本資料は、米バイオジェン社が 2021年6月23日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

抗アミロイドβプロトフィブリル抗体lecanemab(BAN2401)がアルツハイマー病治療を対象として米国FDAよりブレイクスルーセラピーに指定

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク (Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:ミシェル・ヴォナッソス、以下バイオジェン)は、このたび、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemab(開発品コード:BAN2401)について、アルツハイマー病治療を対象として、米国食品医薬品局(FDA)よりブレイクスルーセラピーの指定を受けましたのでお知らせします。

ブレイクスルーセラピーとは、重篤なあるいは命にかかわる疾患に関する薬剤の開発および審査の迅速化を目的とした米国FDAの制度です。ブレイクスルーセラピーの指定を受けることのベネフィットとしては、効率的な開発計画のための助言、審査迅速化、そしてプライオリティーレビューのみならず、審査資料の段階的提出・審査(ローリング・サブミッション)などの制度が利用可能になります。

今回のブレイクスルーセラピーの指定は、アミロイドの脳内蓄積が確認されたアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度アルツハイマー病の患者様856人を対象とした臨床第Ⅱb相試験(201試験)の結果1に基づいています。POC(Proof of Concept:創薬概念の検証)を目的とした201試験では、lecanemab投与による脳内Aβ量の減少と臨床症状の進行抑制に対する効果を評価しました。lecanemabの最高用量は、事前に設定した解析法に基づき、複数の臨床症状を評価するエンドポイントならびにバイオマーカー指標において一貫した臨床症状の悪化抑制を示しました。

Lecanemabについては、現在、臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)が進行中であり、2021年3月に1,795人の早期アルツハイマー病の被験者登録を完了し、2022年9月末までにPrimary endpointの取得をめざしています。さらに、臨床的に無症状期で脳内Aβレベルが境界域または陽性として定義されるプレクリニカルAD当事者様におけるlecanemabの効果を検証する臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45)が現在進行中です。

また、201試験の非盲検継続投与(open-label extension:OLE)の試験結果からは、OLEにおいて新たにlecanemabの投与を受けた被験者の投与期間依存的な脳内Aβの減少が確認され、第15回アルツハイマー・パーキンソン病学会 (International Conference on Alzheimer’s & Parkinson’s Diseases:ADPD2021)において発表されました。

以上

参考資料

1.Lecanemab(開発コード: BAN2401)について
       Lecanemabは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のAβ凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。lecanemabは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するアミロイドβ(Aβ)プロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、世界で初めて後期臨床試験として臨床症状評価による進行抑制と脳内Aβ蓄積量の減少を統計学的有意差をもって達成し、疾患修飾効果を示しました。エーザイは、本抗体について、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるアルツハイマー病を対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を獲得しています。2014年3月に、エーザイとバイオジェンはlecanemabに関する共同開発・共同販促に関する契約を締結し、2017年10月に内容の一部変更契約を締結しています。現在、臨床第Ⅱ相試験(201試験)の非盲検投与延長試験および早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。また、2020年7月に、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を開始しました。National Institutes of Health、National Institute on Agingは、AHEAD 3-45試験(A45 TrialおよびA3 Trial)に資金を提供しています。

2.エーザイとバイオジェンによるアルツハイマー病領域の提携内容について
       エーザイとバイオジェンは、アルツハイマー病治療剤の共同開発・共同販売にする提携を行っています。Lecanemabについては、エーザイ主導のもとで共同開発を行います。

3.エーザイとバイオアークティックによるアルツハイマー病領域の
提携について

       2005年以来、バイオアークティックはAD治療薬の開発と商品化に関してエーザイと長期的な協力関係を築いてきました。2007年12月にlecanemabの商品化契約を締結し、2015年5月にAD用抗体lecanemabバックアップの開発・商品化契約を締結しました。エーザイは、AD向け製品の臨床開発、市場承認申請、商品化を担当しています。 バイオアークティックには、ADにおけるlecanemabの開発コストはありません。

4.エーザイ株式会社について
       エーザイ株式会社は、本社を日本に置くグローバル製薬企業です。当事者とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)・コンセプト」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
エーザイは、アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症治療剤「アリセプト®」の開発・販売から得た経験を活かし、エーザイ認知症プラットフォームの確立を企図し、医療機関、診断薬開発企業、研究機関やバイオベンチャーに加え、民間保険、金融、フィットネスクラブ、自動車メーカー、小売業、介護施設などと連携して、新たな便益をお届けする「認知症エコシステム」の構築をめざしています。エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

5.バイオジェン・インクについて
       神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化いたしました。また、多発性硬化症および神経免疫疾患、アルツハイマー病および認知症、神経筋障害、運動障害、眼疾患、免疫疾患、神経認知障害、急性神経疾患および疼痛といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。バイオジェンは生物製剤の高い技術力を活かし、高品質のバイオシミラーの製品化にも注力しています。バイオジェンに関する情報については、www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Alzheimer's Research & Therapy volume 13, Article number: 80 (2021)
    https://alzres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13195-021-00813-8

 

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