本資料は、米バイオジェン社が 2023年1月29日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、日本において優先審査品目に指定

    エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq: BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO: クリストファー A. ヴィ―バッハ―、以下 バイオジェン)は、このたび、抗アミロイドβ(Aβ)プロト フィブリル*抗体レカネマブ(一般名、米国ブランド名:LEQEMBI™)の日本における製造販売承認申請について、厚生労働省より優先審査品目に指定されたことをお知らせします。日本の優先審査は、重篤な疾病で医療上の有用性が高いと認められた新薬等に与えられ、総審査期間の目標が短縮されます。

    日本において、エーザイは、2023年1月16日に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に製造販売承認申請を行いました。本申請は、レカネマブ投与による早期ADの臨床症状の悪化抑制を実証した臨床第Ⅲ相Clarity AD試験、臨床第Ⅱb相試験(201試験)に基づくものです。

    レカネマブは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合し、脳内から除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。Clarity AD試験では、主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成しました。Clarity AD試験の結果は、2022年11月に第15回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)にて発表し、同時に査読学術専門誌the New England Journal of Medicineにも掲載されました。

    レカネマブについては、米国において、2023年1月6日に米国食品医薬品局(FDA)よりAD治療薬として迅速承認を取得し、同日、フル承認への変更に向けた生物製剤承認一部変更申請(supplemental Biologics License Application:sBLA)を提出しました。欧州においても、2023年1月9日に欧州医薬品庁(EMA)に販売承認申請(MAA)を提出し、1月26日に受理されました。中国においては、2022年12月に国家薬品監督管理局(NMPA)にBLAの申請データの提出を開始しました。

    レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

    * プロトフィブリルは、75-500Kdの可溶性Aβ凝集体です1、2

以上

参考資料

1.日本の優先審査について
        優先審査とは、希少疾病用医薬品、先駆的医薬品の指定を受けた医薬品のほか、次のいずれの要件にも該当する医薬品について、優先的に審査することです。

  1. 適用疾病が重篤であると認められること。
  2. 既存の医薬品、医療機器若しくは再生医療等製品または治療方法と比較して、有効性または安全性が医療上明らかに優れていると認められること。

2.レカネマブについて
       レカネマブ(一般名、米国ブランド名:LEQEMBI™)は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。レカネマブは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合し、脳内から除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。米国において、LEQEMBIは、2023年1月6日に米国食品医薬品局(FDA)より迅速承認を取得しました。LEQEMBIの適応症はアルツハイマー病(AD)の治療です。LEQEMBIによる治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要があります。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性のデータはありません。本適応症は、LEQEMBIで治療された当事者様で観察されたAβプラークの減少に基づき、迅速承認の下で承認されています。本迅速承認の要件として、検証試験による臨床的有用性の確認が必要となります。Clarity AD試験では、主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成しました。

       米国における処方情報はこちらから入手できます。

       日本において、エーザイは、2023年1月16日に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に製造販売承認申請を行いました。本申請においては、審査期間の短縮をめざし医薬品事前評価相談制度を活用しています。米国において、2023年1月6日にフル承認への変更に向けた生物製剤承認一部変更申請(supplemental Biologics License Application:sBLA)を提出しました。欧州においても、2023年1月9日に欧州医薬品庁(EMA)に販売承認申請(MAA)を提出し、1月26日に受理されました。中国においては、2022年12月に国家薬品監督管理局(NMPA)にBLAのデータ提出を開始しました。

       レカネマブの皮下注射によるバイオアベイラビリティ試験は終了し、Clarity AD試験OLEにおいて皮下投与の評価が進行中です。
       2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。
       また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

3.エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
       エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

4.エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
       2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

5.エーザイ株式会社について
       エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
       また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
       エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。Twitterアカウント@Eisai_SDGsでも情報公開しています。

6.バイオジェン・インクについて
       神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業のひとつです。バイオジェンは多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する最初の治療薬を提供しています。また、生物製剤の高い技術力を活かしてバイオシミラーの製品化を行い、業界内で最も多様な神経科学領域のパイプラインに注力し、進展させており、アンメットニーズが高い疾患領域の患者さんの治療水準に変化をもたらしています。
       バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. “Lecanemab Sweeps up Toxic AΒ Protofibrils, Catches Eyes of Trialists.” ALZFORUM, ALZFORUM, 21 Nov. 2021, https://www.alzforum.org/news/conference-coverage/lecanemab-sweeps-toxic-av-protofibrils-catches-eyes-trialists.
  2. Sehlin D, Englund H, Simu B, Karlsson M, Ingelsson M, Nikolajeff F, Lannfelt L, Pettersson FE. Large aggregates are the major soluble Aβ species in AD brain fractionated with density gradient ultracentrifugation. PLoS One. 2012;7(2):e32014. doi: 10.1371/journal.pone.0032014. Epub 2012 Feb 15. PMID: 22355408; PMCID: PMC3280222.
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