本資料は、米バイオジェン社が 2025年7月30日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

「レケンビ®」360mg皮下注射維持投与に関する新規データをアルツハイマー病協会国際会議(AAIC)2025において発表

レカネマブの皮下注射オートインジェクターは、静脈投与と同等の臨床効果と安全性を提供し、当事者様・ケアパートナー・医療従事者にとってより簡便でアクセスしやすい投与方法として、早期アルツハイマー病に対する継続治療における重要な選択肢に

      エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィーバッハー、以下 バイオジェン)は、このたび、カナダ トロントおよびバーチャルで開催中のアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference:AAIC)2025において、抗Aβプロトフィブリル*抗体であるレカネマブ(一般名、製品名「レケンビ®」)の皮下注射オートインジェクター(SC-AI: Subcutaneous Autoinjector)による維持投与に関するデータを発表しましたので、お知らせします。
      レカネマブは、プロトフィブリルとアミロイドプラークの双方をターゲットとする唯一のアルツハイマー病(AD)治療剤であり、その後のタウ蓄積にも影響を与えることが期待されます。

継続治療と皮下注射製剤の開発の重要性
      ADは、治療中止後、バイオマーカーの再上昇が生じ、臨床上の疾患進行の速度がプラセボ群と同等となることから1、エーザイは、この進行性の疾患に対するレカネマブによる治療を継続できるように、18カ月の点滴(IV)治療後に継続可能なSC-AIによる維持療法の開発を進めています。
      レカネマブのSC投与の臨床試験は、早期AD当事者様を対象とした臨床第Ⅲ相Clarity AD試験のコア試験に続く非盲検長期継続投与試験(OLE)のサブスタディとして実施され、SCバイアル

またはオートインジェクター(AI)による複数の投与量が評価されました。その結果、維持療法として360mg 週1回投与SC-AIを開発しました。なお、初期療法として500mg 週1回投与SC-AIを開発中です。

SC投与によるIV投与と同等の臨床効果とバイオマーカーへの影響
      18カ月以降のIV維持投与に対するFDA承認の根拠ともなった、レカネマブの豊富な臨床データに基づく、薬理学(PK/PD)、臨床(CDR-SBのような臨床効果指標)、バイオマーカー(アミロイドPETや血液バイオマーカー)の関連性は、開発中のSC投与が維持療法の新たな選択肢になることについても支持しています。

  • 18カ月間の2週に1回10mg/kgのIV初期投与後に、週1回360mgのSC-AI投与へ移行することで、IV維持投与と同等の臨床上およびバイオマーカー上の効果が維持されることが示されました。
  • 月1回投与維持投与による48カ月時点での臨床上・バイオマーカー上の効果は、2週に1回のIV維持投与と同等でした。この結果は、初期投与18カ月時点での脳内Aβの量(アミロイド陽性(>30 CL)または陰性(<30 CL))に関わらず、同様に示されました。
  • 500mgのSC-AIは、初期療法である2週に1回10mg/kgのIV投与と同等の薬物曝露量を示し、アミロイド除去、治療効果、ARIA-E(浮腫/浸出)において同等の結果が示されました。

安全性
      360mg 週1回SC維持投与の安全性プロファイルは、IV維持投与と一貫していることが示され、Infusion reactionの発現率は1%未満でした。またすべてのSC投与量についても、Infusion reactionの発現率はIV(26%)に比べて低い(1%)ことが示されました。360mg 週1回SC維持投与は、ARIAの発現リスクの高い期間の後となる18カ月のIV初期投与後に開始されます。平均6カ月間の360mg 週1回 SC維持投与を受けた49人中、ARIAの発現が確認された症例はありませんでした。

SC-AIの使用性と使いやすさの評価
      SC-AIの安全かつ効果的な使用を最適化するために、SC-AIデバイスのヒューマンファクター研究および忍容性評価の追加研究を行いました。
      ヒューマンファクター研究には、110名(早期ADの当事者様:63名、ケアパートナー:32名、医療従事者:15名)が参加し、レカネマブSC-AIを適切に投与できるかを評価しました。その結果、全体の95%(104名)が維持療法用量の注射を成功させました。
      SC-AIデバイスの忍容性評価には、126名(早期AD当事者様:25名、ケアパートナー:50名、医療従事者:51名)が参加し、デバイスの使いやすさ、利便性、投与の実現可能性などの項目をインタビュー形式で評価しました。中間結果として、SC-AIについて、95%以上の方が投与が簡便であり、満足度も高く、自宅での使用を含め投与に不安がないと評価しました。さらに、評価に参加したすべての当事者様がSC-AIの導入を歓迎すると回答しました。

      今回のレカネマブのSC-AIに関する試験および研究により、SC-AIはIV投与と同等の有効性と安全性を提供するとともに、投与部位の有害事象の発生率の低下が期待できることが示されました。当事者様とケアパートナーの立場からは、自宅での使用、治療時間の短縮、通院を気にせず治療を継続することが可能になることなどのベネフィットがあげられ、医療従事者の立場からは、治療の恩恵を受けている当事者様への治療継続に向けた新たなオプションを提供できること、IV投与に関わる医療行為(準備や投与時間)を削減できること、早期ADにおける継続治療において重要な位置を占める可能性があることが示されました。

      本リリースは、AAICにおいて、7月30日(水)午前9:00からの「Featured Researchセッション#4-13-FRS-C:維持投与のためのレカネマブ皮下注射製剤:早期ADの継続治療における新規の簡便な選択肢となる可能性」の発表内容を基に記載しており、一部に7月27日(日)午前8:00からのDeveloping Topicsセッション「当事者様、ケアパートナー、医療従事者専門家の早期AD用のレカネマブ皮下投与オートインジェクターに関する意見」の内容を含みます。

      レカネマブは、エーザイが開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

* プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります1。そのメカニズムとして、不溶性アミロイドプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています2

以上

参考資料

1.  レケンビについて
      「レケンビ」(一般名:レカネマブ、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)は、バイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています。
      「レケンビ」は、日本、米国、中国、欧州(EU)、韓国、台湾、サウジアラビア等、46の国と地域で承認を取得しており、10カ国で申請中です。2025年1月、米国において、静注(IV)維持投与に関する生物製剤一部変更申請(sBLA)が承認され、レカネマブは18カ月間の隔週投与による初期治療後、10mg/kgの4週に1回の維持投与レジメンへの移行を検討するか、もしくは10mg/kgの隔週投与レジメンを継続することができるようになりました。皮下注射製剤維持投与について、2025年1月に生物製剤承認申請(BLA)が米国食品医薬品(FDA)に受理され、PDUFAアクションデートは2025年8月31日に設定されました。
      2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
       エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

3.  エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
       2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

4.  エーザイ株式会社について
       エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
       また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
       エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントXLinkedInFacebookでも情報公開しています。

5.  バイオジェン・インクについて
       1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
       バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体XLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z
  2. Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.
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