本資料は、米バイオジェン社が 2023年10月25日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

バイオジェン、タウを標的とする開発中のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)について、早期アルツハイマー病の新世代治療薬候補として有望な新データを発表

  • 臨床第Ib相試験のBIIB080高用量群において、認知機能および生活機能に関する複数の指標で良好な傾向を報告
  • タウを標的とする治療薬について、凝集タウ病変の減少と臨床アウトカムの良好な傾向を示した初の試験
  • 有効性と安全性をさらに評価する臨床第II相CELIA試験の被験者登録が進行中

米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2023年10月25日– バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は、軽度アルツハイマー病(AD)を対象に開発中のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であるBIIB080について、新規の臨床第Ib相試験のデータを発表しました。そのデータによると、AD被験者(n=46)の認知機能および日常生活機能の複数の探索的エンドポイントにおいて良好な傾向が示され、脳脊髄液中におけるタウタンパク質(CSF t-tau)と脳の各部位におけるポジトロン放出断層撮影(PET)によるタウタンパク質の減少を示した、以前の結果をさらに強化するものとなりました。この最新情報は10月24~27日にマサチューセッツ州ボストンで開催された2023年度アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)において発表されました。

ADにおいては、タウとアミロイドベータの両方が疾患進行に関連しています。1 タウタンパク質は認知に関わる脳の部位に次第に蓄積してもつれを形成することがあります。2 病理的なタウのもつれの蓄積は神経細胞死の原因となることが示されています。ASO治療薬は疾患に関連するタンパク質の産生を調節する有望なツールであると考えられます。現在、ASOによるアプローチは様々な癌、ウィルス性疾患、遺伝子疾患を含む幅広い疾患領域で60以上の承認済または臨床試験中の治療薬として実証されています。3

バイオジェンの開発部門責任者である、プリヤ・シンハル(Priya Singhal), M.D., M.P.H.は次のように述べています。「タウを標的とする新規メカニズムで、標的への強固な作用と臨床アウトカムの良好な傾向の両方が示されたのは今回が初めてです。まだ予備的な知見ではありますが、私たちはこの結果に大いに勇気づけられており、引き続き臨床第II相CELIA試験への被験者組み入れを進めてまいります。私たちはアルツハイマー病に打ち勝つには複数の異なるアプローチが必要であると考えており、タウを標的とする新世代治療薬の探索にも懸命に取り組んでまいります」。

CTADで発表された結果によると、BIIB080の高用量の投与を受けた被験者群(n=16)で第100週でのグローバルCDR-SB (Clinical Dementia Rating Sum of Boxes) および MMSE (Mini-Mental State Exam) の認知スケールとFAQ (Functional Activities Questionnaire) で、いずれも良好な傾向が認められました。この結果は、CSF内のタウの総量およびリン酸化タウのレベルとPET検査で測定した脳の全部位における凝集タウ病変を減少させたことで、タウタンパク質産生への直接のアプローチがタウのバイオマーカーに大きなインパクトをもたらしたことを示した、ADPDTM 2023 (The International Conference on Alzheimer’s and Parkinson’s Disease) で発表したデータをさらに強化するものとなりました。これらの良好な傾向はPETで認められたタウ病変の減少と臨床アウトカムとの関連の可能性を示唆するものです。

本試験期間を通じてBIIB080の忍容性は良好でした。有害事象の重症度はほとんどが軽症または中等症で、最も多く認められたものは頭痛、背部痛、四肢痛、腰椎穿刺後症候群、処置痛でした。

BIIB080は微小管結合タンパク質タウ(MAPT) のmRNAに結合し、タウタンパク質の産生を減少させるように設計されています。本臨床Ib試験およびその長期継続投与試験は、ADによる軽度認知症患者さんにおける複数の異なる用量の安全性と忍容性を評価すべく設計されました。被験者はプラセボ、またはBIIB080の10mg、30mg、60mgのそれぞれ4週ごとの投与[Q4W] または115mgの12週ごとの投与 [Q12W] の4用量のコホートに無作為に割り付けられました。長期投与継続期間(LTE)においては、全被験者が60mgまたは115mgを12週ごとに投与されました。

臨床第II相CELIA試験 (NCT05399888) の被験者登録は、北米、欧州、アジア太平洋地域の施設で進行中です。本試験は、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の悪化を抑制するためにタウを標的とするASOであるBIIB080の可能性を評価するものです。

バイオジェンは2019年12月にアイオニス・ファーマシューティカルズ社 (Ionis Pharmaceuticals, Inc.) との間でライセンスのオプション権を行使し、BIIB080の開発および製品化でロイヤリティを含む全世界の独占権を取得しました。

アンチセンス治療薬について
アンチセンス治療薬は極めて特異的に mRNA を探索し結合し破壊すべく設計されており、そのため疾患を誘発するタンパク質の量を劇的に減少させます。またアンチセンス治療薬は、特定のタンパク質の産生を増加させることで通常のレベルに回復させて、そのタンパク質の量が過少なことで発症する疾患を治療することもできます。

バイオジェン社について
1978年に設立されたバイオジェンは、多発性硬化症の広範なポートフォリオを有し、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する二つの治療薬を共同開発するなど、数多くの革新的なイノベーションを生み出したグローバル・バイオテクノロジー企業です。バイオジェンは神経、神経精神、特定の免疫、希少疾患といった領域において画期的な治療となりうるパイプラインを進展させ、サイエンスを通じて人々に貢献するという理念を厳格に追求し、人々がより健康的に、持続可能で平等に生きていける世界となるよう取り組んでいます。バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

 

参考文献
  1. BrightFocus Foundation. Tau Protein and Alzheimer’s Disease: What’s the Connection?https://www.brightfocus.org/alzheimers/article/tau-protein-and-alzheimers-disease-whats-connection. Accessed September 2023.
  2. Moumné et al. Oligonucleotide Therapeutics: From Discovery and Development to Patentability. Pharmaceutics 2022, 14(2), 260; https://doi.org/10.3390/pharmaceutics14020260
  3. Alzheimer’s Association. Tau Topic Sheet. https://www.alz.org/media/Documents/alzheimers-dementia-tau-ts.pdf. Accessed October 2023.
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