本資料は、米バイオジェン社が 2018年10月6日(日本時間)に発表したプレスリリースを日本語訳として発表させていただくものです。
よって必ずしも日本の状況を反映したものでないことをご了承ください。内容につきましては原本である英文が優先します。

スピンラザ®(ヌシネルセン)の新データを世界筋学会の世界会議で発表
脊髄性筋萎縮症(SMA)発症前乳幼児の治療における有効性を証明

  • 脊髄性筋萎縮症(SMA)の自然な経過とは対照的に、NURTURE試験の参加者は存命しており、人工呼吸器の永続装着も不要
  • 試験参加者は運動マイルストーンを達成し、全員が自力で座ることができ、88%が歩行可能
  • SMAの臨床開発活動の指標となりうるバイオマーカーに関する追加データ

米マサチューセッツ州ケンブリッジ[2018年10月6日]-バイオジェン(Nasdaq:BIIB)は、6日、NURTURE試験の新たな中間解析結果を発表しました。NURTURE試験は、進行中のオープンラベル・単一群試験であり、25名のSMA発症前乳幼児が参加してスピンラザ®(一般名:ヌシネルセン)の有効性と安全性を検証しています。新データは、アルゼンチンのメンドーサで開催されている世界筋学会(WMS: World Muscle Society)第23回世界会議の速報セッションで発表されました。

バイオジェンの臨床開発部門シニア・メディカル・ディレクターであるWildon Farwell, M.D., M.P.H.は次のように述べています。「これは発症前に治療を始めたSMAの乳児について現在入手可能な中で最長期間の試験データであり、スピンラザによる早期治療を受けた小児は、無治療ではとうてい到達することができない運動マイルストーンを達成できることを示しています」。

この中間解析では、遺伝学的にSMAと診断され、発症前の段階で治療を始めた乳幼児(n=25)における生存率と人工呼吸器装着率が評価されました。2018年5月現在、試験に参加した患者さんは全て存命しており、気管切開や永続的人工呼吸器の装着を必要とした方はいませんでした。さらに、その25名中22名の参加者は、世界保健機関(WHO)の運動マイルストーン基準によると、補助付きあるいは単独で歩行することが可能でした。また、25名全員が自力で座ることができました。

試験参加者の運動スキルも、フィラデルフィア小児病院乳児神経筋疾患検査(CHOP INTEND: Children’s Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorders)を使用して評価されました。この評価では、異なる16種類の動きを考慮してゼロから64までの全体的なスコアを割り出します。SMN2遺伝子のコピーを3つ持つ試験参加者については、「CHOP INTEND」の平均スコアは、62.6でした。同コピーを2つ持つ試験参加者については、61.0でした。

NURTURE試験の参加者は、今回の解析の時点で全員が生後14カ月以上でした。参加者の中には、SMN2遺伝子のコピーを2つ持つ乳幼児(n=15)が含まれていました。このタイプの乳幼児は、高い確率で致死性かつ早期段階で発症するI型SMAを発症します。また、SMN2遺伝子のコピーを3つ持つ乳幼児(n=10)は、一般にII型かIII型のSMAを発症します。II型かIII型のSMAの患者さんは、生涯歩くことができない、あるいは歩行能力を徐々に失っていきます。安全性についての新たな懸念は示されませんでした。

WMSで発表された追加研究では、スピンラザ臨床試験に参加した300名以上の対象者において、血漿中のニューロフィラメント重鎖(pNF-H)のレベルが比較されました。その中には、NURTURE試験の参加者やSMA患者でない対照群の人々も含まれています。そのデータによると、スピンラザによる治療は、pNF-Hレベルの急速な低下に関連を示しています。この低下に引き続き、血漿中のpNF-Hが健康な対照群のレベル付近で安定化しています。これはバイオジェンが実施しているバイオマーカーの特定と実用化のプロセスにおいて判明したことで、これらのバイオマーカーは、SMAの疾患の進行に関する知見を提供できる可能性があります。

バイオジェンの臨床開発部門シニア・メディカル・ディレクターであるWildon Farwell, M.D., M.P.H.は続けて次のように述べています。「私たちは、臨床研究の結果を示すためのツールの開発を継続します。また、SMAのバイオマーカーとしてのニューロフィラメントの可能性に、私たちは自信を強めています。ニューロフィラメントには、この希少疾患に対する科学的理解をさらに深める力があるのです。さらに重要なことは、SMAとともに生きる方々に影響を与える可能性があるのです」。

スピンラザの臨床試験プログラムの進捗状況
スピンラザは世界初にして唯一の承認されたSMA(脊髄性筋萎縮症)に対する疾患修飾薬であり、現在、米国、EU、日本、ブラジルなどで承認されています。バイオジェンはその他数カ国でも申請中であり、また追加的申請を計画中の国も数カ国あります。2018年6月30日現在、世界で5,000名以上のSMA患者さんが市販後の実臨床、拡大アクセスプログラム(EAP)、および臨床試験でスピンラザによる治療を受けています。

世界的には、最も重篤なSMAの患者さんに対する緊急度の高い治療ニーズに応え、バイオジェンは希少疾患では世界最大級のグローバルな承認前拡大アクセスプログラム(EAP)を開始し、無料で治療へのアクセスを提供しています。2018年6月30日の開始以来、世界29カ国で750名以上の患者さんがEAPによる治療を受けました。またバイオジェンはNPP(NAMED PATIENT SALES PROGRAM)の一助として、スピンラザを未発売国で提供する活動を行っています。

バイオジェンはスピンラザの全世界における開発、製造、販売について、アンチセンス治療におけるリーダーであるIONIS PHARMACEUTICALS社(NASDAQ略号:IONS、発音:アイオニス)よりライセンス供与を受けています。バイオジェンとIONIS社は革新的な臨床開発プログラムを実施し、2011年に行われたスピンラザの人への最初の投与からわずか5年で、規制当局による最初の承認を実現しました。

SMA 1-5について
SMAは、脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり、重篤で進行性の筋萎縮や筋無力を引き起こします。最も重篤なタイプのSMAの患者さんは最終的に麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがあります。

SMN1(Survival of Motor Neuron 1)遺伝子の欠落または欠損により、SMAの患者さんは運動ニューロン維持に必要なSMNタンパクを十分に産生することができません。SMAの重篤度はSMNタンパクの量と相関関係があります。I 型SMAの患者は最もきめ細やかな支持療法を必要としますが、SMNタンパクがほとんど生成されないため、支えなしに座ることができず、呼吸器による補助なしに2年以上生存することができません。II型とIII型の患者さんでは、より多くのSMNタンパクが生成され重症度も下がりますが、日々の生活と人生に困難を強いられます。

スピンラザについて
スピンラザはSMAの治療薬としてグローバルレベルで開発が進められています。

スピンラザはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、5番染色体長腕(5q)内のSMN1遺伝子変異による SMNタンパク欠損により引き起こされるSMAの治療薬として設計されました。本剤は変異したSMN1の重複遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えるようデザインされています。その目的は完全に機能するSMNタンパクの産生量を増やすことにあります6

ASOは標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチドです。このテクノロジーを使うことで、スピンラザは機能的SMNタンパクの量を増やす可能性を備えています。スピンラザの投与は髄腔内注射によって実施する必要があります。これは、治療薬を脊髄周囲の脳脊髄液中に直接送達するものです7。SMA患者の脊髄では、SMNタンパクの発現レベルが不十分なため、運動ニューロンが変性しています8

スピンラザは好ましい有効性と安全性のプロファイルを示しました。スピンラザについて最も多く報告されている有害事象は、上気道感染、下気道感染、ならびに便秘です。重篤な有害事象としてスピンラザの治療を受けた患者において無気肺がより多く報告されました。いくつかのASOでは、投与後に急性の重症血小板減少症を含む血液凝固異常と血小板減少症が報告されており、易出血性の危険性が増す症例の可能性があります。また、いくつかのASOでは、投与後に腎毒性が観察されています。ヌシネルセンは腎臓に分布した後、排泄されます。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、SMAの唯一の治療薬を製品化しました。また、アルツハイマー病、神経免疫疾患、運動性疾患、神経筋障害、痛み、眼科、神経精神医学といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。生物製剤の高い技術力を活かし、バイオジェンは高品質のバイオシミラーの製造と製品化にも注力しています。
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参考文献
  1. Darras B, Markowitz J, Monani U, De Vivo D. Chapter 8 - Spinal Muscular Atrophies. In: Vivo BTD, ed. Neuromuscular Disorders of Infancy, Childhood, and Adolescence (Second Edition). San Diego: Academic Press; 2015:117-145.
  2. Lefebvre S, Burglen L, Reboullet S, et al. Identification and characterization of a spinal muscular atrophy-determining gene. Cell.1995;80(1):155-165.
  3. Mailman MD, Heinz JW, Papp AC, et al. Molecular analysis of spinal muscular atrophy and modification of the phenotype by SMN2. Genet Med. 2002;4(1):20-26.
  4. Monani UR, Lorson CL, Parsons DW, et al. A single nucleotide difference that alters splicing patterns distinguishes the SMA gene SMN1 from the copy gene SMN2. Hum Mol Genet. 1999;8(7):1177-1183.
  5. Peeters K, Chamova T, Jordanova A. Clinical and genetic diversity of SMN1-negative proximal spinal muscular atrophies. Brain.2014;137(Pt 11):2879-2896.
  6. Hua Y, Sahashi K, Hung G, Rigo F, Passini MA, Bennett CF, Krainer AR. Antisense correction of SMN2 splicing in the CNS rescues necrosis in a type III SMA mouse model. Genes Dev. 2010 Aug 1; 24(15):16344-44.
  7. Evers MM, Toonen LI, van Roon-Mom WM. Antisense oligonucleotides in therapy for neurodegenerative disorders. Adv Drug Deliv Rev.2015;87:90-103.
  8. Lunn MR, Wang CH. Spinal muscular atrophy. Lancet. 2008;371(9630):2120-2133.
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