本資料は、米バイオジェン社が 2017年10月5日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

バイオジェンのスピンラザ®(一般名:ヌシネルセン)
早期治療開始により脊髄性筋萎縮症(SMA)の広範な患者群で運動機能の改善につながる可能性を示す新データを発表

  • ENDEAR第III相試験からの新たなデータから、スピンラザによる早期治療開始により、脊髄性筋萎縮症(SMA)の乳幼児の運動機能アウトカムが改善する可能性が示された
  • EMBRACE第II相試験の中間解析において、ピボタル試験に参加していない患者集団におけるスピンラザ投与群では、未治療群に比べて運動マイルストーンの達成状況が上回ったことが示された
  • EMBRACE試験の中間解析は、乳児期発症型および遅発型SMA患者に対して最初の2カ月に4回の負荷投与を実施、引き続いて4カ月ごとに維持投与される投薬レジメンを支持した

マサチューセッツ州ケンブリッジ – 2017年10月5日 – バイオジェン(NASDAQ略称:BIIB)は、スピンラザ(一般名:ヌシネルセン)による早期治療開始により脊髄性筋萎縮症(SMA)の乳幼児と小児の運動機能アウトカムが改善する可能性を示す新データを発表しました。新データは、スピンラザの有効性と安全性のプロファイルを引き続き支持したものです。今回のデータは、フランスのサン・マロで開催された国際筋研究会議の第22回国際会議(2017年10月3日から7日まで)で発表されたものです。

ENDEAR第III相試験の新たな解析結果では、SMAの乳児が疾患の早い(発症からの期間が短い)段階で治療を開始することで、より大きなベネフィットと運動機能アウトカムの改善が見られたことが示されました。

ハマースミス乳幼児神経学的検査(HINE:Hammersmith Infant Neurological Examination)によって測定したところ、発症からの期間が12週間以下の乳幼児においては、運動マイルストーンレスポンダーが、未治療群の乳幼児に比べスピンラザ投与群の乳幼児で有意に多く見られ(75% vs. 0%; P<0.0001)、また発症からの期間が12週間を超える乳幼児においても有意な差が見られました(32% vs. 0%; P<0.0026)。また、発症からの期間が12週間以下の乳幼児において、スピンラザの投与を受けた場合の死亡または永続的換気補助までの期間でも有意なベネフィットが示されました(P=0.0004)。

バイオジェンのエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼チーフ・メディカル・オフィサーのAlfred Sandrock M.D., Ph.D.は次のように述べています。「これらの試験はスピンラザがSMAの患者さんの生活と人生に、年齢や疾患とステージとは無関係に有意義な変化をもたらし得るということを改めて証明するものです。どの試験でも、スピンラザによる治療を早期に開始することで、より臨床アウトカムと機能的アウトカムの改善につながるというエビデンスが示されてきています」。

中間解析はEMBRACE第II相試験からも発表されています。この試験は、先行して実施された2つのピボタル試験に参加する条件を満たさなかった乳児期発症型および遅発型のSMA患者におけるスピンラザの有効性と安全性を評価するよう設計されたものです。

今回のEMBRACE中間解析は、スピンラザによる治療を受けた患者群では、未治療の患者群に比べ、より多くの乳幼児と小児がHINEのレスポンダーであったことを示しています。また、この中間解析の結果は、乳児期発症型および遅発型のSMA患者に対し、スピンラザを最初の2カ月間で負荷投与4回、引き続き4カ月ごとに投与する投薬レジメンを支持しました。

ENDEAR試験およびEMBRACE試験において、スピンラザは好ましい有効性と安全性のプロファイルを示しました。スピンラザの髄腔内投与に関する安全性データは、臨床試験において最も多く見られた腰椎穿刺関連の有害事象の発生率とその内容は、脊柱側弯症の有無に関わらず、遅発型SMAの小児にみられたものと同等でした。

バイオジェンは、スピンラザを使用される患者さん・ご家族向けの情報提供サイト
https://www.pat.spinraza.jp/)を開設しました。また、スピンラザ情報提供のために医療関係者向けに情報提供サイト (https://www.spinraza.jp)、患者さん・ご家族への疾患に関する情報提供サイトとして、TOGETHER IN SMA(脊髄性筋萎縮症[SMA]とともに)(https://www.togetherinsma.jp)も開設しています。

ENDEAR試験とEMBRACE試験について
ENDEAR試験は乳児期発症型SMAの患者における無作為化・二重盲検・シャム処置比較による13カ月間の試験です。試験終了時の有効性解析には、中間解析後(n=78)に最後の来院を終えた全ての患者(n=121)が含められました。これらの患者さんには、6カ月間の試験の評価を受ける機会がありました。ハマースミス乳幼児神経学的検査(HINE)は信頼性が高く、臨床的に価値のある指標として、SMAの乳幼児における運動マイルストーンの達成状況の評価に使用されます。

EMBRACE試験はスピンラザの第II相・多施設共同・無作為化・二重盲検・シャム処置比較による14カ月間の試験であり、被験者はENDEAR試験(発症年齢が6カ月以下でスクリーニング時の年齢が7カ月以下; 2 SMN2 copies)またはCHERISH試験(発症年齢が6カ月超でスクリーニング時の年齢が2歳から12歳)に参加する条件を満たさなかった乳幼児と小児です。

スピンラザのプログラム・ステータス
スピンラザは初めて承認されたSMA治療薬であり、現在、米国、欧州連合、ブラジル、日本、カナダで承認されています。バイオジェンはそれら以外の国々でも承認申請を提出しており、今後さらに申請する計画も進めています。

バイオジェンは、アンチセンス治療薬のリーダーであるIonis Pharmaceuticals (NASDAQ略号: IONS)から、スピンラザのグローバルな開発・製造・商業化権をライセンスしています。バイオジェンとIONIS社は革新的な臨床開発プログラムを実施してきましたが、スピンラザにおいては2011年の最初のヒトへの投与から、5年間で最初の承認を得るという成果につながりました。

SMA 1-5について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパク質の量と相関関係があります。1型SMAの患者さんは最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパク質がほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。2型と3型の患者さんでは、より多くのSMNタンパク質が生成され重篤度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

スピンラザについて
スピンラザはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

スピンラザはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク質欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やすことにあります6。ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、スピンラザは機能的SMNタンパク質の量を増やす可能性を備えています。

スピンラザの投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液(CSF)中に直接送達するものです7。SMA患者の脊髄では、サバイバルモーターニューロン(SMN)タンパク質の発現レベルが不十分なため、運動ニューロンが変性しています8

スピンラザは好ましい有効性と安全性のプロファイルを示しました。スピンラザについて最も多く報告されている有害事象は、上気道感染、下気道感染、ならびに便秘です。重篤な有害事象としてスピンラザの治療を受けた患者において無気肺がより多く報告されました。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されており、易出血性の危険性が増す症例の可能性があります。また、いくつかのASOでは、投与後に致死的糸球体腎炎発症の可能性を含む腎毒性が観察されています。ヌシネルセンは腎臓に存在し、かつ排泄されます。 

バイオジェンについて
最先端の科学と医学を通じて、バイオジェンは重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年に設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のパイオニアであり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。当社に関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
  2. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell.1995;80(1):155-165.
  3. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26.
  4. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183.
  5. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain.2014;137(Pt 11):2879-2896.
  6. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
  7. Evers MM, Toonen LI, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev.2015;87:90-103.
  8. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133.
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