エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:Christopher A. ヴィ―バッハ―、以下 バイオジェン)は、このたび、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会(Committee for Medicinal Products for Human Use: CHMP)が、ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体モノクローナル抗体レカネマブ(一般名、ブランド名:「レケンビ®」)の早期アルツハイマー病(アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害および軽度認知症)に係る販売承認申請(MAA)について、否定的見解を採択したことをお知らせします1。
エーザイのチーフクリニカルオフィサーである Lynn Kramer, M.D.は「今回のCHMPによる否定的見解は極めて残念であり、多くのアルツハイマー病のコミュニティにおいて大きな失望をもって受け止められています。アルツハイマー病は、不可逆的な神経変性疾患であり、当事者様に加えて、介護者、そして社会にとっても大きな課題となっています。アルツハイマー病の根本原因を標的とする革新的な治療薬に対するアンメットニーズは極めて高く、我々は早期アルツハイマー病の当事者様やそのご家族に有意義な変化をもたらすことに引き続き注力していきます」と述べています。
エーザイは、今回のCHMPの見解に対しては再審議(re-examination)の請求を行い、当局との協力のもと、欧州連合(EU)諸国の早期AD当事者様に一日も早くレカネマブをお届けできるよう努めてまいります。
本剤はすでに、米国、日本、中国、韓国、香港、イスラエルで承認を取得し、米国、日本、中国で発売しています。
欧州における認知症の当事者数は690万人と推定されています2。AD当事者様数は、今後も高齢化の進展に伴って増加し、2050年までに約2倍になると考えられています3。
エーザイは、本剤の開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
以上
参考資料
1. レカネマブ(一般名、ブランド名「レケンビ」)について
レカネマブは、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。
レカネマブは、ADによる軽度認知障害または軽度認知症に係る適応で、米国、日本、中国、韓国、香港、イスラエルで承認を取得しています。これら国々での承認は、エーザイが実施したグローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータに基づくものであり、本試験においてレカネマブは主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました4,5。主要評価項目は、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)であり、レカネマブはCDR-SBにおける18カ月時点の臨床症状の悪化をプラセボと比較して27%抑制しました4。ベースラインでの平均 CDR-SB スコアは、両方のグループで約 3.2 でした4。18カ月後のベースラインからの調整済み最小二乗平均変化量は、レカネマブ群で1.21、プラセボ群で1.66でした[差、-0.45;95%信頼区間(CI)、-0.67, -0.23;P<0.001]4。また、副次評価項目の一つである、衣服の着脱、食事、地域活動への参加など当事者様が自立して生活する能力を介護者が評価するAD Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment(ADCS MCI-ADL)においては、プラセボと比較して37%の統計学的に有意なベネフィットが認められました4。ADCS MCI-ADL スコアの 18 カ月後のベースラインからの調整平均変化量は、レカネマブ群で-3.5、プラセボ群で -5.5 でした(差、2.0;95% CI、1.2, 2.8;P<0.001)4。なお、レカネマブ投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒でした4。
レカネマブは、欧州(EU)、英国など、12の国と地域で承認申請を行っています。また、2024年3月に静注維持投与に関する米国食品医薬品局(FDA)への生物製剤承認一部変更申請(sBLA)を提出し、2024年6月、受理されました。2024年5月に、利便性向上をめざし開発を進めている皮下注射(SC)製剤について、米国FDAに、Fast Track指定の下、維持投与に関する生物製剤承認申請の段階的申請を開始しました。
2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。
2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
3. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。
4. エーザイ株式会社について
エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントX、LinkedIn、Facebookでも情報公開しています。
5. バイオジェン・インクについて
1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。
私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体X, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。
- Meeting highlights from the Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP) 22-25 July 2024 https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-committee-medicinal-products-human-use-chmp-22-25-july-2024.
- Gustavsson, A., et al. Global estimates on the number of persons across the Alzheimer's disease continuum. Alzheimer’s & Dementia. 2023;19:658-670. https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/alz.12694.
- Alzheimer Europe. Prevalence of dementia in Europe. Available at: https://www.alzheimer-europe.org/dementia/prevalence-dementia-europe.
- van Dyck, H., et al. Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease. New England Journal of Medicine. 2023;388:9-21. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2212948
- Eisai Global. 2023. Eisai Presents Full Results of Lecanemab Phase 3 Confirmatory Clarity AD Study for early Alzheimer’s Disease at Clinical Trials on Alzheimer’s Disease (CTAD) Conference. Available at: https://www.eisai.com/news/2022/news202285.html. Last accessed: July 2024.