NURTURE試験のデータ、学術誌に掲載: スピンラザ® (ヌシネルセン)で早期に治療開始した乳幼児の運動機能マイルストーン達成を確認し、疾患活動性の指標に関する洞察を提供

  • SMA(脊髄性筋萎縮症)で5年前の症状発現前にスピンラザによる治療を開始した小児は、全員が生存し、25人中23人が自力歩行し、運動機能は引き続き維持および改善
  • NURTURE試験の組み入れ基準の分析により、発症前のSMAについて、その変化の進む定義に重要な洞察を提供
  • 新たな解析により、ベースラインの特徴のわずかな差異が、臨床試験の解釈や、乳幼児期に早期治療を受けるSMA患者のアウトカム予測に重要な役割を果たすことを示唆

バイオジェン・ジャパン株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:傳 幸諭)は、脊髄性筋萎縮症(SMA)の臨床症状発現前にスピンラザ®(ヌシネルセン)による治療を開始した小児が、5年間にわたり運動機能を維持し続け、新たなマイルストーンを達成していることを示すNURTURE試験のデータがMuscle & Nerve に掲載されたことを発表しました。2年間のフォローアップ期間延長後も全ての参加者は生存しており、永続的な人工呼吸器の使用を必要とする参加者はおらず、25人中23人の子どもはそのほとんどが年齢相応の時期に自力歩行しています。新生児スクリーニングが世界的に拡大する中、NURTURE試験のデータは疾患活動性の客観的指標の重要性にさらなる洞察を提供し、これは個々の患者のベースラインに基づき治療効果を予測することに役立つ可能性があります。

NURTURE試験の5年間の結果によると、SMN2遺伝子のコピー数が3の小児 (n=10) は、1人の例外(補助があれば歩行できるようになる時期を逸した症例ですが、その後期待された時期に自力歩行を達成)を除いて、世界保健機関(WHO)による運動に関する全てのマイルストーン1を年齢相応の時期に達成しました。SMN2遺伝子のコピーを2つ有する小児 (n=15)では、全員が補助無しで座り、補助があれば立ち上がることができました。15例のうち14例は補助があれば歩行できるようになり、13例は1人で立ち上がり、1人で歩けるようになりました。何例かは年齢相応の時期にこれらのマイルストーンを達成しました。NURTURE試験の結果が前回論文報告されて以降、SMN2遺伝子のコピーを2つ有する追加の2例がフィラデルフィア子ども病院乳幼児神経筋疾患テスト(CHOP INTEND)で、最高スコアを3.8歳から4.8歳の間に達成し、本試験でこれを達成した小児の総数は22人となりました (12例 [80%]はSMN2遺伝子のコピー数が2、10例 [100%]はSMN2遺伝子のコピー数が3)。主要評価項目で定義された呼吸介入を必要とする症例について、前回のデータカット時には4例が報告されていましたが、今回新たに該当する症例はみとめられませんでした。

筋ジストロフィー協会クリニックの共同院長でジョンズホプキンス大学神経医学部教授のトーマス・クロフォード医師(Thomas Crawford, M.D.)は次のように述べています。「SMAに携わる科学者のコミュニティは、最初の評価では無症状に見えるSMAの乳幼児における早期の神経変性マーカーの重要性を認識しています。NURTURE試験のデータは、ベースラインの特徴のわずかな差異が、運動機能、呼吸機能、嚥下および摂食を含むアウトカムにいかに大きな影響を及ぼすかを示しています。CMAPの振幅および反射消失は、兆候および症状の発現前のSMA病理の進行を示す指標です。これらの、および開発途上のその他の指標は、SMA治療薬を評価する試験データの適正な解釈に重要な役割を果たします」。

NURTURE試験データの事後解析では、神経損傷の指標が臨床症状の発現前から疾患進行を示すという仮説の下に、ベースラインの疾患活動性(例えば、複合筋活動電位[CMAP]や反射消失)の早期マーカーを評価しました。NURTURE試験では、CMAP値の低い(≥1 mV)または反射消失のある患者の組み入れも認め、他の発症前SMAを対象とする臨床試験とは異なるベースラインの特徴を有する参加者を組み入れました。腓骨CMAPが2mV以上または反射消失を有するという基準を満たさないSMN2遺伝子を2コピー持つ参加者のデータを除外すると、本NURTURE試験サブグループの全体的な運動機能および非運動機能のアウトカムは、試験コホート全体のデータより良いものでした。具体的には、正常な発育状況に相応の時期に運動機能のマイルストーンを達成した参加者の割合がより高く、24カ月以内に呼吸器の装着や胃瘻チューブの造設を要した小児やSMAを発症した小児は皆無または少数でした。

フォローアップ期間延長中のスピンラザの安全性プロファイルは、以前報告された結果と一貫していました。本試験では、12名(48%)の参加者が1つ以上の重篤な有害事象(AE)を経験しました。いずれのAEあるいは重篤なAEもスピンラザ治療との関連はないと考えられました。NURTURE試験で最も多く報告されたAEは、発熱、上気道感染症、咳、鼻咽頭炎でした。約1年ごとに解析すると、重症AEの発症率は時間の経過に伴い減少しました。

NURTURE試験は継続中の臨床第II相オープンラベル試験で、SMAの遺伝子診断を受けた(1型または2型SMAを発症する可能性が極めて高いと考えられる)、生後6週前に最初のスピンラザ投与を受けた25人の発症前の小児を対象にしています。本試験は、早期治療の影響をより理解するために、8歳までのより長期的なスピンラザ治療の有効性と安全性を評価しています。NURTURE試験(NCT02386553)の詳しい情報は clinicaltrials.gov をご覧ください。

スピンラザ® (ヌシネルセン)について
スピンラザは脊髄性筋萎縮症(SMA)の乳幼児、小児および成人の治療薬として世界60カ国以上で承認されています。SMAの基盤となる治療として、全世界で14,000人以上がスピンラザの治療を受けています2

スピンラザは体内で生成される完全長Survival Motor Neuron (SMN)タンパクの量を継続的に増やすことで、SMAの根本原因を標的にするアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)です。3 SMAの発症部位に到達できるよう、スピンラザは中枢神経系に直接投与されます。3

スピンラザは最長8年間4治療を受けた参加者データと、他に類のないリアルワールドの経験に基づき、十分に確立された安全性プロファイルを有し、様々な年齢や異なるタイプのSMAに持続した有効性を示してきました。ヌシネルセンの臨床開発プログラムには、2つの無作為化対照試験(ENDEAR試験およびCHERISH試験)を含む、幅広い患者集団にわたる460人以上の参加者を組み入れた10本以上の臨床試験があります。SHINE試験およびNURTURE試験のオープンラベル延長試験はスピンラザの長期的な影響を評価しています。臨床試験で最も多く観察された有害事象は、呼吸器感染症、発熱、便秘、頭痛、嘔吐、腰痛でした。いくつかのASO薬投与後に腎毒性や急性で重篤な血小板数減少を含む血液凝固異常が観察されていますが、それらは臨床検査によりモニターすることができます。

バイオジェンは、スピンラザを開発・製造・製品化するためのグローバルな権利を、アイオニス・ファーマシューティカルズ社(ナスダック略号:IONS)から供与されています。スピンラザに関する安全性情報や処方情報の詳細は、それぞれ各国の製品ウェブサイト(日本での情報はこちらから)をご参照ください。

バイオジェンについて
1978年に設立されたバイオジェンは、多発性硬化症の広範なポートフォリオを有し、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する二つの治療薬を共同開発するなど、数多くの革新的なイノベーションを生み出したグローバル・バイオテクノロジー企業です。バイオジェンは神経、神経精神、特定の免疫、希少疾患といった領域において画期的な治療となりうるパイプラインを進展させ、サイエンスを通じて人々に貢献するという理念を厳格に追求し、人々がより健康的に、持続可能で平等に生きていける世界となるよう取り組んでいます。

バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体Twitter, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. WHO Multicentre Growth Reference Study Group. WHO Motor Development Study: Windows of achievement for six gross motor development milestones. Acta Paediatr Suppl. 2006 Apr;450:86-95. doi: 10.1111/j.1651-2227.2006.tb02379.x.
  2. Based on commercial patients, early access patients, and clinical trial participants through December 31, 2022. 
  3. SPINRAZA U.S. Prescribing Information. Available at:
    https://www.spinraza.com/content/dam/commercial/specialty/spinraza/caregiver/en_us/pdf/spinraza-prescribing-information.pdf. Accessed: June 2023.
  4. Tulinius M, et al. Long-Term Safety and Efficacy of Nusinersen in Infantile-Onset Spinal Muscular Atrophy: 5-Year Interim From SHINE. Poster PC22. Presented at SMA Europe 3rd International Scientific Congress on Spinal Muscular Atrophy, October 21–23, 2022, Barcelona, Spain.
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