本資料は、米バイオジェン社が 2025年7月30日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

「レケンビ®」の4年間の継続治療により早期アルツハイマー病当事者様に対するベネフィットが継続、拡大することを示す臨床データをアルツハイマー病協会国際会議(AAIC)2025において発表

 

「レケンビ」は、4年間の投与時点で、アルツハイマー病の自然経過に対して、CDR-SBによる全般臨床症状の進行を1.75ポイント遅らせることを示す

 

4年間の投与時点で、脳内タウの蓄積が少ない当事者様の56%が認知機能および日常生活機能の改善を示す

      エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィーバッハー、以下 バイオジェン)は、このたび、カナダ トロントおよびバーチャルで開催中のアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference:AAIC)2025において、抗Aβプロトフィブリル*抗体であるレカネマブ(一般名、製品名「レケンビ®」)の継続治療のベネフィットを示す最新知見を発表したことをお知らせします。レカネマブは、プロトフィブリルとアミロイドプラークの双方をターゲットとする唯一のアルツハイマー病(AD)治療剤で、その後のタウ蓄積にも影響を与えることが期待されます。

4年間の継続的なレカネマブ治療により、ADの自然経過に対して、疾患の早期段階に留まる期間を延長
      Clarity AD試験は、早期アルツハイマー病(AD)当事者様1,795人(レカネマブ群:10 mg/kg 隔週毎の静注投与:898人、プラセボ群:897人)を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化グローバル臨床第Ⅲ相試験です。18カ月間の本コア試験を完了した被験者の95%が、コア試験に続く非盲検長期継続投与試験(OLE)に参加することを選択し、478人の当事者様が4年間の投与を受けました。
      コア試験における、主要評価項目である全般臨床症状の評価指標CDR-SBのレカネマブ群とプラセボ群のベースラインからの平均変化量の差は、-0.45(P=0.00005)でした。
      CDRスコアにおいて、記憶、地域社会活動、家庭および趣味に関する項目が0.5から1へ変化(悪化)するということは、当事者様が自立して最近の出来事を記憶し、日常生活や家事を行い、趣味や知的関心事を楽しむといった能力が、軽度障害の段階から自立した活動が難しくなる段階へ移行することを意味します1,2

      コア試験とOLEを通して継続投与を受けた被験者のCDR-SBのベースラインからの平均変化量の差は、ADNI**(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)データを基にしたADの自然経過による低下と比較して、3年間の投与時点では-1.01でしたが、この効果は4年間の投与時点でさらに顕著になり、-1.75までさらに拡大しました。また、BioFINDER***データを基にしたADの自然経過による低下と比較した場合では、3年間投与時点では-1.40でしたが、4年間投与時点で-2.17にまで拡大しました(図1)。

 

図1. レカネマブ4年間の投与によるCDR-SBの変化

 

レカネマブによる4年間にわたる治療は一貫した安全性プロファイルを示す
      レカネマブによる4年間の継続治療においては、新たな安全性の兆候は観察されませんでした。アミロイド関連画像異常(ARIA)の発現率は最初の12カ月以降に低下し、4年間にわたって一貫して安定していました。FDAの添付文書に記載されているように、ARIAの発現率と時期は治療薬によって異なります3

ADのより初期段階で治療を開始した当事者様の50%以上が4年間のレカネマブによる治療後も引き続き臨床症状スコアの改善を示す
      Clarity AD試験では、任意のタウPETサブスタディとして、脳内にタウ蓄積が少ない(Low tau)当事者様を特定しました。脳内タウの蓄積に伴い、認知機能や日常生活機能が低下し始めるため、Low tau当事者様は、ADのより初期の段階にあると考えられます。4年間のレカネマブによる治療後、CDR-SBについて、Low tau当事者様の69%で悪化が認められず、56%で改善が示され、18カ月投与時点との比較において、ベネフィットが継続していることが示されました(図2)。主に記憶を評価するスケールであるADAS-Cog14では、当事者様の51%で悪化が認められず、51%で改善が示されました。当事者様の日常生活動作を評価するスケールであるADCS MCI-ADLでは、当事者様の64%に悪化が認められず、58%で改善が示されました。これらのことから、ADのより早期段階にレカネマブによる治療を開始し、継続することにより、臨床症状の低下を遅らせ、長期にわたって持続的なベネフィットを提供する可能性が示唆されました。

図2. Low tau当事者様における
CDR-SBの「悪化が見られない」または「改善」の割合の推移

      レカネマブは、エーザイが開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

* プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります。そのメカニズムとして、不溶性アミロイドプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています

** ADNIは、ADの発症を予測し、治療の有効性を確認する方法を開発するために2005年に開始された臨床研究プロジェクトで、健常高齢者、軽度認知障害(MCI)、軽症AD当事者様を対象に、複数年にわたる縦断的観察を実施しています。

*** BioFINDERは、スウェーデン・ルンド大学を中心に行われている、神経変性疾患の早期診断と病態解明を目的とした長期間の大規模な前向き研究です。ADの他にもパーキンソン病などの疾患に焦点を当てており、参加者は定期的な臨床評価、認知機能検査、脳のイメージング(MRI、Aβ PET、タウPET)や、血液・脳脊髄液(CSF)バイオマーカーの採取などを受けます。

以上

参考資料

1. レケンビについて
      「レケンビ」(一般名:レカネマブ、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)は、バイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています。
      「レケンビ」は、日本、米国、中国、欧州(EU)、韓国、台湾、サウジアラビア等、46の国と地域で承認を取得しており、10カ国で申請中です。2025年1月、米国において、静注(IV)維持投与に関する生物製剤一部変更申請(sBLA)が承認され、レカネマブは18カ月間の隔週投与による初期治療後、10mg/kgの4週に1回の維持投与レジメンへの移行を検討するか、もしくは10mg/kgの隔週投与レジメンを継続することができるようになりました。皮下注射製剤維持投与について、2025年1月に生物製剤承認申請(BLA)が米国食品医薬品(FDA)に受理され、PDUFAアクションデートは2025年8月31日に設定されました。

      2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

2. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
      エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

3. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
      2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

4. エーザイ株式会社について
      エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
      また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
      エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントXLinkedInFacebookでも情報公開しています。

5. バイオジェン・インクについて
      1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
      バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体XLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. Cohen S., et al. J Prev Alzheimers Dis.2022;9(3):507-522.
  2. Morris JC. Neurology. 1993;43(11):2412-4.
  3. LEQEMBI (lecanemab-irmb) injection, for intravenous use [package insert]. Nutley, NJ: Eisai Inc.
  4. Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z
  5. Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.
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