本資料は、米バイオジェン社が 2025年1月26日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

早期アルツハイマー病治療剤「レケンビ®」の静注維持投与、米国FDAが承認

4週に1回の維持投与により、
当事者様と介護者にとって治療継続が容易になることが期待される

プラーク除去後も進行するアルツハイマー病において、
「レケンビ」の投与継続により疾患の進行を遅らせ、治療効果が持続することが可能

    エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役 CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィ―バッハ―、以下 バイオジェン)は、このたび、ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体モノクローナル抗体「レケンビ®」(一般名:レカネマブ)について、米国食品医薬品局(FDA)より、4週に1回投与の静注(IV)維持投与に関する生物製剤一部変更申請(sBLA)が承認されたことをお知らせします。米国における「レケンビ」の適応は、アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)または軽度認知症(総称して早期AD)の治療です。本承認により、「レケンビ」は18カ月間の隔週投与による初期治療後、10mg/kgの4週に1回の維持投与レジメンへの移行を検討するか、もしくは10mg/kgの隔週投与レジメンを継続することができます。

    本sBLAは、「レケンビ」の臨床第Ⅱ相試験(201試験)、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験(301試験)、ならびにそれぞれの長期継続投与試験(LTE)から得られたデータによるモデリングに基づいています。モデルシミュレーションにより、「レケンビ」の18カ月間の隔週投与初期治療後に、4週に1回の維持投与に移行することで、臨床上とバイオマーカー上のベネフィットが維持されることが示唆されています。
    ADは、プラーク沈着前に始まり、プラーク沈着後も継続する進行性の神経毒性プロセスを有する疾患です1,2,3。「レケンビ」は、プロトフィブリル*の除去とプラークの迅速な除去という二つの作用を有する唯一のAD治療剤であり、継続的な投与により、Aβプラーク除去後も神経細胞に損傷を引き起こす毒性の高いプロトフィブリルを継続的に除去します。

継続的な治療の重要性

  • 201試験のコア試験終了後、LTEが開始されるまでの無投与期間(ギャップ期間)のデータは、治療の中止により、アミロイドPET、血漿と脳脊髄液のバイオマーカーの再蓄積が引き起こされ、さらに臨床上の疾患進行の速度がプラセボ群と同等になることを示しています
  • 維持療法において、4週に1回の投与レジメンにより、当事者様とケアパートナーは隔週投与よりも治療継続が容易になる可能性があります。
  • 投与の継続は、ADの進行を遅らせ、治療によるベネフィットを延長し、当事者様がより長く自分らしい生活を続けられることを目標としています。
  • Clarity ADコア試験(18カ月)において、主要評価項目である全般臨床症状の評価指標CDR-SBのレカネマブ隔週投与群とプラセボ群のベースラインからの平均変化量の差は、-0.45(P<0.0001)でした。
  • Clarity ADコア試験とLTEを通して3年間のレカネマブ投与を受けた被験者のCDR-SBのベースラインからの平均変化量の差は、ADNI**(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)データを基にしたADの自然経過による低下と比較して -0.95まで拡大し、早期AD当事者様にとって臨床的に意義のあるベネフィットが継続していることを示しました。
    • CDRスコアにおいて、記憶、地域社会活動、家庭および趣味に関する項目が0.5から1へ変化(悪化)するということは、当事者様が自立して最近の出来事を記憶し、日常生活や家事を行い、趣味や知的関心事を楽しむといった能力が、軽度障害の段階から自立した活動が難しくなる段階へ移行することを意味します。

    「レケンビ」は、米国、日本、中国、韓国、香港、イスラエル、アラブ首長国連邦、英国(北アイルランドを除く)、メキシコ、マカオで承認を取得しています。欧州(EU)をはじめ、17の国と地域で承認申請を行っており、2024年11月に欧州医薬品委員会より承認勧告を受領しました。皮下注射製剤維持投与について、2025年1月に生物学的製剤追加ライセンス(BLA)がFDAに受理され、PDUFAアクションデートが2025年8月31日に設定されました。

    レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

* プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります5。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています6

** ADNIは、ADの発症を予測し、治療の有効性を確認する方法を開発するために2005年に開始された臨床研究プロジェクトです。ADNI観察コホートは、Clarity AD試験当事者様と同等な集団です。Clarity AD試験被験者様と同じ背景を有するADNI参加者は、Clarity AD試験の18カ月のコア試験におけるプラセボ群と同程度の病態の進行を示しました。

 

参考資料

1. レカネマブ
    レカネマブ(一般名)は、BioArctic AB(本社:スウェーデン、以下 バイオアークティック)とエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。

    レカネマブは、アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害または軽度認知症に係る適応で、米国、日本、中国、韓国、香港、イスラエル、アラブ首長国連邦、英国(北アイルランドを除く)、メキシコ、マカオで承認を取得しています。これらの国々での承認は、エーザイが実施した大規模グローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータに基づくものであり、本試験においてレカネマブは主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました7, 8。なお、レカネマブ投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒でした。

    レカネマブは、欧州(EU)をはじめ、17の国と地域で承認申請を行っています。2024年11月、欧州医薬品委員会より承認勧告を受領しました

    2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
    エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

3. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
    2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

4. エーザイ株式会社について
    エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
    また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
    エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントXLinkedInFacebookでも情報公開しています。

5. バイオジェン・インクについて
    1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
    バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/およびSNS媒体XLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. LEQEMBI (lecanemab-irmb) injection, for intravenous use [package insert]. Nutley, NJ: Eisai Inc.
  2. Iwatsubo T, Irizarry M, van Dyck C, Sabbagh M, Bateman RJ, Cohen S. Clarity AD: a phase 3 placebo-controlled, double-blind, parallel-group, 18-month study evaluating lecanemab in early Alzheimer’s disease. Presented at: CTAD Conference; November 29-December 2, 2022; San Francisco, CA.
  3. Hampel H, Hardy J, Blennow K, et al. The amyloid-β pathway in Alzheimer’s disease. Mol Psychiatry. 2021;26(10):5481-5503.
  4. Eisai presents long-term administration data of lecanemab at the Alzheimer's Association International Conference (AAIC) 2024. Available at: https://www.eisai.co.jp/ir/library/presentations/pdf/4523_240731_1.pdf
  5. Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z
  6. Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.
  7. van Dyck, C., et al. Lecanemab in Early Alzheimer's Disease. New England Journal of Medicine. 2023;388:9-21. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2212948
  8. Eisai presents full results of lecanemab Phase 3 confirmatory Clarity AD study for early Alzheimer's disease at Clinical Trials on Alzheimer's Disease (CTAD) conference. Available at: https://www.eisai.com/news/2022/news202285.html
Biogen-258422