本資料は、米バイオジェン社が 2021年11月11日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

レカネマブの臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)の対象者を同定する、初めての血漿中バイオマーカーによる被験者スクリーニングの導入について第14回アルツハイマー病臨床試験(CTAD)会議において発表

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:ミシェル・ヴォナッソス、以下バイオジェン)は、このたび、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(開発品コード:BAN2401)に関する、プレクリニカルアルツハイマー病(AD)を対象とした臨床第Ⅲ相AHEAD3-45試験において、AD病理を検出し、被験者のスクリーニングを加速する可能性がある血漿中バイオマーカーの探索的な利用について発表したことをお知らせします。本発表は、2021年11月9日から12日に米国マサチューセッツ州ボストンおよびバーチャルで開催されている第14回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD:Clinical Trials on Alzheimer’s Disease)において、Alzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)が行いました。

AHEAD 3-45試験では、認知機能障害がなく、脳内Aβ蓄積が陽性のプレクリニカルADおよび脳内Aβ蓄積が境界域レベルの早期プレクリニカルADにおけるレカネマブによる治療の有効性を評価します。
エーザイは、レカネマブについて、2021年9月に迅速承認制度に基づき、米国食品医薬品局(FDA)に早期AD治療薬として生物製剤ライセンス申請の段階的申請を開始しました。

臨床第Ⅲ相AHEAD 3-45試験は、ベースラインのPETによる脳内Aβ蓄積量に基づき、脳内Aβが境界域のA3トライアルと脳内Aβが陽性のA45トライアルの2種類の用量設定が異なるトライアルで構成されています。本試験では、プレクリニカル期のADに対する初めての試みとして、認知機能障害のない被験者が、治療アプローチを決定する標準的な方法であるPET検査を行うべきかどうか判断する際に、血漿中のバイオマーカーが果たすべき役割を検討します。
血液サンプルは最初の受診時に収集され、血漿中のバイオマーカースクリーニングとして、脳内Aβレベルの信頼できる予測因子となる可能性がある血漿中Aβ42/40比を測定し、PET検査に進む適格性を判断します。その後、PET画像診断結果に基づき、被験者はA3またはA45トライアルに割付けられます。

2021年10月18日時点で、659人の参加者のデータが解析に利用可能でした。調整された血漿Aβ42/40比は、アミロイドPET適格性を予測する指標として優れた有用性(AUC 0.87)を示し、血漿中のバイオマーカースクリーニングによりA3およびA45の参加者登録の完了に必要なPET検査数を大幅に減らす可能性が示唆されました。

エーザイのニューロロジービジネスグループ Deputy Chief Clinical OfficerであるMichael Irizarry M.D.は、「ADのスクリーニングプロセスには、時間と費用がかかります。認知テストと脳内アミロイド上昇の確認に基づく、現在および将来のAD治療の対象となる可能性のある方を迅速かつ効率的に同定することが課題となっています。エーザイは、プレクリニカルADを対象としたAHEAD 3-45試験に血漿中バイオマーカーによるスクリーニングを組み込むという新たな試みを行っています。この新たなアプローチにより、脳内Aβが上昇している方を特定し、アミロイドPETや腰椎穿刺による検査数の削減につながることを期待しています」と述べています。

以上

参考資料

1.レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について
       レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。レカネマブは、アルツハイマー病(AD)を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、事前に規定した18カ月投与における解析の結果は、脳内Aβ蓄積量の減少(p<0.0001)とADCOMS*による臨床症状の悪化抑制(p<0.05)を示しました。なお、12カ月投与時における主要評価項目**は達成しませんでした。201試験(コア期間)の後、投与を休止していたギャップ期間(平均24カ月)を経て、レカネマブ10mg/kg bi-weekly投与の安全性と有効性を評価するOpen-Label Extension試験が進行中です。
       エーザイは、本抗体について、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2014年3月に、エーザイとバイオジェンはレカネマブに関する共同開発・共同販促に関する契約を締結し、2017年10月に内容の一部変更契約を締結しています。現在、臨床第Ⅱ相試験(201試験)のOpen-Label Extension試験および早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。2020年7月に、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)と共同で開始しました。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。

* ADCOMS(Alzheimer’s Disease Composite Score):アルツハイマー病コンポジットスコアは、早期ADの変化を感度よく検出することを目的とし、ADAS-cog (Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale)、MMSE (Mini-Mental State Examination)、CDR (Clinical Dementia Rating)の3つの臨床評価尺度を組み合わせたエーザイが開発した評価指標
** 投与12カ月時点においてADCOMSによる臨床症状の抑制がプラセボ投与群に対し25%低下する確率が80%以上とする

2.エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
       エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売にする提携を行っています。レカネマブについては、エーザイ主導のもとで共同開発を進めます。

3.エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
       2005年以来、バイオアークティックはAD治療薬の開発と商品化に関してエーザイと長期的な協力関係を築いてきました。2007年12月にレカネマブの商品化契約を締結し、2015年5月にAD用抗体レカネマブバックアップの開発・商品化契約を締結しました。エーザイは、AD向け製品の臨床開発、市場承認申請、商品化を担当しています。バイオアークティックには、ADにおけるレカネマブの開発コストはありません。

4.Alzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)について
       ACTCは、米国国立衛生研究所傘下の国立老化研究所の資金提供を受け、ADおよび関連する認知症における学術的臨床試験のための基盤を提供しています(許可番号U24AG057437)。南カリフォルニア大学、ハーバード大学およびメイヨークリニックを拠点とする本コンソーシアムには、臨床試験デザイン、生物統計学、インフォマティクス、安全性、規制監視、被験者募集、クリニカルオペレーション、データマネジメント、サイトモニタリング、バイオマーカー研究所、保管、神経画像検査を支援するエキスパートユニットが含まれます。ACTCには米国全土に35の主要臨床施設があります。
       AHEAD 3-45は、ACTC、エーザイとバイオジェンの官民パートナーシップとして実施される臨床第Ⅲ相試験です。

5.エーザイ株式会社について
       エーザイ株式会社は、本社を日本に置くグローバル製薬企業です。当事者とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)・コンセプト」を企業理念としています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
       エーザイは、アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症治療剤「アリセプト®」の開発・販売から得た経験を活かし、エーザイ認知症プラットフォームの確立を企図し、医療機関、診断薬開発企業、研究機関やバイオベンチャーに加え、民間保険、金融、フィットネスクラブ、自動車メーカー、小売業、介護施設などと連携して、新たな便益をお届けする「認知症エコシステム」の構築をめざしています。エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。

6.バイオジェン・インクについて
       神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経系疾患、神経変性疾患ならびにその関連疾患領域の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者に提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化いたしました。また、生物製剤の高い技術力を活かした高品質のバイオシミラーの製品化や、多発性硬化症および神経免疫疾患、アルツハイマー病および認知症、神経筋疾患、運動障害、眼疾患、神経認知障害、免疫疾患、急性神経疾患、疼痛といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。
       2020年、バイオジェンは、気候、健康、公平さが深く相互に関連する課題に対して、20年間に2億5000万ドルを投資する大規模な取組みを開始しました。Healthy Climate, Healthy Lives™は、ビジネス全体で化石燃料の使用をゼロにし、著名な研究機関とのコラボレーションを構築して科学研究を進展させ、人類の健康を改善し、発展途上のコミュニティをサポートすることを目的としています。
       バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

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