本資料は、米バイオジェン社が 2022年6月3日(現地時間)に発表したプレスリリースの抜粋日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

Tofersenの12カ月の新データを欧州ALS治療学会(ENCALS)で発表
SOD1-ALS患者さんに対して臨床的意義のあるベネフィットを示す

  • 12カ月データによると、より早期のtofersen治療開始により、臨床/呼吸機能・筋力・QOLの指標で機能低下の抑制を示す
  • Tofersenは神経変性疾患のマーカーであるニューロフィラメントの強力かつ持続的な減少も示す
  • SOD1-ALSは、日常生活機能の喪失をもたらす希少疾患で進行性かつ死に至る遺伝子変異を有するALSで、ALS全症例の約2%を占める

米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2022年6月3日(米国時間)–バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は、スーパーオキサイドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬候補として開発中のアンチセンス医薬品 tofersen について、新規の12カ月データを発表しました。このデータは、遅れて治療開始(オープンラベル延長[OLE]試験において6カ月後に)した場合と比較して、より早期のtofersen治療開始が、臨床的機能、呼吸機能、筋力、QOLの低下を抑制したことを示しています。ほとんどの被験者が人工呼吸器(PV)無しで生存していたため、解析時において死亡またはPV導入までの平均期間を推定することはできませんでした。しかし、早期段階での生存データはtofersenのより早い開始で死亡またはPV導入のリスクが低下したことを示唆しています。これらの結果は、第III相ピボタル臨床試験(VALOR試験)およびOLE試験の新規の統合データに基づくものです。

本データはスコットランドのエジンバラで開催された欧州ALS治療学会(ENCALS)で英国標準時6月3日午前9時~10時25分に発表されました。発表内容はバイオジェンのウェブサイトの投資家向けページ(investors.biogen.com.)に掲載されます。

臨床結果
2021年10月に発表されたとおり、6カ月の第III相無作為化VALOR試験は、主要評価項目であるALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)のベースラインから28週までの変化量を達成しませんでした。しかし、複数の副次的および探索的評価項目で疾患進行の抑制傾向が認められました。今回の新規12カ月データは当初の結果で認められていた結果をさらに補強するものです。

VALOR試験の治験責任医師でワシントン大学医学部セントルイス校ALSセンター共同代表のティモシー・ミラー, M.D., Ph.D. (Timothy Miller, M.D., Ph.D.)は次のように述べています。「当初の6カ月および今回の12カ月の結果は、tofersenがSOD1-ALSの患者さんにとって重要な指標にインパクトをもたらしたことを示しています。新規の12カ月データはtofersenが複数の評価項目で疾患の進行を一貫して抑制したことを示しており、承認されれば、SOD1-ALSの患者さんの人生に意義のある変化をもたらすことができるでしょう」。

今回の12カ月データは、早期のtofersen投与開始(VALOR試験開始時)と遅れてtofersen投与を開始(6カ月後にOLE試験として)した場合を比較したものです。12カ月にわたり被験者全体で下記の評価項目で早期のtofersen投与開始を支持する結果が得られました:

  • ALSFRS-Rで評価された臨床的機能(3.5ポイント差; 95%信頼区間 [CI]: 0.4, 6.7)
  • 肺活量で測定された呼吸機能(9.2%予測差; 95% CI: 1.7, 16.6)
  • ハンドヘルドダイナモメーターで測定された筋力(0.28差; 95% CI: 0.05, 0.52)
  • 5項目のALS評価質問票(ALSAQ-5)で測定されたQOL(10.3ポイント差; 95% CI: -17.3, -3.2)

ほとんどの被験者がPV無しで生存していたため、解析時において死亡またはPV導入までの平均期間および死亡までの平均期間を推定することはできませんでした。しかし、早期段階での生存データはtofersenのより早い投与開始で死亡またはPV導入リスクの低下(ハザード比 [HR] 0.36; 95% CI: 0.137, 0.941)および死亡リスクの低下(HR 0.27; 95% CI: 0.084, 0.890)を示唆しています。

バイオマーカーの結果
最新の12カ月の結果は、SOD1タンパク濃度(標的への結合性を測定するマーカー)とニューロフィラメント(軸索損傷と神経変性のマーカー)の減少は時間が経過しても維持されていました。

VALOR試験の共同治験責任医師でノースイーストALSコンソーシアムの共同創設者であり、マサチューセッツ総合病院のヒーリー & AMG ALSセンター長兼神経内科長で、ハーバード大学医学部の神経学科ジュリエンヌ・ドーン教室教授であるメリット・セコヴィッチ医師(Merit Cudkowicz, M.D.)は次のように述べています。「ALSでより急速に疾患が進行する患者さんはニューロフィラメントのレベルがより高く、これはおそらくニューロンと軸索がより急速に変性するためと思われます。Tofersenはニューロフィラメントのレベルを約40~50%低下させました。これらのバイオマーカーの結果と臨床的アウトカムデータの組み合わせは、SOD1-ALSにおける容赦ない疾患進行を効果的に抑制するtofersenの可能性にさらなるエビデンスを提供してくれます」。

Tofersenは、脳脊髄液(CSF)中のSOD1タンパク濃度と血漿ニューロフィラメントのレベルを、早期開始および遅れての開始の両群において以下のように減少させました:

  • Tofersenの標的タンパクであるSOD1タンパク濃度をそれぞれ33%および21%減少
  • ニューロン損傷のマーカーである血漿ニューロフィラメントのレベルをそれぞれ51%および41%減少

 

安全性の結果
VALOR試験およびOLE試験でtofersen投与群の被験者に最も多くみられた有害事象(AE)は、頭痛、処置痛、転倒、腰痛、四肢痛でした。VALOR試験およびOLE試験の大部分のAEの重症度は軽症から中等症でした。VALORおよび/またはOLE試験で、重篤なAEはtofersen投与群の36.5%で報告され、17.3%の被験者はAEのために治療を中止しました。重篤な神経学的イベント(脊髄炎、神経根炎、無菌性髄膜炎、乳頭浮腫を含む)は、VALOR試験およびOLE試験でtofersen投与群の被験者の6.7%で報告されました。VALOR試験およびOLE試験のtofersen治療群で14例の死亡症例が報告されましたが、全てがtofersen投与に関連したものではないと判断されました。

VALOR試験およびOLE試験について
VALOR試験は、28週の第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験で、SOD1遺伝子変異に関連するALSの成人患者さん108名を対象にtofersen 100 mgの効果を評価しました。合計で108名の被験者がVALOR試験で無作為に割り付けられました(tofersen 100 mg群 n=72、プラセボ群 n=36)。うち95名の被験者は継続中のOLE試験に組み入れられました。解析時点において、全ての被験者が少なくとも12カ月のフォローアップ治療の機会を得て、tofersenの平均治療期間は約20カ月(1カ月から34カ月の間に分布))でした。

疾患の不均質性を補うために、予定された臨床的解析では疾患進行率のマーカーであるニューロフィラメントのレベルをベースラインで調整しました。ニューロフィラメントは、ニューロンや軸索が損傷を受けると血液や脳脊髄液でその濃度が増すタンパクです。ニューロフィラメントはALSの疾患進行や生存の予測マーカーであることが示されています。

バイオジェンのバイスプレジデントで神経筋疾患研究開発ユニットのトップを務めるトビー・ファーガソン(Toby Ferguson, M.D., Ph.D.)は次のように述べています。「バイオジェンは10年以上にわたりALSの新規治療薬を追求してきました。今回の追加データはtofersenに対する私たちの確信をより強固にしてくれるもので、私たちはこの酷く致命的な疾患の結末を変えるためにこれからも科学に従って進んでまいります。バイオジェンはFDAや世界中の規制当局、医学コミュニティ、そして患者団体の皆さんと協働しており、しかるべき時に次のステップについてのアップデートを提供させていただきます」。

ENCALS年次集会の詳細
英国標準時6月3日金曜日午前9時~10時25分 – SOD1遺伝子変異に関連するALS成人患者に対するTofersenの有効性と安全性の評価: 第III相VALOR試験およびオープンラベル延長試験の結果(発表者: ティモシー・ミラー, M.D., Ph.D. (Timothy Miller, M.D., Ph.D.)- VALOR試験の治験責任医師、ワシントン大学医学部セントルイス校ALSセンター共同代表)。ENCALSはALS治療の進歩を評価するために毎年開催されている学会です。

Tofersenについて
TofersenはSOD1-ALSの治療薬候補として開発中のアンチセンス医薬品です。TofersenはSOD1メッセンジャーリボ核酸(mRNA)に結合し、RNase-Hによる分解を促してSOD1タンパクの合成を減少させます。継続中のVALOR試験のオープンラベル延長試験に加えて、tofersenについては臨床第III相ATLAS試験も進行中で、これはSOD1遺伝子変異を有する発症前の方にtofersenを投与することで臨床的症状の発現を遅らせることができるかどうか、そして疾患活動性を測定するバイオマーカーとしてのエビデンスを評価するために設計された試験です。バイオジェンは開発提携およびライセンス契約によりtofersenをIonis Pharmaceuticals, Inc. (アイオニス・ファーマシューティカルズ社)から導入しました。

筋委縮性側索硬化症およびSOD1-ALSについて
筋委縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患です。ALSの患者さんは筋力の低下と委縮を経験し、徐々に運動、発話、摂食の能力を喪失して、最終的には呼吸もできなくなり自立性を失います。ALS患者さんの平均余命は症状の発現後3年から5年です。1

複数の遺伝子がALSに関与しています。ALSの家族歴がない症例においても、患者さんのALSが遺伝子変異によるものかどうかを遺伝子検査により判定できる場合があります。現在、ALSに対する遺伝子を標的とする治療選択肢は存在しません。SOD1遺伝子の変異は、全世界の推計16万8000人のALS患者さんの約2%を占めます (SOD1-ALS)2。SOD1-ALSの余命は患者さんによって大きく異なり、1年未満から20年以上と幅広く分布しています。3

バイオジェンのALSへの継続的なコミットメント
バイオジェンは、あらゆるタイプのALSをより深く理解するために、10年以上にわたってALSの研究推進に尽力しています。当社は2013年に開発後期段階のALS治療薬候補の開発中止という難しい決断を下したにもかかわらず、継続して投資を行い先駆的な研究を続けています。バイオジェンは必要とする患者さんに治療薬候補をお届けする可能性を高めることを目標に、遺伝子に関連するALSや他のタイプのALSを対象とする新薬候補のポートフォリオにこれまでの様々な学びを応用してきました。それらの重要な学びには、特定の患者集団に対して遺伝子的に検証された標的を評価すること、各々の標的に対して最も適切なモダリティを追求すること、高感度の臨床的エンドポイントを採用すること等が含まれます。今日、バイオジェンはtofersenやBIIB105を含めALSを対象に開発中の新薬候補のパイプラインを有しています。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のひとつです。バイオジェンは多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する最初で唯一の治療薬を提供しています。また、生物製剤の高い技術力を活かしてバイオシミラーの製品化を行い、業界内で最も多様な神経科学領域のパイプラインに注力し、進展させており、アンメットニーズが高い疾患領域の患者さんの治療水準に変化をもたらしています。

2020年、バイオジェンは、気候、健康、公平さが深く相互に関連する課題に対して、20年間に2億5000万ドルを投資する大規模な取組みを開始しました。Healthy Climate, Healthy Lives ™は、ビジネス全体で化石燃料の使用をゼロにし、著名な研究機関とのコラボレーションを構築して科学研究を進展させ、人類の健康を改善し、発展途上のコミュニティをサポートすることを目的としています。
バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Brown RH, Al-Chalabi A. Amyotrophic Lateral Sclerosis. N Engl J Med. 2017 Jul 13;377(2):162-172. doi: 10.1056/NEJMra1603471. PMID: 28700839.
  2. Brown CA, Lally C, Kupelian V, Flanders WD. Estimated Prevalence and Incidence of Amyotrophic Lateral Sclerosis and SOD1 and C9orf72 Genetic Variants. Neuroepidemiology. 2021;55(5):342-353. doi: 10.1159/000516752. Epub 2021 Jul 9. PMID: 34247168.
  3. Bali T, et al. Defining SOD1 ALS natural history to guide therapeutic clinical trial design. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2017 Feb;88(2):99-105. doi: 10.1136/jnnp-2016-313521. Epub 2016 Jun 3. PMID: 27261500; PMCID: PMC5136332.
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