投与を行います)。

スピンラザが今回効能追加承認に至ったのは、日本も参加した多施設共同比較対照試験(CHERISH試験)の結果に基づくものです。CHERISH試験では最長15カ月にわたり、126名の乳児型以外のSMAの患者さんにおいて臨床試験を行いました。参加したのは、生後6カ月より後に発症し、スクリーニング時点で2歳から9歳だった患者さんでした。

CHERISH試験の中間解析データから、スピンラザの臨床的に有意義な有効性、および忍容可能な安全性プロファイルが示されています。CHERISH試験の中間解析においては、主要評価項目である投与開始後15カ月目におけるハマースミス運動機能スケール拡大版(HFMSE)スコアのベースラインからの平均変化量が、シャム対照群(-1.9)と比べ、スピンラザ群では4.0であり、統計学的に有意に高い改善を示しました(p=0.0000002)。

スピンラザは2016年12月23日、米国の食品医薬品局(FDA)によって初めて承認され、2017年5月にはEU、6月にはカナダ、8月にはブラジルでも承認されました。バイオジェンは承認申請をオーストラリア、スイス、イスラエル、韓国、アルゼンチンでも提出しており、さらにそれ以外の国でも申請を始める予定です。

SMA 4-8について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重症で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。
SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠失又は変異により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重症度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。1型SMAの患者さんは最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。2型と3型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重症度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

スピンラザについて
スピンラザはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。
スピンラザはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子の欠失又は変異による SMNタンパク質欠乏により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります9。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、ヌシネルセンは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

バイオジェンは、スピンラザを使用される患者さん・ご家族向けの情報提供サイト(https://www.pat.spinraza.jp/)を開設しました。また、スピンラザ情報提供のために医療関係者向けに情報提供サイト (https://www.spinraza.jp)、患者さん・ご家族への疾患に関する情報提供サイトとして、TOGETHER IN SMA(脊髄性筋萎縮症[SMA]とともに)(https://www.togetherinsma.jp)も開設しています。(なお、効能追加承認に伴うコンテンツは順次掲載予定です)

製品に関する概要

製品名 スピンラザ®髄注12mg
一般名(JAN) ヌシネルセンナトリウム
効能・効果 脊髄性筋萎縮症
用法・用量

乳児型脊髄性筋萎縮症

通常、ヌシネルセンとして、1回につき下表の用量を投与する。初回投与後、2週、4週及び9週に投与し、以降4ヵ月の間隔で投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。

乳児型以外の脊髄性筋萎縮症

通常、ヌシネルセンとして、1回につき下表の用量を投与する。初回投与後、4週および12週に投与し、以降6ヵ月の間隔で投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。

 

各投与時の日齢 用量 投与液量
0~90日齢 9.6 mg 4 mL
91~180日齢 10.3mg 4.3 mL
181~365日齢 10.8mg 4.5 mL
366~730日齢 11.3mg 4.7 mL
731日齢~ 12mg 5 mL

副作用

脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断された乳児を対象とした第III相シャム(疑似的)処置対照二重盲検試験(Study CS3B、日本を含む国際共同試験)において、本剤群80例のうち9例(11.3%)に副作用が認められた。主な副作用は発熱(2.5%)、頻脈、貧血母斑、蜂巣円、処置後腫脹、眼振、血管炎、体温低下、体温上昇(各1.3%)であった。

生後6ヵ月を超えてから発症した脊髄性筋萎縮症患者を対象とした第III相シャム処置対照二重盲検試験(Study CS4、日本を含む国際共同試験)において、本剤群84例のうち24例(28.6%)に副作用が認められた。主な副作用は頭痛(9.5%)、背部痛(8.3%)、発熱(7.1%)、腰椎穿刺後症候群(2.4%)、嘔吐(2.4%)であった。

製造販売承認日 2017年7月3日
効能追加承認日 2017年9月22日
薬価
9,320,424円(4カ月毎、年3回投与における年間薬剤費は27,961,272円。乳児型以外の場合、年2回投与における年間薬剤費は18,640,848円。)(2017年8月30日薬価収載)
製造販売元 バイオジェン・ジャパン株式会社

バイオジェンについて
最先端の科学と医学を通じて、バイオジェンは重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年に設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のパイオニアであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

バイオジェン・ジャパンについて
バイオジェン・ジャパンは、米国バイオジェンの日本法人です。世界で最も歴史のある独立系バイオテクノロジー企業の日本法人として、日本では2000年より事業を展開しています。バイオジェン・ジャパンに関する情報については、https://www.biogen.co.jpをご覧ください。

参考文献
  1. Farrar MA, Kiernan MC. The Genetics of Spinal Muscular Atrophy: Progress and Challenges. Neurotherapeutics; 2015; 12:290–302.
  2. Evers MM, Toonen LJ, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev. 2015;87:90-103.
  3. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133.
  4. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
  5. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell.1995;80(1):155-165.
  6. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26.
  7. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183.
  8. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain.2014;137(Pt 11):2879-2896.
  9. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
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