本資料は、米バイオジェン社が 2020年7月13日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

BAN2401についてプレクリニカル(無症状期)アルツハイマー病を対象とした新たな臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45)を開始

Alzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)、エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:  内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:ミシェル・ヴォナッソス、以下 バイオジェン)は、このたび、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体BAN2401について、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が陽性*のプレクリニカルADおよび脳内Aβ蓄積が境界域レベルの早期プレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45)を米国において開始したことをお知らせします。本剤は、現在、臨床第Ⅱ相試験(201試験)の結果に基づき、早期アルツハイマー病(AD)を対象とした臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。AHEAD 3-45は、今後、日本、カナダ、オーストラリア、シンガポール、欧州にも治験実施施設を拡大する予定です。

AHEAD 3-45は、米国国立衛生研究所傘下の国立老化研究所(NIA)から資金提供を受けているACTCとエーザイが官民協働で行う臨床第Ⅲ相試験です。AHEAD 3-45試験では、共通のスクリーニング期間を経て、計1,400名のプレクリニカルAD被験者が、脳内Aβ蓄積量に基づき、2種類のトライアル(A45トライアルとA3トライアル)のいずれかに登録され、BAN2401を216週間投与される、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較の1つの臨床第Ⅲ相試験です。A45トライアルでは、認知機能に障害のない、脳内Aβ蓄積が陽性の方々を対象とし、BAN2401投与による認知機能低下抑制および脳内AD病理の進行抑制を評価することを目的としています。主要評価項目は、投与開始後216週時点でのPACC5(Preclinical Alzheimer Cognitive Composite 5)による認知機能のベースラインからの変化であり、副次的評価項目として、アミロイドPET検査による脳内アミロイド蓄積とタウPET検査による脳内タウ蓄積、被験者様と試験協力者が報告するCognitive Function Indexの変化が設定されています。A3トライアルでは、認知機能に障害のない、脳内Aβがさらに早期の境界域にあり、脳内Aβのさらなる蓄積増加のリスクが高い集団と考えられている方々を対象とします。主要評価項目は、アミロイドPET検査による脳内アミロイド蓄積の変化であり、副次的評価項目として、タウPET検査による脳内タウ蓄積の変化が設定されています。また、両トライアルには、上記評価項目に加え、臨床的評価スケール、イメージング、並びに脳脊髄液(CSF)および血液中のバイオマーカーの変化も探索的評価項目として設定しています。イメージングおよび生体液体成分、特にCSFによるATN(Aβ、タウ、神経変性)バイオマーカーパネルには、Aβ1-42、Aβ1-40、t-タウ、p-タウ、Neurogranin、Neurofilament light chainが含まれており、AD病理の変化による治療効果の評価に使用されます。
Brigham and Women’s HospitalのCenter for Alzheimer Research and Treatmentのディレクターであり、ACTCの共同治験責任医師であるDr. Reisa Sperlingは、「疾患プロセスのより早期段階に治療を開始することが将来の認知機能低下の防止につながると期待されます。AHEAD 3-45によって、抗アミロイド療法による治療介入の最適な時期について極めて重要な解が得られることでしょう」と述べています。

ACTCのコーディネーションセンターである南カリフォルニア大学ATRI(Alzheimer’s Therapeutic Research Institute)のDr. Paul Aisenは、「ACTCの使命の一つは、有望な候補物質を官民パートナーシップによって開発することです。アルツハイマー病と闘う上で、AHEAD 3-45試験は重要な共同研究になります」と述べています。

エーザイ ニューロロジービジネスグループのチーフクリニカルオフィサーである Lynn Kramer, M.D.は、「ACTCグループとの提携により開始したBAN2401を用いたAHEAD 3-45は、ADの連続する病勢進行の初期段階に焦点を当てた試験であり、バイオマーカーパネルを用いたADプレシジョン治療に繋がることが期待されます。当社はヒューマン・ヘルスケア理念のもと、世界中の認知症当事者様、その家族、および医療関係者に貢献していきます」と述べています。

AHEAD 3-45試験の詳細はwww.A3A45.org(英語のみ)を参照ください。

BAN2401は、バイオアークティック(本社:スウェーデン)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性の Aβ凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。BAN2401は、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去します。BAN2401がAD疾患の病理に影響を与え、ADの進行を遅らせる効果を持つ可能性があることを示唆しています。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、後期臨床試験として、世界で初めて臨床症状評価による進行抑制と脳内Aβ蓄積量の減少を統計学的有意差をもって達成し、疾患修飾効果を示しました。現在、201試験の非盲検投与延長試験および検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。
エーザイとバイオジェンはBAN2401の共同開発・共同販促に関する契約を締結しています。

*脳内Aβ蓄積の陽性:アミロイドPET検査で定量した脳内アミロイド量を数値化し、事前に定めた境界値以上

1. Alzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)について 
ACTCは、米国国立衛生研究所傘下の国立老化研究所の資金提供を受け、アルツハイマー病および関連する認知症における学術的臨床試験のための基盤を提供しています(許可番号U24AG057437)。南カリフォルニア大学、ハーバード大学およびメイヨークリニックを拠点とする本コンソーシアムには、臨床試験デザイン、生物統計学、インフォマティクス、安全性、規制監視、被験者募集、クリニカルオペレーション、データマネジメント、サイトモニタリング、バイオマーカー研究所、保管、神経画像検査を支援するエキスパートユニットが含まれます。ACTCには米国全土に35の主要臨床施設があります。

2. エーザイについて
エーザイ株式会社は、本社を日本に置くグローバル製薬企業です。当事者とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)・コンセプト」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
エーザイは、アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症治療剤「アリセプト®」の開発・販売から得た経験を活かし、エーザイ認知症プラットフォームの確立を企図し、医療機関、診断薬開発企業、研究機関やバイオベンチャーに加え、民間保険、金融、フィットネスクラブ、自動車メーカー、小売業、介護施設などと連携して、新たな便益をお届けする「認知症エコシステム」の構築をめざしています。エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

3. バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化いたしました。また、多発性硬化症および神経免疫疾患、アルツハイマー病および認知症、神経筋障害、運動障害、眼疾患、免疫疾患、神経認知障害、急性神経疾患および疼痛といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。バイオジェンは生物製剤の高い技術力を活かし、高品質のバイオシミラーの製品化にも注力しています。バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

4. 米国国立衛生研究所(NIH)、国立老化研究所(NIA)について
NIAは、NIHの27の研究所およびセンターの1つであり、老化の性質を解明し、健康で活動的な人生を延ばすための幅広い科学的取り組みを先導しています。NIAは、アルツハイマー病の研究を支援および実施する主要な連邦政府機関です。National Institutes of Health、National Institute of Agingは、A45試験(認可番号R01AG061848)およびA3試験(認可番号R01AG054029)に資金を提供しています。

5. Preclinical AD Cognitive Composite 5 (PACC5)について
プレクリニカルAD期の方の認知機能の変化を高感度に測定する複合的な尺度です。

6. Cognitive function indexについて
Cognitive function Indexは、日常生活における高度な機能的課題を実施する能力、および全般的な認知機能を評価する評価指標です。

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