本資料は、米バイオジェン社が 2022年7月6日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、迅速承認制度に基づく、早期アルツハイマー病に対する生物製剤ライセンス申請が米国FDAに受理され、優先審査に指定

    エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク (Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:ミシェル・ヴォナッソス、以下 バイオジェン)は、このたび、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について、脳内にアミロイド病変が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度AD(総称して早期AD)の治療薬候補として、迅速承認制度に基づく生物製剤ライセンス申請(Biologics License Application: BLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理されたことをお知らせします。本申請は、今回優先審査(Priority Review)の指定を受け、PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクション・デート(審査終了目標日)は2023年1月6日に定められました。

    エーザイのCEOである内藤晴夫は「ADは当事者様、ご家族に大きな障害や負担をもたらす重大な疾患です。治療選択肢が限られており、新たな治療オプションの創出が強く待たれています。エーザイは、AD当事者様の想いに寄り添い、長年治療薬開発に取り組んできました。このたびレカネマブのBLA申請が優先審査の対象として受理されたことは、ADの本源的な病理に作用する新たな治療薬を待ち望むAD当事者様の想いに応えるための重要な前進です。今後、FDAの審査に積極的に協力し、一日も早く新しい治療オプションをAD当事者様、ご家族にお届けできるように努めてまいります」と述べています。

    バイオジェンのCEOであるミシェル・ヴォナッソスは「私たちは、ADの当事者の方々がこの複雑な疾患に対処できる様々な治療オプションを有するようになる未来を信じており、本日、レカネマブのBLA申請がFDAにより受理され、優先審査に指定されたことは、本ビジョンに向けた重要なステップです。エーザイとともに、AD当事者さんとそのご家族が抱える非常に大きなアンメット・ニーズに対処するための活動を継続してまいります」と述べています。

    レカネマブについては、早期ADを対象とした臨床第Ⅲ相Clarity AD試験が進行中であり、2021年3月に1,795人の被験者登録を完了し、2022年の秋に主要評価データを取得する予定です。FDAは、Clarity AD試験の結果について、レカネマブの臨床的有用性の検証試験として評価することに合意しています。迅速承認制度では検証試験以外の全てのデータの審査が行われるため、その後のフル承認に向けた申請では主に検証試験が審査対象となります。これにより、フル承認に基づいて一日でも早くレカネマブを当事者様にお届けすることをめざします。エーザイはClarity AD試験の結果に応じて、2022年度中にフル承認申請を行う予定です。
    日本においては、2022年3月、申請後の審査期間短縮をめざし、医薬品事前評価相談制度に基づく申請データの医薬品医療機器総合機構(PMDA)への提出を開始しており、Clarity AD試験の試験結果に基づき、2022年度中の製造販売承認申請を予定しています。欧州においても、Clarity AD試験の試験結果に基づき、2022年度中の承認申請を予定しています。

    レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

以上

参考資料

1.レカネマブ(開発品コード:BAN2401)について
          レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体です。レカネマブは、アルツハイマー病(AD)を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。現在、レカネマブは抗Aβ抗体で唯一漸増投与が不要な早期AD治療薬をめざして開発中です。早期ADを対象とした大規模臨床第Ⅱ相試験(201試験)においては、事前に規定したレカネマブ10mg/kg bi-weekly 18ヵ月静脈投与における解析の結果は、脳内Aβ蓄積量の減少(p<0.0001)とADCOMS*による臨床症状の悪化抑制(p<0.05)を示しました。なお、12ヵ月投与時における主要評価項目**は達成しませんでした。201試験(コア期間)の後、投与を休止していたギャップ期間(平均24ヵ月)を経て、レカネマブ10mg/kg bi-weekly投与の安全性と有効性を評価するOpen-Label Extension試験が進行中です。

          現在、201試験の結果に基づき、早期ADを対象とした検証用の一本の臨床第Ⅲ相試験(Clarity AD)を実施中です。2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)と共同で行っています。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。さらに、レカネマブの皮下注射製剤の臨床第Ⅰ相試験が進行中です。

* ADCOMS (Alzheimer’s Disease Composite Score):アルツハイマー病コンポジットスコアは、早期ADの変化を感度よく検出することを目的とし、ADAS-cog (Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale)、MMSE (Mini-Mental State Examination)、CDR (Clinical Dementia Rating)の3つの臨床評価尺度を組み合わせたエーザイが開発した評価指標
** 投与12ヵ月時点においてADCOMSによる臨床症状の抑制がプラセボ投与群に対し25%低下する確率が80%以上とする

2.エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
          エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

3.エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
          2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

4.エーザイ株式会社について
          エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
          2021年4月よりスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」では、当社が貢献すべきヘルスケアの主役を医療領域のみならず日常領域で生活する人々にまで拡大しています。サイエンスとデータに基づくソリューションを創出し、他産業との連携によるエコシステムの構築を通じて、人々の「生ききる」を支えるhhcecohhc理念+エコシステム)企業へと進化することをめざしています。
          また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
          エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。Twitterアカウント@Eisai_SDGsでも情報公開しています。

5.バイオジェン・インクについて
          神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経系疾患、神経変性疾患ならびにその関連疾患領域の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者に提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化いたしました。また、生物製剤の高い技術力を活かした高品質のバイオシミラーの製品化や、多発性硬化症および神経免疫疾患、アルツハイマー病および認知症、神経筋疾患、運動障害、眼疾患、神経認知障害、免疫疾患、急性神経疾患、疼痛といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。

          2020年、バイオジェンは、気候、健康、公平さが深く相互に関連する課題に対して、20年間に2億5000万ドルを投資する大規模な取組みを開始しました。Healthy Climate, Healthy Lives ™は、ビジネス全体で化石燃料の使用をゼロにし、著名な研究機関とのコラボレーションを構築して科学研究を進展させ、人類の健康を改善し、発展途上のコミュニティをサポートすることを目的としています。
          バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

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