バイオジェンが治験中のアルツハイマー病治療薬候補ADUCANUMABの第ⅠB相試験からの新データを発表

進行中のADUCANUMAB第Ⅲ相臨床試験デザインを支持

米マサチューセッツ州ケンブリッジ-バイオジェン(NASDAQ略号: BIIB)は、2017年8月28日、同社が実施中の早期アルツハイマー病治療薬aducanumab第Ⅰb相試験からの長期継続投与(LTE)試験について、最近実施した解析結果を発表しました。

今回追加実施された中間解析には、漸増群において最長24カ月、固定用量群において最長36カ月のaducanumab投与を受けた患者さんの、プラセボ対照期間およびLTEから得られたデータが含まれています。今回発表した結果は、以前に報告された解析との一貫性があり、進行中のaducanumab第Ⅲ相試験のデザインを支持するものでした。

この第Ⅰb相試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、反復投与試験であり、前駆状態及び軽度のアルツハイマー病患者さんにおける、aducanumabの安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)および臨床的有効性を評価する試験です。
この試験には、1、3、6、10㎎/kgを用いる固定用量群ならびに漸増投与群が含まれています。

第Ⅰb相長期継続投与試験
第Ⅰb相試験の54週間のプラセボ対照期間を完了した患者さんは、LTEに参加する選択をすることができました。
今回実施した新たな解析には、LTEに組み入れられた143名の患者さんが含まれています。LTEにおける各群は以下の小数例からなる集団です。

  • 18名 は、12カ月のプラセボ対照期間において最初にaducanumab漸増投与群に割り付けられ、最長24カ月の投与を受けました。
  • 69名 は、最初にaducanumab3、6、10㎎/kg投与群に割り付けられ、最長36カ月の投与を受けました。
  • 48名 は、プラセボ対照期間においてプラセボまたはaducanumab 1㎎/kg投与群に割り付けられたのち、LTEにおいてaducanumab 3㎎/kgまたは3~6mg/kgの漸増投与に切り替えられ、最長24カ月間の投与を受けました。
  • 8名は、プラセボ対照期間においてプラセボ群に割り付けられたのち、LTEにおいてaducanumab1、3、6、10㎎/kgの漸増投与に切り替えられました。投与期間は最長12カ月でした。

第Ⅰb相長期継続投与試験において最も多く報告された有害事象は、頭痛、転倒、およびアミロイド関連画像異常(ARIA)でした。第Ⅰb相試験においてaducanumabの投与を受けた185名の患者さんのうち、46名にARIA-E (浮腫)が発現しました。同じ用量のaducanumabの継続投与を受けた患者さんにおいて、新たなARIA-Eの発現はありませんでした。プラセボからaducanumabに切り替えられた患者さんにおけるARIA-Eの発現率は、プラセボ対照群より報告された発現率と同等でした。6名の患者さんで2回以上のARIA-Eの発現が認められました。これらの再発例は既に報告されているARIA例と同様に、多くは無症候性であり、大半の患者さんで試験継続が可能でした。

漸増投与群で最長24カ月の投与を受けた患者さんにおいて、アミロイド斑の減少をポジトロン放出断層撮影法(PET)で測定したところ、固定用量群において観察された結果、すなわち用量依存的および時間依存的な減少との一貫性が見られました。探索的臨床評価項目である臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)、およびミニメンタルステート検査(MMSE)の解析においても、固定用量コホートにおける結果と一貫性が見られました。また、治療2年目における臨床的な疾患進行率に対し、持続する有用性が示唆されました。

36カ月にわたって投与を受けた患者さんにおいて、PETで測定したアミロイド斑は用量依存的および時間依存的に減少を続け、10㎎/kg固定用量群では、PET画像での陽性と陰性を隔てる定量的カットポイント以下と考えられるレベルに到達して維持されましたi。36カ月時点で、探索的臨床評価項目であるCDR-SBおよびMMSEを解析したところ、投与3年目でも臨床的な疾患進行率に対する有用性が持続していることが示唆されました。バイオジェンは、今後の医学会で、これらの解析に基づく新たなデータを公表することを計画しています。

第Ⅲ相臨床試験
Aducanumabは、現在、2つの国際共同第Ⅲ相試験であるENGAGE試験とEMERGE試験で検討されています。これらの試験は、早期アルツハイマー病の患者さんへのaducanumab投与による安全性ならびに認知障害および機能障害の進行抑制などの有効性を評価することを目的にデザインされています。

Aducanumabについて
Aducanumab(BIIB037)は、早期アルツハイマー病の治療薬として開発中の治験薬です。Aducanumabは、リバース・トランスレーショナル・メディシン(RTM)と呼ばれるNeurimmune社のテクノロジー・プラットフォームを用いて作成されたヒト遺伝子組換えモノクローナル抗体(mAb)であり、認知障害の兆候の無い健康な高齢者、または進行が異常に遅い認知機能障害のある高齢者から採取した、非特定化B細胞ライブラリーに由来します。バイオジェンは、Neurimmune社より共同開発およびライセンス契約締結のもとにaducanumabを導入いたしました。

Aducanumabは、可溶性オリゴマーと不溶性線維などの凝集してアミロイド斑を形成しうる形態のベータアミロイドを標的とすると考えられています。これらのベータアミロイドは、アルツハイマー病患者の脳内でアミロイド斑を形成します。非臨床データおよびこれまでに得られた第Ⅰb相試験データに基づき、aducanumab投与はアミロイド斑のレベルを下げることが示されています。

2016年8月、aducanumabは、欧州医薬品庁のPRIMEプログラムに指定されました。2016年9月、米食品医薬品局がaducanumabを迅速審査プログラムの対象に指定し、2017年4月にはaducanumabは厚生労働省(MHLW)の先駆け指定制度の対象として受理されています。

アルツハイマー病について
アルツハイマー病(AD)は進行性の神経変性疾患であり、認知能力の低下と行動障害を特徴としています。こうした認知能力の低下と行動障害は日常生活能力の喪失をもたらします。2010年、世界のAD患者数は2,500万人にのぼると推定されていますii。これまでに得られた研究結果によると、病態生理学的変化は一般に臨床的診断が下される症状が出る何年も前に始まります。この疾患が進行すると、一般にADが関与して起きる認知障害・行動の変化・機能障害が現れ始めます。

参考文献
  1. Landau, S. M., Mintun, M. A., Joshi, A. D., Koeppe, R. A., Petersen, R. C., Aisen, P. S., Weiner, M. W., Jagust, W. J. and for the Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative (2012), Amyloid deposition, hypometabolism, and longitudinal cognitive decline. Ann Neurol., 72: 578–586. doi:10.1002/ana.23650. 
  2. World Health Organization Dementia a Public Health Priority. 
    http://www.who.int/mental_health/publications/dementia_report_2012/en/. Accessed 23 May 2016

バイオジェンについて
最先端の科学と医学を通じて、バイオジェンは重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年に設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のパイオニアであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

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