本資料は、米バイオジェン社が 2017年11月1日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

THE NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE誌が脊髄性筋萎縮症治療薬スピンラザの第III相試験結果を掲載

  • 世界初で唯一承認されている脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬、スピンラザはこれまでで最大規模の質の高いSMA臨床開発プログラムに支持されている
  • ENDEAR試験でスピンラザによる治療を受けた多くの乳児は、対照群の無治療の乳児と比較して、設定運動マイルストーンを達成した
  • スピンラザはSMAの乳児における死亡、または永続的な人工呼吸器装着のリスクを有意に減少した

米マサチューセッツ州ケンブリッジおよびカリフォルニア州カールスバッド、2017年11月2日-バイオジェン(NASDAQ略号BIIB)とIONIS Pharmaceuticals社(発音:アイオニス、NASDAQ略号IONS)は、脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬スピンラザ(一般名:ヌシネルセン)の第III相試験であるENDEARの最終結果が、The New England Journal of Medicine(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン)誌に掲載されたことを発表しました。スピンラザは世界初のSMAに対する遺伝子修飾薬です。The New England Journal of Medicine誌の11月2日号に掲載されたのは「乳児期発症型脊髄性筋萎縮症におけるヌシネルセンvs.シャム対照比較試験」と題する論文の全文です。

「ENDEAR試験の結果がThe New England Journal of Medicine誌に掲載されたことは、スピンラザの臨床的有効性と安全性を裏付けるものであり、進行性で致死的状況に至ることのあるSMA患者さんに対する、画期的な新薬の可能性を強調するものです」と、米フロリダ州オーランドにあるヌムール小児病院小児科医長のリチャード・フィンケル医学博士は述べています。「一人の医師として、この治療薬がSMAの患者さん一人ひとりとそのご家族に提供しうる深いインパクトを私はつぶさに目にしました。スピンラザの開発に貢献できたことを誇らしく感じています。この治療薬がSMAのコミュニティに初めて本当の意味での期待感をもたらすことをこの目で確かめたのですから」。

ENDEAR試験には予め設定された主要評価項目が2点ありました。ハマースミス乳児神経学的検査(HINE)による運動マイルストーンカテゴリーの改善を示す「運動マイルストーンレスポンダーの比率」と「死亡または永続的な人工呼吸器の装着に至るまでの期間」でした。今回の最終解析では、無治療の乳児に比べ、スピンラザによる治療を受けた乳児の多くが主な運動マイルストーンのレスポンダーであり、首がすわる、寝返りを打つ、一人で座る、または立つといった機能改善を示しました(51% vs. 0%, P<0.001)。

スピンラザは、最終解析において、予め設定された主要評価項目である「死亡または永続的な人工呼吸器の装着に至るまでの期間」について、死亡または永続的な人工呼吸器の装着に至るリスクを、統計学的に有意に減少(47%、P=0.005)させました。発症からの期間が短い患者さんにおいては、同リスクを76%減少させました。

スピンラザは好ましい安全性のプロファイルをも示しました。安全性データはSMA乳児の一般的な母集団で見られるデータとほぼ同様でした。また、乳児期発症型SMAにおけるオープンラベル試験で報告されたデータとも一貫性がありました。

「The New England Journal of Medicine誌に掲載されたデータは、スピンラザが世界初のSMAに対する遺伝子修飾薬であり、すでにいくつもの国で承認済みのSMA治療薬として患者さん一人ひとりにもたらし得るベネフィットをさらに強調するものです。ENDEAR試験の終了時には、スピンラザによる治療を受けた乳児の大半が、年齢や疾患のステージに関わらず臨床的に意義あるベネフィットを示しました」とバイオジェンのエグゼクティブ・バイスプレジデントであるアルフレッド・サンドロック MD, Ph.D.は述べています。「私たちは、研究者、臨床試験担当医、試験に参加して下さった患者さん一人ひとりとご家族に対し、言葉に尽くせないほど感謝しています。この方々は今後もSMA治療における史上最大規模の臨床開発プログラムに貢献を続けてくださっています」。

「本試験の結果は、スピンラザにはSMA患者さんの疾患の経過にインパクトを与えるポテンシャルがあることを示すものです」と、IONIS社の研究開発担当シニアバイスプレジデント兼神経疾患フランチャイズのリーダーであるC.フランク・ベネットPh.D.は述べています。「スピンラザは世界初のSMAに対する遺伝子修飾薬です。アンチセンス技術の可能性が、現在のところ治療選択肢がない他の神経疾患の患者さんの治療にも応用できる日を心待ちにしています」。

スピンラザの臨床開発プログラムには5年間以上にわたるデータが含まれており、SMAにおける治療介入における世界最大のエビデンスを構築しています。ポジティブな中間解析結果を得て、バイオジェンはENDEAR試験をその段階で中止し、参加していたすべての被験者がSHINEオープンラベル延長試験でスピンラザの投与を受けられる体制をとりました。SHINE試験はもとより、バイオジェンはより多くのデータの収集と評価を続けています。それによりSMA母集団全般におけるスピンラザの有効性と安全性を、より深めることができると考えています。

バイオジェンは、スピンラザを使用される患者さん・ご家族向けの情報提供サイト(https://www.pat.spinraza.jp/)、スピンラザ情報提供のために医療関係者向けに情報提供サイト(https://www.spinraza.jp)、さらには、患者さん・ご家族への疾患に関する情報提供サイトとして、TOGETHER IN SMA(脊髄性筋萎縮症[SMA]とともに)(https://www.togetherinsma.jp)も開設しています。

ENDEAR試験について
ENDEAR試験は無作為割付け、二重盲検シャム処置比較対照による、乳児期発症型脊髄性筋萎縮症(SMA)患者さんを対象とした13カ月間の試験です。本試験の最終解析は、中間解析(n=78)後に最終の施設訪問を行い、かつ6カ月後の施設訪問時評価を受けたすべての患者さん(n=121)を含みます。ENDEAR試験は2つの主要評価項目を設定していました。一つ目はハマースミス乳児神経学的検査(HINE)のレスポンダーの改善率です。もう一つは、死亡あるいは永続的な呼吸器装着(気管切開または1日16時間以上の呼吸器装着が急変なく21日間以上継続する状態)に至るまでの期間でした。

スピンラザの臨床試験プログラム進捗状況
スピンラザは、SMA治療薬として承認された最初の医薬品で、現在、米国、EU、ブラジル、日本、スイス、カナダにおいて承認されています。その他の数カ国でも申請中であり、また追加的申請を計画中の国も数カ国あります。

バイオジェンはスピンラザの全世界における開発、製造、販売について、アンチセンス治療におけるリーダーであるIONIS Pharmaceuticals社よりライセンス供与を受けています。バイオジェンとIONIS社は革新的な臨床開発プログラムを実施し、2011年に行われたスピンラザのヒトへの最初の投与から5年で、規制当局による最初の承認を実現しました。

SMA 1-5について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。1型SMAの患者は最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。2型と3型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重篤度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

スピンラザについて
スピンラザはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

スピンラザはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります6。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、スピンラザは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

スピンラザの投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液(CSF)中に直接送達するものです7。SMA患者の脊髄では、サバイバルモーターニューロン(SMN)タンパク質の発現レベルが不十分なため、運動ニューロンが変性しています8

スピンラザは好ましい有効性と安全性のプロファイルを示しました。スピンラザについて最も多く報告されている有害事象は、上気道感染、下気道感染、ならびに便秘です。重篤な有害事象としてスピンラザの治療を受けた患者において無気肺がより多く報告されました。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されており、易出血性の危険性が増す症例の可能性があります。また、いくつかのASOでは、投与後に腎毒性が観察されています。ヌシネルセンは腎臓に分布した後、排泄されます。

バイオジェンについて

神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートと フィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、神経免疫疾患、運動性疾患、神経筋障害、痛み、眼科、神経精神医学といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。

当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

IONIS(アイオニス)社について
IONIS社はRNAを標的とした医薬品の研究開発のリーディングカンパニーであり、アンメットメディカルニーズの高い難病や希少疾患に特化した開発を進めています。自社が保有するアンチセンス技術を駆使し、IONIS社はファーストインクラスまたはベストインクラスの医薬品の豊富なパイプラインを創り、現在36以上の医薬品が開発中です。

スピンラザ(一般名:ヌシネルセンナトリウム)は世界各国で脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬として承認されました。バイオジェンがスピンラザの製品化を実施しました。すでに第III相試験を成功裏に終了した候補化合物には、アンチセンス薬で遺伝性TTRアミロイドーシス(hATTR)治療薬として開発中のinotersen、IONIS社が発見し、Akcea Pharmaceuticals社と共同開発したアンチセンス薬で家族性の乳糜血症 または家族性の脂肪異栄養症の治療薬として開発されているvolanesorsenがあります。Akcea社は、IONIS社の子会社で、重篤な脂質異常による心血管代謝疾患を治療する医薬品の開発ならびに製品化に特化したバイオ製薬企業です。承認されれば、volanesorsenは子会社であるAkcea社より発売される予定です。Volanesorsenの製造販売承認申請は米国、EU、カナダで提出済です。Inotersenは製造販売承認申請に向けて準備中です。IONIS社の医薬品ならびに技術は特許により保護されています。IONIS社に関する情報は以下をご覧ください。www.ionispharma.com

参考文献
  1. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
  2. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell.1995;80(1):155-165.
  3. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26.
  4. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183.
  5. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain.2014;137(Pt 11):2879-2896.
  6. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
  7. Evers MM, Toonen LI, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev.2015;87:90-103.
  8. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133.
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