本資料は、米バイオジェン社が 2021年10月17日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

バイオジェン、SOD1-ALSを対象とするtofersenの第III相臨床試験およびオープンラベル延長試験のトップライン結果を発表

  • 第III相臨床試験(VALOR試験)において、ALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)による主要評価項目は統計学的有意差を達成しなかったものの、複数の副次的評価項目および探索的評価項目で疾患の進行抑制の兆候がみられた
  • VALOR試験および継続中のオープンラベル延長試験から得られたエビデンス全体から、より早期にtofersenによる治療を開始した被験者でより良い結果が得られることが示され、さらにポジティブな臨床効果が示唆された
  • トップラインデータは、10月17日、米国神経学会2021年・年次学術集会において発表
  • バイオジェンは、多大なアンメットメディカルニーズを踏まえ、実施中の早期アクセスプログラム(EAP)をより幅広いSOD1-ALSの患者さんに拡大

米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2021年10月17日(米国時間)– バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は、スーパーオキサイドジスムターゼ1遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症(SOD1-ALS)の治療薬候補として開発中のアンチセンス医薬品 tofersen (BIIB067) の第III相ピボタル臨床試験(VALOR試験)のトップライン結果を発表しました。 Tofersenは主要評価項目であるALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)のベースラインから28週までの変化量を達成しなかったものの、生物学的活性および臨床的機能を評価した複数の副次的および探索的評価項目でtofersenが有効である傾向が示されました。

加えて、あらかじめ定めた方法により統合されたVALOR試験および継続中のオープンラベル延長試験(OLE)のデータは、これらの結果を補強するものであり、より早期のtofersenによる治療の開始が、SOD1-ALSの患者さんの運動機能、呼吸機能、筋力、QOLの低下の抑制につながることが複数の測定指標で示されました。VALOR試験およびOLE試験において、大部分の有害事象の重症度は軽症から中等症であり、その内容は処置痛、頭痛、四肢痛、転倒、腰痛でした。

バイオジェンは、今後のステップについて、世界各国の規制当局、医学会、患者団体およびその他の主要なステークホルダーと活発に協議を行い、決定していきます。

VALOR試験の治験責任医師でワシントン大学医学部セントルイス校ALSセンター長のティモシー・ミラー, M.D., Ph.D. (Timothy Miller, M.D., Ph.D.)は次のように述べています。「SOD1タンパクの減少および神経変性疾患のバイオマーカーである可能性があるニューロフィラメントの減少を示し、SOD1-ALS患者さんの日常生活に重要な指標を含む複数の評価項目でポジティブな徴候を示したことから、VALOR試験の結果を心強く思います。ALSコミュニティにとって新たな治療選択肢を待ち望む道のりは長く困難なものであり、私たちはこの難治性疾患における重要な研究の進展を歓迎します」。

バイオジェンの研究開発部門のトップであるアルフレッド・サンドロック Jr., M.D., Ph.D (Alfred Sandrock, Jr., M.D., Ph.D.)は次のように述べています。「Tofersenの第III相臨床試験およびそのオープンラベル延長試験のデータは、日常生活機能の喪失から最終的には死に至る、希少かつ重篤な疾患であるSOD1-ALSの患者さんの疾患進行を抑制する可能性を示しました。治験に参加頂いた医師や生命倫理学者と議論を行い、患者団体の意見を聞いた上で、私たちは既に確立され拡大実施しているアクセスプログラムを通じて、条件を満たす全てのSOD1-ALS患者さんのためにtofersenへの早期のアクセスを拡充いたします。この重要な研究に貢献していただいている患者さん、ご家族、支持者、およびサイエンスコミュニティの皆様による勇気ある取り組みに感謝しています」。

ALSは平均3年から5年でほぼ死に至る進行性の神経変性疾患です。最も多い死亡原因は呼吸不全です。SOD1-ALSは、全世界の推計ALS患者数16万8000人のうち約2%を占める、希少な遺伝性のALSです。現在、ALSについて標的遺伝子に作用する治療選択肢はありません。

この疾患に対する重大なアンメットニーズを鑑みて、バイオジェンはこのようなプログラムが現地の規制当局に認められ、将来的に製品の上市の可能性がある国々の全てのSOD1-ALSの患者さんに対して、既存の早期アクセスプログラム(EAP)への参加資格を拡大します。EAPプログラムは、tofersenが承認され利用可能となるまでの間、患者さんが無償でアクセスできるようにするものです。もしtofersenが承認されず、今後の明確な承認への道筋が確立されない場合、あるいは規制当局から別の比較試験の実施が要求された場合、バイオジェンはEAPを改定または中止することがあります。

VALOR試験およびオープンラベル延長試験について
VALOR試験は、28週の第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験で、SOD1遺伝子変異に関連するALSの成人患者さんを対象にtofersen 100 mg の有効性、安全性、忍容性、薬力学およびバイオマーカーを評価しました。合計で108名の被験者がVALOR試験で無作為に割り付けられました(tofersen 100 mg群n=72、プラセボ群n=36)。うち60名の被験者は本試験のプロトコルで定義されたエンリッチメント基準、すなわち急速な疾患進行状態であると判定され、主要解析群(「急速進行性群」)となりました。48名の被験者はこれらのエンリッチメント基準を満たしませんでした(「非急速進行性群」)。

オープンラベル延長試験はVALOR試験を完了した被験者を対象に継続中の第III相試験です。VALOR試験の被験者108名のうち、95名がOLEに組み入れられました。

トップライン結果について
VALOR試験において、主要解析群(急速進行性群)のALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)でのトータルスコアの28週でのベースラインからの変化量という主要有効性評価項目は、joint-rank解析の測定で統計学的有意差を達成しませんでした(差1.2; p=0.97)。

運動機能、呼吸機能、QOLを含む生物学的機能および臨床的機能を評価した複数の副次的および探索的評価項目でtofersenに有利な傾向が観察されました。1番目の副次的評価項目である標的遺伝子への作用を示すマーカー、総CSF SOD1タンパクのベースラインからの変化量では、tofersen群において、プラセボ群と比較してそれぞれ38%(急速進行性群)、26%(非急速進行性群)の差が観察されました。2番目の副次的評価項目である神経変性を示すマーカーの可能性を有する血漿中ニューロフィラメント軽鎖(NfL)のベースラインからの変化量では、tofersen群においてプラセボ群と比較してそれぞれ67%(急速進行性群)、48%(非急速進行性群)の差が認められました。

急速進行性群においては、呼吸機能(肺活量〔SVC〕;予測差7.9%)および筋力(ハンドヘルドダイナモメーター〔HHD〕での計測;差0.02)の測定でtofersenに有利な傾向が認められました。疾患重症度、QOL、疲労という複数の探索的な患者報告アウトカム全般においても同様の傾向が認められました。28週にわたる試験期間中の死亡数が少なかったため、生存期間の解析のための死亡イベントまでの日数の中央値は予測不能でした。

また、OLEでのより長期のフォローアップにより、いずれの治療群においてもより早期のtofersenの開始が一貫して臨床機能評価の低下の抑制につながっていました。

VALOR試験でtofersen投与群の被験者に最も多くみられた有害事象(AEs)は、処置痛、頭痛、四肢痛、転倒、腰痛でした。VALOR試験およびOLE試験での大部分のAEの重症度は軽症から中等症でした。VALOR試験では、重篤なAEはtofersen群の18.1%、プラセボ群の13.9%で報告されました。Tofersen群では、被験者の5.6%がAEにより治療を中止しました。プラセボ群ではAEによる治療中止はありませんでした。VALOR試験およびOLE試験では、脊髄炎2例(2.0%)を含めtoferesen投与群の被験者の4.8%で重篤な神経系有害事象が報告されました。VALOR試験のtofersen治療群で1例の死亡症例が報告されましたが、tofersen投与に関連したものではないと判断されました。

米国神経学会(ANA)年次学術集会での発表の詳細について
VALOR試験およびOLE試験の結果はANA年次学術集会で発表されました。

2021年10月17日(日)米国東部時間午後4時20分 –第III相臨床試験(VALOR試験)およびオープンラベル延長試験の結果: SOD1遺伝子変異が確認されたALS成人患者におけるtofersenの臨床的有効性と安全性の評価(発表者: ティモシー・ミラー, M.D., Ph.D. 〔Timothy Miller, M.D., Ph.D.〕 〔VALOR試験治験責任医師およびワシントン大学医学部セントルイス校ALSセンター長〕)

発表は、バイオジェンのウェブサイトの投資家向けページ(investors.biogen.com)からアクセスすることができます。発表後、同じウェブサイトにアーカイブ版が掲載されます。

バイオジェンのALSへのコミットメント
バイオジェンは10年以上にわたりALSへの理解を深めるために、研究の推進に邁進してきました。当社は2013年に開発後期段階のALS治療薬候補の開発を断念するという難しい決断を迫られたにもかかわらず、この分野への投資と研究の開拓を継続してきました。バイオジェンは、必要とする患者さんに治療薬をお届けする可能性を高めることを目標に、遺伝性およびその他のALSを対象とする当社の幅広い治療薬候補のポートフォリオにこれまでの大切な学びを活かしてきました。これらの活かされた学びには、特定の患者集団を対象に遺伝子的に検証されたターゲットを評価すること、各々のターゲットに最も適切なモダリティを追求すること、センシティブな臨床評価項目を採用すること、等です。現在、バイオジェンは、ALSを対象に開発されている幅広い治療薬候補のパイプラインを有しています。

Tofersenについて
TofersenはSOD1-ALSの治療薬候補として開発中のアンチセンス医薬品です。TofersenはSOD1メッセンジャーリボ核酸(mRNA)に結合し、RNase-Hによる分解を促してSOD1タンパクの合成を減少させます。Tofersenについては臨床第III相ATLAS試験も進行中で、これはSOD1遺伝子変異を有する発症前の方にtofersenの投与を開始することで臨床的症状の発現を遅らせることができるかどうか、そして疾患活動性を測定するバイオマーカーとしてのエビデンスを評価するために設計された試験です。バイオジェンは開発提携およびライセンス契約によりtofersenをIonis Pharmaceuticals, Inc. (アイオニス・ファーマシューティカルズ)社から導入しました。

臨床第III相VALOR試験 (NCT02623699) について
VALOR試験は第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験で、SOD1遺伝子変異が確認された成人ALS患者さんを対象にtofersen 100 mg の有効性、安全性、忍容性、薬力学効果を評価しました。被験者はtofersen群およびプラセボ群に無作為で割り付けられました。合計で108名の被験者がVALOR試験で無作為に割り付けられました(tofersen 100 mg群n=72、プラセボ群n=36)。うち60名の被験者はSOD1の遺伝子変異型および無作為化前のALSFRS-Rの傾斜下降に基づいて、急速な疾患進行を示す本試験のエンリッチメント基準を満たし、主要解析群(「急速進行性群」)となりました。48名の被験者はこれらのエンリッチメント基準を満たしませんでした(「非急速進行性群」)。第III相VALOR試験についてのより詳細な情報はwww.clinicaltrials.govをご参照ください。

筋萎縮性側索硬化症とSOD1-ALSについて
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患です。ALSは患者さんに筋力の低下と萎縮をもたらし、徐々に運動、発話、摂食の能力を喪失させ、最終的には呼吸することもできなくなり、自立を奪います。ALS患者さんの余命は症状の発現後3年から5年です。複数の遺伝子がALSの発症に関わっています。SOD1遺伝子変異はALSの全症例の約2%を占めています(SOD1-ALS)。SOD1-ALSはALSの家族歴の有無に関わらず発症します。ALSの家族歴がない症例においても、患者さんのALSが遺伝子変異によるものかどうかを遺伝子検査により判定できる場合があります。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経系疾患、神経変性疾患ならびにその関連疾患領域の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者に提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化いたしました。また、多発性硬化症および神経免疫疾患、アルツハイマー病および認知症、運動障害、神経筋障害、急性神経疾患、神経認知障害、疼痛、眼疾患といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。バイオジェンは生物製剤の高い技術力を活かし、高品質のバイオシミラーの製品化にも注力しています。バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

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