本資料は、米バイオジェン社が 2024年6月9日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

早期アルツハイマー病治療剤「レケンビ®」の静注維持投与に関する生物製剤承認一部変更申請が米国FDAにより受理

    エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィ―バッハ―、以下 バイオジェン)は、このたび、ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体モノクローナル抗体「レケンビ®」(一般名:レカネマブ)について、静注(IV)維持投与に関する生物製剤承認一部変更申請(sBLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理されたことをお知らせします。PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクションデート(審査終了目標日)は2025年1月25日に設定されました。米国における「レケンビ」の適応は、アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害または軽度認知症(総称して早期AD)の治療です。

    「レケンビ」のIV維持投与(月一回投与)では、二週間一回投与の初期治療フェーズ後の当事者に対して、神経細胞に損傷を引き起こす可能性のある毒性の高いプロトフィブリル*を継続的に除去するために有効な薬物濃度を維持する用量を投与します。本sBLAは、臨床第Ⅱ相試験(201試験)、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験(301試験)、ならびにそれぞれの非盲検長期継続投与試験(OLE)から得られたデータのモデリングに基づいています。なお、初期治療の期間についてはFDAと協議中です。

    ADは、神経毒性のあるアミロイド蛋白による進行性の疾患であり、その病理変化プロセスはAD当事者の生涯にわたって継続するため、持続的な治療が必要です。また、適格な当事者に対して、より早期段階で治療を開始することで、より良いアウトカムが期待できます。「レケンビ」は、201試験および301試験ならびにそれぞれのOLEにおいて、18カ月のコア試験以降も毒性の高いプロトフィブリルを継続的に除去することで、治療効果が延長することがデータで示されています。本維持投与が承認されれば、当事者とケアパートナーが維持投与を継続しやすい月一回の負担の少ない投与レジメンにより、臨床上およびバイオマーカー上のベネフィットが維持できます。

    「レケンビ」の皮下注射(SC)オートインジェクターによる維持投与(週一回投与)に関する生物製剤承認申請(BLA)については、FDAによるFast Track指定を受け、2024年5月に段階的申請を開始しました。

    「レケンビ」は現在、米国、日本、中国、韓国で承認されており、EU、オーストラリア、ブラジル、カナダ、香港、英国(北アイルランドを除く)、インド、イスラエル、ロシア、サウジアラビア、台湾、シンガポールおよびスイスで承認申請中です。

    レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

* プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります1。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています2

以上

参考資料

1.  レケンビについて
       レケンビ(一般名:レカネマブ、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。「レケンビ」は米国、日本、中国、韓国で承認を取得しています。米国、日本、中国および韓国における「レケンビ」の適応は以下の通りです。

  • 米国:アルツハイマー病(AD)の治療、ただしADによる軽度認知障害または軽度認知症の当事者において開始する必要がある
  • 日本:ADによる軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制
  • 中国:ADによる軽度認知障害及び軽度の認知症の治療
  • 韓国:成人のADによる軽度認知障害および軽度の認知症の治療

       「レケンビ」の承認は、エーザイが実施した大規模グローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータに基づくものであり、本試験において「レケンビ」は主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました3,4。主要評価項目は、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)であり、「レケンビ」はCDR-SBにおける18カ月時点の臨床症状の悪化をプラセボと比較して27%抑制しました。また、副次評価項目の一つである、衣服の着脱、食事、地域活動への参加など当事者が自立して生活する能力を介護者が評価するAD Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment(ADCS MCI-ADL)においては、プラセボと比較して37%の統計学的に有意なベネフィットが認められました。なお、「レケンビ」投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒でした。

       レカネマブについて、欧州(EU)など13の国と地域で承認申請を行っています。

       2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

2.  エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
       エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

3.  エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
       2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

4.  エーザイ株式会社について
       エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
       また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
       エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントXLinkedInFacebookでも情報公開しています。

5.  バイオジェン・インクについて
       1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
       バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体X, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z
  2. Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.
  3. Eisai presents full results of lecanemab Phase 3 confirmatory Clarity AD study for early Alzheimer's disease at Clinical Trials on Alzheimer's Disease (CTAD) conference. Available at: https://www.eisai.co.jp/news/2022/news202285.html Last accessed: February 2024.
  4. van Dyck. C, et al. Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease. The New England Journal of Medicine. DOI: 10.1056/NEJMoa2212948. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2212948
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