エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィ―バッハ―、以下 バイオジェン)は、このたび、英国(北アイルランドを除く)において、 エーザイが抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ(一般名)について、脳内 アミロイド病理が確認された早期アルツハイマー病(アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害および軽度認知症)に係る販売承認申請(MAA)を、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)に提出したことをお知らせします。なお、レカネマブは、MHRAよりILAP(Innovative Licensing and Access Pathway)に指定されています。
本申請は、レカネマブ投与による早期ADの臨床症状の悪化抑制を実証した臨床第Ⅲ相Clarity AD検証試験、臨床第Ⅱb相試験(201試験)などに基づくものであり、今後MHRAにより承認審査に向けた本申請受理の可否に関するバリデーションが行われます。レカネマブは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有する可溶性のAβ凝集体(プロトフィブリル)に選択的に結合し、脳内から除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されています。Clarity AD試験では、主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成しました。
レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
以上
参考資料
1. 英国のILAP(Innovative Licensing and Access Pathway)について
ILAPは、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)によって提供されるプログラムであり、生命を脅かすあるいは重度の衰弱をもたらす症状または患者様の重要なアンメット・ニーズがある症状に対する革新的な医薬品について、上市までの時間を短縮することを目的としています。ILAPは、この目標を達成するために、販売承認申請(MAA)までのプロセスにおいて、企業(申請者)、MHRA、および国立医療技術評価機構(NICE)などの償還機関の連携を強化し、薬剤アクセスの加速を支援します。
2. レカネマブについて
レカネマブ(一般名)は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。
レカネマブについて、米国において、2023年1月6日に米国食品医薬品局(FDA)よりアルツハイマー病(AD)治療薬として迅速承認を取得し、同日、フル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請(supplemental Biologics License Application:sBLA)を提出し、受理されるとともに優先審査に指定され、PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクションデート(審査終了目標日)は7月6日に設定されました。欧州においては、1月9日に欧州医薬品庁(EMA)に販売承認申請を提出し、1月26日に受理されました。日本においては、1月16日に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に新薬承認申請を行い、1月26日に厚生労働省より優先審査品目に指定されました。中国においては、2022年12月に中国の国家薬品監督管理局(NMPA)にBLAのデータ提出を開始し、2023年2月27日に優先審査に指定されました。カナダにおいては、2023年3月31日にカナダ保健省(Health Canada)に新薬承認申請を行い、同年5月15日に受理されました。
米国におけるレカネマブの適応症はADの治療です。レカネマブによる治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者様において開始する必要があります。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性のデータはありません。本適応症は、レカネマブで治療された当事者様で観察されたAβプラークの減少に基づき、迅速承認で承認されています。本迅速承認の要件として、検証試験による臨床的有用性の確認が必要となります。
レカネマブの皮下注射の開発をおこなっており、バイオアベイラビリティ試験が終了し、現在Clarity AD試験OLEにおいて皮下投与の評価が進行中です。
2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health、National Institute on Agingによる資金提供を受けています。
また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。
3. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
4. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療薬の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。
5. エーザイ株式会社について
エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントTwitter、LinkedIn、Facebookでも情報公開しています。
6. バイオジェン・インクについて
1978年に設立されたバイオジェンは、多発性硬化症の広範なポートフォリオを有し、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する二つの治療薬を共同開発するなど、数多くの革新的なイノベーションを生み出したグローバル・バイオテクノロジー企業です。バイオジェンは神経、神経精神、特定の免疫、希少疾患といった領域において画期的な治療となりうるパイプラインを進展させ、サイエンスを通じて人々に貢献するという理念を厳格に追求し、人々がより健康的に、持続可能で平等に生きていける世界となるよう取り組んでいます。
バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/およびSNS媒体Twitter、LinkedIn、Facebook、YouTubeをご覧ください。