本資料は、米バイオジェン社が 2023年3月22日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

バイオジェン、SOD1-ALSの治療薬候補トフェルセンに関するFDA諮問委員会の結果を発表

  • SOD1-ALSは米国で患者数約330名とされる遺伝子変異を有する希少なALS

 

米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2023年3月22日(米国時間) - バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は、スーパーオキサイドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬候補として開発中のトフェルセンに関する、米国食品医薬品局(FDA)「末梢および中枢神経系医薬品諮問委員会」会議の結果を発表しました。

同委員会は、「これまでに示されたエビデンスは、トフェルセンによる治療を受けた患者の血漿ニューロフィラメントL鎖(NfL)濃度の減少は、SOD1-ALS患者の治療薬としてのトフェルセンの臨床的ベネフィットを予測するのに合理的に妥当であると結論づけるのに十分か」という質問について、全会一致(9対0)で支持しました。この質問は、迅速承認の可能性を検討するためのものです。

2番目の質問、「プラセボ対照試験の臨床データおよびこれまでの長期延長試験の結果は、関連バイオマーカー(血漿NfL濃度、および/またはSOD1の減少)の有効性を支持する追加データとともに、SOD1-ALS患者の治療薬としてのトフェルセンの効果を示す十分なエビデンスと言えるか」について、通常承認に対する同委員会の投票結果は、賛成3、反対5、棄権1でした。

さらに同委員会はこれらの議題について議論し、SOD1-ALS患者におけるトフェルセンのデータ全体の検討に基づき、同剤のベネフィットはリスクを上回るとのコンセンサスが得られました。

バイオジェンのエグゼクティブバイスプレジデントおよび開発部門責任者、兼研究部門およびグローバルセーフティ・薬事部門の責任者代行を務める、プリヤ・シンハル(Priya Singhal), M.D., M.P.H.は次のように述べています。
「ALSに関わる方々の感動的なご経験のヒアリングとデータ全体のレビューに基づき、FDA諮問委員会はニューロフィラメント濃度の減少はトフェルセンの臨床的ベネフィットを予測するのに合理的に妥当だと採決しました。もし承認されれば、トフェルセンはSOD1-ALSの患者さんにとって大きな進歩となる可能性があります。私たちはこの重要な議論を行う会議を開催してくれたことに対しFDAに感謝します。そして最も重要なこととして、当社のトフェルセンの研究に参加してくださったSOD1-ALSの患者さん、介護者やご家族、治験担当医師の方々、そしてこの疾患に関わる全ての皆さんに感謝します。皆さんのご協力なくしてはこのような科学の進歩をなし得ることはできませんでした」。

FDA諮問委員会の支持はFDAによる承認可否の検討に対する拘束力はありません。SOD1-ALSの治療薬候補としてのトフェルセンの新薬承認申請は迅速承認制度に基づいてFDAに提出されました。FDAは2023年4月25日をPDUFA(Prescription Drug User Fee Act)アクション・デート(審査終了目標日)としてトフェルセンの審査を継続しています。

トフェルセンについて
トフェルセンはSOD1-ALSの治療薬候補として開発中のアンチセンス医薬品です。SOD1-ALSは、SOD1遺伝子の変異により、SOD1タンパク質の毒性型が体内で生成される疾患です。この毒性タンパク質は運動ニューロンの変性を引き起こし、進行性の筋力低下をもたらします。トフェルセンは、SOD1 mRNAに結合し、SOD1タンパク質の生成を抑制するように設計されています。トフェルセンについては現在進行中の第III相VALOR試験のオープンラベル延長試験に加え、臨床第III相ATLAS試験も進行中で、これはSOD1遺伝子変異を有する発症前の方にトフェルセンの投与を開始することで臨床的症状の発現を遅らせることができるかどうか、そして疾患活動性を測定するバイオマーカーとしてのエビデンスを評価するために設計された試験です。バイオジェンは開発提携およびライセンス契約によりトフェルセンをIonis Pharmaceuticals, Inc. (アイオニス・ファーマシューティカルズ)社から導入しました。

筋萎縮性側索硬化症とSOD1-ALSについて
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患です。ALSは患者さんに筋力の低下と萎縮をもたらし、徐々に運動、発話、摂食の能力を喪失させ、最終的には呼吸することもできなくなり、自立を奪います。ALS患者さんの平均余命は症状の発現後3年から5年です2

複数の遺伝子がALSの発症に関わっています。遺伝子検査により、家族歴がなくとも遺伝子に関係するタイプのALSであるかどうかを判断することができます。現在のところ、遺伝子変異によるALSへの治療薬はありません。SOD1遺伝子変異(SOD1-ALS)は、全ALSの約2%を占めており、米国での患者数は約330人とされています2。広範なALSへの承認された治療薬はありますが、遺伝子変異を対象とした治療薬はありません。ALSのうち約5-10%の方々が遺伝子変異によるものと考えられています1が、その中にはALSの家族歴が知られていない場合があります。

バイオジェンのALSへのコミットメント
バイオジェンは10年以上にわたりALSへの理解を深めるために、研究の推進に邁進してきました。当社は2013年に開発後期段階のALS治療薬候補の開発を断念するという難しい決断を迫られたにもかかわらず、この分野への投資と研究の開拓を継続してきました。バイオジェンは、必要とする患者さんに治療薬をお届けする可能性を高めることを目標に、遺伝性およびその他のALSを対象とする当社の幅広い治療薬候補のポートフォリオにこれまでの大切な学びを活かしてきました。これらの活かされた学びには、特定の患者集団を対象に遺伝子的に検証されたターゲットを評価すること、各々のターゲットに最も適切なモダリティを追求すること、センシティブな臨床評価項目を採用すること、等です。現在、バイオジェンは、ALSを対象に開発されているトフェルセンやBIIB105をはじめとする幅広い治療薬候補のパイプラインを有しています。

バイオジェンについて
1978年に設立されたバイオジェンは、多発性硬化症の広範なポートフォリオを有し、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する二つの治療薬を共同開発するなど、数多くの革新的なイノベーションを生み出したグローバル・バイオテクノロジー企業です。バイオジェンは神経、神経精神、特定の免疫、希少疾患といった領域において画期的な治療となりうるパイプラインを進展させ、サイエンスを通じて人々に貢献するという理念を厳格に追求し、人々がより健康的に、持続可能で平等に生きていける世界となるよう取り組んでいます。

バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体Twitter, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS) Fact Sheet. Available at:  https://www.ninds.nih.gov/amyotrophic-lateral-sclerosis-als-fact-sheet.Accessed: March 2023.

  2. Brown CA, Lally C, Kupelian V, Flanders WD. Estimated Prevalence and Incidence of Amyotrophic Lateral Sclerosis and SOD1 and C9orf72 Genetic Variants. Neuroepidemiology. 2021;55(5):342-353. doi: 10.1159/000516752. Epub 2021 Jul 9.

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