本資料は、米バイオジェン社が 2018年6月13日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

バイオジェン、Cure SMA年次総会でデータを発表
SMA研究へのコミットメントを強化

  • 研究にはSMA患者さんの幅広い母集団での臨床試験データが含まれ、SMAとスピンラザ®(一般名:ヌシネルセン)についての科学的な理解を促進。
  • 発表する試験では、SMAのバイオマーカー候補としてのニューロフィラメント(神経細糸:pNF-H)を検証。今後の研究へのベネフィットとともに、疾患への理解が深まる可能性。

米マサチューセッツ州ケンブリッジ[2018年6月13日]‐バイオジェン(NASDAQ略号:BIIB)は2018年度「Cure SMA年次総会」(米国最大のSMA患者団体)でバイオジェンのスピンラザ臨床試験で得られたデータを発表いたしましたのでお知らせします。この臨床試験は最大級のプログラムであり、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する6年以上のデータを蓄積しています。同会議は6月14日から17日まで米テキサス州ダラスで開催されます。

バイオジェンのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼チーフ・メディカルオフィサーであるアルフレッド・サンドロックM.D., Ph.D.は次のように述べています。「Cure SMAは、本疾患の科学的理解を促進し、SMAの患者さんとご家族の生活と人生を改善しています。その活動に貢献できることは、私たちにとってこの上ない誇りです。発表されるデータには、疾患による負担、スピンラザによる治療、血漿中のリン酸化ニューロフィラメント重鎖(pNF-H)、およびSMAの臨床的特性などの解析が含まれており、今後のSMAの研究と治療の発展に寄与する可能性があります。私たちは、世界初にして唯一承認されたSMA疾患修飾薬であるスピンラザ(一般名:ヌシネルセン)についての新たに蓄積する最新の情報を、あらゆる年齢層のSMA患者さんに提供し続ける所存です。同時に、この難病に対する治療薬候補のポートフォリオを構築してまいります」。

このCure SMA年次総会でのプレゼンテーションには、バイオジェンの非盲検試験からの最新のデータや病院でのケアとバイオマーカーの可能性に関するデータが含まれており、SMAの患者さんの幅広い母集団に及ぶスピンラザの有効性を繰り返しお伝えするとともに、この疾患ならびに治療選択肢についての科学的理解を広めるものです。ある評価では、血漿中のpNF-HがSMAの疾患活動性の指標となりうる可能性が提唱されています。この研究がさらに進めば、この疾患の理解促進に役立つ可能性があります。ニューロフィラメントは、一連の神経学的疾患に共通して疾患活動性に関与しています。

それ以外のプレゼンテーションには、SHINE試験およびNURTURE試験の中間解析が含まれており、乳児期発症型SMAの患者さんにおけるスピンラザの安全性と有効性を評価しています。別のプレゼンテーションでは、病院での未治療SMAの乳幼児と小児における状況ならびに疾患による負担が評価されます。これにより本疾患の自然経過に対する知見を充実させるものです。

バイオジェンのスピンラザとSMAに関するプレゼンテーションには、次のものが含まれています。

プラットフォーム・プレゼンテーション
「SMAの疾患活動性のバイオマーカーの可能性としてのリン酸化ニューロフィラメント重鎖(pNF-H):ヌシネルセン臨床試験プログラムにおけるベースラインおよび治療中のpNF-Hレベル」‐6月15日(金)午前11:40(米国中部標準時間)
「乳児期発症型脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療におけるスピンラザの安全性と有効性の長期的評価:SHINE試験の中間解析」‐6月16日(土)午前10:00(米国中部標準時間)
「SMA発症前の段階において治療を始める乳幼児におけるヌシネルセン:第II相NURTURE試験の有効性と安全性に関する中間結果」‐6月16日(土)午前10:20(米国中部標準時間)

ポスター・プレゼンテーション
「I型SMAの患者さんにおける生存と人工呼吸:2017年のCure SMAメンバーシップ調査(Cure SMAとバイオジェンの合同プレゼンテーション)」-ポスター39 - 6月14日(木)午後4:30(米国中部標準時間)
「乳児期と幼児期の脊髄性筋萎縮症の患者さんとその病院内ケア移行の特性化」-ポスター26 - 6月15日(金)午後12:30(米国中部標準時間)

スピンラザのプログラム進捗状況
スピンラザは世界初にして唯一の承認されたSMA疾患修飾薬であり、現在、米国、EU、ブラジル、日本、スイス、オーストラリア、韓国、カナダ、チリで承認されています。バイオジェンはその他数カ国でも申請中であり、また追加的申請を計画中の国も数カ国あります。2018年3月31日現在、世界で4,100名以上のSMA患者さんが市販後の実臨床、拡大アクセスプログラム(EAP)、および臨床試験でスピンラザによる治療を受けています。

世界的には、2016年以来、最も重篤なSMAの患者さんに対する緊急度の高い治療ニーズに応え、バイオジェンは世界最大級の希少疾患拡大アクセスプログラム(EAP)を承認前に無償で提供しました。これまでに、世界29カ国で750名以上の患者さんがEAPによる治療を受けました。またバイオジェンはNPP(Named Patient Sales Program)を、スピンラザがまだ承認されていない国で提供する活動を行っています。

バイオジェンはスピンラザの全世界における開発、製造、販売について、アンチセンス治療におけるリーダーであるIONIS Pharmaceuticals社(NASDAQ略号:IONS、発音:アイオニス)よりライセンス供与を受けています。バイオジェンとIONIS社は革新的な臨床開発プログラムを実施し、2011年に行われたスピンラザの人への最初の投与からわずか5年で、規制当局による最初の承認を実現しました。

SMA 1-5について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。I 型SMAの患者は最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。II型とIII型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重症度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

スピンラザについて
スピンラザはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

スピンラザはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生量を増やすことにあります6。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、スピンラザは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

スピンラザの投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液中に直接送達するものです7。SMA患者の脊髄では、SMNタンパク質の発現レベルが不十分なため、運動ニューロンが変性しています8

スピンラザは好ましい有効性と安全性のプロファイルを示しました。スピンラザについて最も多く報告されている有害事象は、上気道感染、下気道感染、ならびに便秘です。重篤な有害事象としてスピンラザの治療を受けた患者において無気肺がより多く報告されました。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されており、易出血性の危険性が増す症例の可能性があります。また、いくつかのASOでは、投与後に腎毒性が観察されています。ヌシネルセンは腎臓に分布した後、排泄されます。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、SMAの唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、神経免疫疾患、運動性疾患、神経筋障害、痛み、眼科、神経精神医学といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。
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参考文献
  1. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
  2. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell.1995;80(1):155-165.
  3. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26.
  4. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183.
  5. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain.2014;137(Pt 11):2879-2896.
  6. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
  7. Evers MM, Toonen LI, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev.2015;87:90-103.
  8. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133.
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