本資料は、米バイオジェン社が 2022年5月10日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、米国において、迅速承認制度に基づく早期アルツハイマー病に対する生物製剤ライセンス申請の段階的申請を完了

    エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク (Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO: ミシェル・ヴォナッソス、以下 バイオジェン)は、このたび、エーザイが、抗アミロイドβ (Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について、米国食品医薬品局(FDA)に対し、脳内にアミロイド病変が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度AD(総称して早期AD)治療薬として、迅速承認制度に基づく生物製剤ライセンス申請(Biologics License Application: BLA)の段階的申請(Rolling Submission)を完了したことをお知らせします。本段階的申請の一環として、Priority Review(優先審査)を要請しています。FDAが本BLAを受理した時点で、PDUFA(Prescription Drug User Fee Act)アクション・デート(審査終了目標日)が設定されます。
    現在、レカネマブの早期ADを対象とした臨床第Ⅲ相Clarity AD試験が進行中であり、1,795人の被験者様の登録を完了し、2022年の秋に主要評価データを取得する予定です。FDAは、Clarity AD試験の結果について、レカネマブの臨床的有用性の検証試験として評価することに合意しています。エーザイはClarity AD試験の結果に応じて、2022年度中にフル承認申請を行うことを予定しています。

    本BLAは、脳内にアミロイド病変が確認された早期ADの被験者様856人を対象とし、レカネマブ投与による脳内Aβ量の減少と臨床症状の進行抑制に対する効果を評価するPOC(Proof of Concept:創薬概念の検証)を目的とした臨床第Ⅱb相試験(201コア試験、856症例)による臨床症状、バイオマーカーおよび安全性データ、201 OLE試験(201非盲検長期投与試験、180症例)によるバイオマーカーおよび安全性データ、および臨床第Ⅲ相Clarity AD試験(1,795症例)の盲検下における安全性情報に基づいています。特に、安全性に関しては、これらの臨床試験に参加された多くの被験者様から得られた豊富な安全性データをFDAに提出しています。201試験において、レカネマブによる治療がアミロイドプラークの減少と臨床症状の悪化におよぼす影響を評価しました。18カ月のレカネマブ10mg/kg bi-weeklyの投与により、PET画像にて測定した脳内Aβ蓄積量(Standard Uptake Value Ratio; SUVr)はベースライン時の1.37ユニット(平均)から0.306 ユニット(同)減少し、被験者の80%以上について読影診断による脳内アミロイド陰性化が確認されました。また、治療群間および個々の被験者レベルにおいて、脳内Aβ減少の程度とADCOMS(Alzheimer’s Disease Composite Score)、CDR-SB(Clinical Dementia Rating-Sum-of-Boxes)、ADAS-cog(Alzheimer Disease Assessment Scale-Cognitive Subscale)による臨床症状の悪化抑制は相関していました。201コア試験における10mg/kg bi-weeklyの投与による、抗アミロイド抗体に関連する有害事象であるアミロイド関連画像異常(ARIA-E:浮腫/浸出)の全体の発現率は9.9%(161人中16人)であり、プラセボ群の発現率は0.8%(245人中2名)でした。なお、201試験の結果は2021年4月に査読学術専門誌 Alzheimer’s Research and Therapy誌に発表されました。

    エーザイのCEOである内藤晴夫は「レカネマブの201試験にご参加いただいた早期AD当事者様、医療関係者の皆様のご協力により本BLAを完了できたことを感謝いたします。ADは進行性の深刻な疾患であり、治療選択肢が限られています。エーザイは、AD当事者様の想いに寄り添い、長年治療薬開発に取り組んできました。ADの連続する病勢進行に応じたエーザイの包括的な創薬アプローチは、新たな治療オプションを喫緊に必要とされているAD当事者様とそのご家族、医療関係者の皆様に、革新的な治療薬を提供するというエーザイの長期的なコミットメントを示しています」と述べています。

    バイオジェンのCEOであるミシェル・ヴォナッソスは「ADは、患者さんやそのご家族の大事な時間を奪う疾患です。この領域には膨大なアンメット・ニーズがあり、バイオジェンは、この深刻な疾患と共に生きる人々のために、さらなる治療の選択肢を提供すべく前進を続けています。抗アミロイド抗体は、重要な新たな治療法の幕開けであり、この複雑な疾患への対処において、患者さんと医療関係者にさらなる選択肢を提供できる可能性があります」と述べています。

    レカネマブは、FDAから2021年6月にBreakthrough Therapy、同年12月にFast Trackの指定を受けました。日本においては、2022年3月、レカネマブの早期承認取得をめざし、医薬品事前評価相談制度に基づく申請データの独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への提出を開始しており、Clarity AD試験の試験結果に基づき、2022年度中の製造販売承認申請を予定しています。

    レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

以上

参考資料

1.レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について
          レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。レカネマブは、アルツハイマー病(AD)を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。現在、レカネマブは抗Aβ抗体で唯一漸増投与が不要な早期AD治療薬をめざして開発中です。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、事前に規定した18カ月投与における解析の結果は、脳内Aβ蓄積量の減少(p<0.0001)とADCOMS*による臨床症状の悪化抑制(p<0.05)を示しました。なお、12カ月投与時における主要評価項目**は達成しませんでした。201試験(コア期間)の後、投与を休止していたギャップ期間(平均24カ月)を経て、レカネマブ10mg/kg bi-weekly投与の安全性と有効性を評価するOpen-Label Extension試験が進行中です。
          現在、201試験の結果に基づき、早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)と共同で行っています。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が実施中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。さらに、レカネマブの皮下注射製剤の臨床第Ⅰ相試験が進行中です。エーザイは、本抗体について、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。
*ADCOMS (Alzheimer’s Disease Composite Score):アルツハイマー病コンポジットスコアは、早期ADの変化を感度よく検出することを目的とし、ADAS-cog (Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale)、MMSE (Mini-Mental State Examination)、CDR (Clinical Dementia Rating)の3つの臨床評価尺度を組み合わせたエーザイが開発した評価指標
**投与12カ月時点においてADCOMSによる臨床症状の抑制がプラセボ投与群に対し25%低下する確率が80%以上とする

2.エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
          エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売にする提携を行っています。レカネマブについては、エーザイ主導のもとで共同開発を進めます。

3.エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
          2005年以来、バイオアークティックはAD治療薬の開発と商品化に関してエーザイと長期的な協力関係を築いてきました。2007年12月にレカネマブの商品化契約を締結し、2015年5月にAD用抗体レカネマブバックアップの開発・商品化契約を締結しました。エーザイは、AD向け製品の臨床開発、市場承認申請、商品化を担当しています。 バイオアークティックには、ADにおけるレカネマブの開発コストはありません。

4.エーザイ株式会社について
          エーザイ株式会社は、本社を日本に置くグローバル製薬企業です。当事者とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)・コンセプト」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
          エーザイは、アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症治療剤「アリセプト®」の開発・販売から得た経験を活かし、エーザイ認知症プラットフォームの確立を企図し、医療機関、診断薬開発企業、研究機関やバイオベンチャーに加え、民間保険、金融、フィットネスクラブ、自動車メーカー、小売業、介護施設などと連携して、新たな便益をお届けする「認知症エコシステム」の構築をめざしています。エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

5.バイオジェン・インクについて
          神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のひとつです。バイオジェンは多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する最初で唯一の治療薬を提供しています。また、生物製剤の高い技術力を活かしてバイオシミラーの製品化を行い、業界内で最も多様な神経科学領域のパイプラインに注力し、進展させており、アンメットニーズが高い疾患領域の患者さんの治療水準に変化をもたらしています。

          2020年、バイオジェンは、気候、健康、公平さが深く相互に関連する課題に対して、20年間に2億5000万ドルを投資する大規模な取組みを開始しました。Healthy Climate, Healthy Lives ™は、ビジネス全体で化石燃料の使用をゼロにし、著名な研究機関とのコラボレーションを構築して科学研究を進展させ、人類の健康を改善し、発展途上のコミュニティをサポートすることを目的としています。

          バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

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