本資料は、米バイオジェン社が 2018年4月20日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

バイオジェンとIONIS社がより広範な神経科学領域の医薬品開発に向けて戦略的提携を拡大

  • 提携拡大により、スピンラザ®および現在臨床試験中の2つのアンチセンス医薬品候補を生み出した協力関係がさらに発展するとともに、最大で7つの新たな医薬品候補を今後2年間のうちに臨床試験に進めることができる可能性を創出する。
  • IONIS社が開発したアンチセンスの基盤は、スピンラザの成功により遺伝子ベースの治療法として確立・立証されている。また、治療が不可能な数々の神経科学領域の疾患に効果を発揮する可能性を秘めている。
  • バイオジェンはIONIS社にキャッシュで10億ドルを支払う。その中にはIONIS社株式の取得と前払い一時金が含まれる。これは医薬品業界で探索段階としては最も意義ある提携関係のひとつである。

米マサチューセッツ州ケンブリッジおよび米カリフォルニア州カールスバッド発、2018年4月20日-バイオジェン(NASDAQ略号BIIB)とIONIS Pharmaceuticals(発音:アイオニス・ファーマシューティカルズ、以下IONIS社)(NASDAQ略号IONS)は、新たな今後10年間の提携契約を通じて両社の戦略的提携を拡大したことを発表しました。本契約は、広範な神経科学領域の疾患のために新規アンチセンス医薬品候補を開発することを目的としたものです。この提携は、バイオジェンのニューロサイエンス研究と医薬品開発における専門知識と、IONIS社のRNAを標的とした治療薬開発におけるリーダーシップを活用することで、より広範なパイプラインの開発を目指すものであり、脊髄性筋萎縮症(SMA)の世界初で唯一の疾患修飾薬であるスピンラザを生んだ効果的な提携関係に基づくものです。

今回の提携に基づき、バイオジェンはIONIS社にキャッシュで10億ドルを支払いますが、うち6億2500万ドルはIONIS社の普通株式1150万1153株の取得に充当します。買取り価格は約25%のキャッシュプレミアム付きで、1株当たり54.34ドルです。また、前払い一時金は3億7500万ドルです。バイオジェンには本提携で開発される治療薬候補をライセンスするオプション権を保有し、開発と製品化に責任を持つことになります。さらに、バイオジェンはマイルストン、ライセンス料、および純売上高に応じたロイヤルティを支払う可能性があります。

両社は、現在まだ治療選択肢の少ない広範な神経科学領域の疾患をカバーするプログラムを進める計画を立てています。疾患領域としては、認知症、神経筋疾患、運動障害、眼科学、内耳疾患、および神経精神医学が含まれています。本提携において、IONIS社はアンチセンス医薬品候補の同定を担当します。一方、バイオジェンは非臨床試験、臨床開発、製造、および製品化を担当することになります。

バイオジェンのミシェル・ヴォナッソス最高経営責任者(CEO)は次のように述べています。「バイオジェンとIONIS社は、医療ニーズがまだ満たされておらず、かつニーズが高まり続けている神経科学領域の疾患をもつ人々に新たな治療選択肢をお届けするためのコミットメントと情熱を共有しています。今回の新たな提携は、当社のニューロサイエンス領域のパイプラインを大きく拡大するものであり、それがバイオジェンの能力を高めます。IONIS社のアンチセンス基盤の恩恵をもたらすと思われる疾患は数多くありますので、両社の非常に生産的な提携関係を今こそさらに発展させる時と考えています。それにより、世界の神経科学領域の疾患の治療を大きく変えるという目的が達成できるからです。」

IONIS社のCEO兼会長であるスタンリーT.クルック医学博士は次のように述べています。「新しいアンチセンス医薬品を開発して神経科学領域の疾患を治療するのに、バイオジェン以上のパートナーはありえません。こうした困難な疾患に対する医薬品の開発におけるバイオジェンの粘り強さ、集中力、イノベーションへのコミットメントは証明済みであり、他社の追随を許さないものです。バイオジェンはこうした特徴を備えている上に、神経科学領域の疾患に投資してきたことが、両社が既に達成した成果に貢献してきています。当社とバイオジェンは協働により、いずれも単独では達成できなかったであろう事柄を成し遂げてきました。両社は共同で堅固な神経科学領域の疾患フランチャイズを創造することが可能です。これには、IONIS社のアンチセンス技術が大きく役立ちますし、スピンラザの大成功によりすでに立証されています。今回の新たな提携により、バイオジェンとIONIS社にとってさらに強力なパイプラインを構築するための将来的な成功の可能性がもたらされます。治療薬がない疾患の患者さんのニーズに応え、恩恵がもたらされるとともに、IONIS社の株主にも価値を還元できる希望が生まれるということです。この新たな提携の経済的諸条件、前払い一時金、マイルストン支払、およびロイヤルティは、バイオジェンとの従来の提携と比べて高い対価の契約になっています。このことは、IONIS社のアンチセンス技術基盤を神経科学領域の疾患に適用するに当たって私たちが創造した価値を証明するものです。バイオジェンの弊社株式への投資は同社のIONIS社、アンチセンス技術、本提携の成功へのコミットメントを反映するものです」。

バイオジェンの研究開発担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのマイク・エーラーズ(MD, Ph.D)医学博士は次のように述べています。「スピンラザの変革的な成功は、アンチセンス医薬品が、これまで治療不可能とされてきた多くの中枢神経系疾患に対する効果を持つ、ということに対する私たちの自信を深めてくれました。アンチセンスオリゴヌクレオチドには、疾患の遺伝学的発生原因に対して直接介入する能力があることから、私たちは、このアプローチは従来の医薬品開発よりも成功率が高く、治療選択肢が皆無またはほとんどない疾患の患者さんをより早く救う医薬品の開発を効率的に進める可能性があるのではないかと考えています。私たちの経験では、アンチセンス医薬品は数々の遺伝性疾患や神経科学領域における標的に対して望ましい治療薬だと思われます」。

IONIS社の研究担当上級副社長で神経学プログラム担当フランチャイズ・リーダーのC.フランク・ベネット博士は次のように述べています。「当社がバイオジェンと協働することにより、両社それぞれにとって有意な価値が提供されています。私たちは、神経科学領域の疾患とその治療薬の優れた開発戦略についてさらに理解を深める必要がありますし、さらに学び続けねばならないのです。バイオジェンはバイオマーカーを有効にして新しい臨床試験エンドポイントを開発するため、私たちと協働してきました。IONIS社は、当社のアンチセンス基盤、およびこの力強い薬物治療方法の神経科学領域の疾患に対する大きなポテンシャルをバイオジェンが理解するための手助けをしてきました。今後私たちはIONIS社のアンチセンス技術をさらに進展させることに集中します。また、神経科学領域の疾患に対する治療薬の力強い流れを作り出すことに注力します。これはバイオジェンと当社独自の神経科学領域の疾患ポートフォリオの両方に役立つことです」。

今回の提携は、慣例的な締結条件の対象となります。その中には、米国で1976年に成立したハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法の下で適用可能な待機期間の満了が含まれています。

バイオジェンとIONIS社は、本契約が、2018年度第2四半期中に成立するものと見込んでいます。ニコラウス&カンパニー社がこの取引の財務上の顧問を務めています。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経科学領域の疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープらにより設立されたバイオジェンは、世界で最も歴史のあるバイオテクノロジー企業の一つであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、SMAの唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、神経免疫疾患、運動性疾患、神経筋障害、痛み、眼科、神経精神医学といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。
当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体Twitter, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。

IONIS(アイオニス)社について
IONIS社はRNAを標的とした医薬品の研究開発のリーディングカンパニーであり、アンメットメディカルニーズの高い難病や希少疾患に特化した開発を進めています。自社が保有するアンチセンス技術を駆使し、IONIS社はファーストインクラスまたはベストインクラスの医薬品の豊富なパイプラインを創り、現在40以上の医薬品が開発中です。スピンラザ(一般名:ヌシネルセンナトリウム)は世界各国でSMAの治療薬として承認されました。バイオジェンがスピンラザの製品化を実施しました。すでに第III相試験を成功裏に終了した候補化合物には、アンチセンス薬で遺伝性ATTRアミロイドーシス(hATTR)治療薬として開発中のinotersen、IONIS社が発見し、Akcea Pharmaceuticals社と共同開発したアンチセンス薬で家族性の乳糜血症 または家族性の脂肪異栄養症の治療薬として開発されているvolanesorsenがあります。Akcea社は、IONIS社の子会社で、重篤な脂質異常による心血管代謝疾患を治療する医薬品の開発ならびに製品化に特化したバイオ製薬企業です。承認されれば、volanesorsenは子会社であるAkcea社より発売される予定です。Volanesorsenの製造販売承認申請は米国、EU、カナダで提出済です。Inotersenは製造販売承認申請に向けて準備中です。IONIS社の医薬品ならびに技術は特許により保護されています。IONIS社に関する情報は以下をご覧ください。 www.ionispharma.com 

スピンラザについて
スピンラザはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

スピンラザはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります1。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、スピンラザは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

スピンラザの投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液中に直接送達するものです2。SMA患者さんの脊髄では、SMNタンパク質の発現レベルが不十分なため、運動ニューロンが変性しています3

スピンラザは好ましい有効性と安全性のプロファイルを示しました。スピンラザについて最も多く報告されている有害事象は、上気道感染、下気道感染、ならびに便秘です。重篤な有害事象としてスピンラザの治療を受けた患者において無気肺がより多く報告されました。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されており、易出血性の危険性が増す症例の可能性があります。また、いくつかのASOでは、投与後に腎毒性が観察されています。ヌシネルセンは腎臓に分布した後、排泄されます。

参考文献
  1. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
  2. Evers MM, Toonen LJ, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev. 2015;87:90-103.
  3. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133.
CA-JPN-0131