本資料は、米バイオジェン社が 2025年8月29日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

抗Aβ抗体レカネマブの皮下注射製剤「LEQEMBI® IQLIK」による早期アルツハイマー病治療剤に対する維持療法を米国FDAが承認

 

「LEQEMBI IQLIK」は、進行性の疾患であるアルツハイマー病に対して、18カ月の初期治療後、在宅での継続治療を可能とする初めてかつ唯一の抗アミロイド療法

米国において、2025年10月6日に発売予定

      エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィーバッハー、以下 バイオジェン)は、このたび、米国食品医薬品局(FDA)が、抗Aβプロトフィブリル*抗体レカネマブ(一般名)の皮下注射(SC)製剤「LEQEMBI® IQLIK」(レケンビ アイクリック)の週1回の維持療法に関する生物製剤承認申請(BLA)を承認したことをお知らせします。「LEQEMBI IQLIK」は、エーザイが開発した360mg/1.8mL(200mg/mL)の皮下注オートインジェクター(SC-AI)製剤であり、平均15秒で投与が完了します。
      米国において、「LEQEMBI IQLIK」はアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)または軽度認知症(総称して早期AD)の維持治療の適応を有しています。「レケンビ」による18カ月の2週に1回の静脈(IV)投与による初期治療後、10mg/kgの4週に1回のIV維持投与、もしくは「LEQEMBI IQLIK」による週1回の360mg皮下投与の維持治療に移行することができます。

皮下注射維持投与の承認の裏付けとなった臨床試験

  • 本BLAは、早期AD当事者様を対象とした臨床第Ⅲ相Clarity AD試験のコア試験に続く非盲検長期継続投与試験(OLE)のSC投与サブスタディに基づいており、複数の投与量が評価されました。18カ月間の2週に1回のIV投与による初期治療の後に、週1回の「LEQEMBI IQLIK」投与に移行することで、IV投与による維持治療の場合と同等の臨床上およびバイオマーカー上の効果を維持することが示されました。
  • 「LEQEMBI IQLIK」の安全性は、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験のOLEの一環として、600名を超える当事者様を対象に評価されました。
  • 49名が、少なくとも18カ月の10mg/kgの2週に1回のIV投与を受けた後に、週1回の「LEQEMBI IQLIK」による360mgのSC維持投与を受け、局所または全身性の注射に伴う反応による有害事象は報告されませんでした。
  • 検討された全てのSC投与量について、安全性プロファイルは、IV投与と同様であることが示されましたが、重要な違いとして、全身性のinfusion reactionは、IV投与で約26%で発現した一方、SC投与では1%未満でした。約11%の当事者様に局所注射部位反応(注射部位の発赤、腫れ、掻痒など)が軽度から中等度で観察されましたが、投与継続を妨げるものではありませんでした。1%未満の当事者様に頭痛、発熱、倦怠感などの軽度の全身性症状が観察されました。
  • 360mgの週1回のSC維持投与を受けた当事者様におけるARIAの発現率は、18カ月の初期治療後もIV投与による継続治療を受けた当事者様において報告された発現率と同等であり、治療を受けていない当事者様のARIAの発現率とも同様でした。ARIAは通常、無症候性ですが、まれに生命を脅かす重篤な事象が発生し、致死的となる可能性があります。「レケンビ」投与によるARIAの大部分は、初期治療におけるIV投与の最初の6カ月以内に発生します。

継続治療の重要性
      ADはAβとタウを病理上の特徴とし、Aβプラーク沈着前に始まり、プラーク除去後も継続する進行性の神経変性プロセスを有する疾患です1, 2, 3。「レケンビ」は、プロトフィブリルとアミロイドプラークの双方をターゲットとする唯一のAD治療剤で、その後のタウ蓄積にも影響を与えることが期待されます。ADの治療は中止すると、バイオマーカーの再上昇が生じ、臨床上の疾患進行の速度がプラセボ群と同等となることから4, 5、週1回のSC投与または月1回のIV投与による維持治療は、ADの進行を遅らせ、治療効果を延長する上で重要な治療法となります。当事者様が自分らしい生活をより長く続けることができることをめざしています。

  • Clarity AD試験の18カ月間のコア試験における、主要評価項目である全般臨床症状の評価指標CDR-SBの2週に1回のIV投与によるレカネマブ群とプラセボ群のベースラインからの平均変化量の差は、-0.45(P=0.00005)でした。
  • CDRスコアにおいて、記憶、地域社会活動、家庭および趣味に関する項目が0.5から1へ変化(悪化)することは、当事者様が自立して最近の出来事を記憶し、日常生活や家事を行い、趣味や知的関心事を楽しむといった能力が、軽度障害の段階から自立した活動が難しくなる段階へ移行することを意味します6, 7
  • Clarity AD 試験のコア試験とOLEを通じてレカネマブによる継続投与を受けた48カ月投与時点での被験者のCDR-SBのベースラインからの平均変化量の差は、ADNI*2(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)データを基にしたADの自然経過による低下と比較して、-1.75まで拡大しました。
  • 同様に、48カ月投与時点でのBioFINDER*3データを基にしたADの自然経過による低下との比較では、CDR-SBで‐2.17にまで拡大しました。

SC投与による維持投与オプションの重要性
      「LEQEMBI IQLIK」が、想定される環境下で安全かつ効果的に使用できることを確認するために、ヒューマンファクター研究*4および忍容性評価の追加研究を行いました。
      当事者様とケアパートナーの立場からは、自宅での使用、治療時間の短縮、通院を気にせず治療を継続することが可能になるなどのベネフィットがあげられ、医療従事者の立場からは、治療の恩恵を受けている当事者様への治療継続に向けた新たなオプションを提供できることが報告されています。SC-AIによって、IV投与に関わる医療行為(点滴静注のための準備、投与に関わる看護師によるモニタリング等)が削減できるほか、新規の適格な当事者様が初期治療を開始するための点滴キャパシティが増加し、AD治療パスウェイ全体を効率化する効果が期待されます。

当事者様サポートプログラム
      エーザイは、適切な当事者様が「レケンビ」にアクセスできるように尽力しています。米国においては、複数のサポートプログラムを提供しています。専任のLEQEMBI Patient Navigatorsが、治療や保険適用、自己負担額、アクセス支援プログラムに関する情報提供とサポートを行います。「LEQEMBI IQLIK」を使用される当事者様への投与サポートの提供も行います。さらに、経済的支援を必要とする一部の当事者様に対しては、エーザイの「Patient Assistance Program」を通じて、一定の条件を満たす保険未加入またはメディケア受給者を含め保険が十分に適用されない当事者様に対し「レケンビ」と「LEQEMBI IQLIK」を無償提供します。

      米国における「LEQEMBI IQLIK」の発売は2025年10月6日を予定しています。また、「LEQEMBI IQLIK」による当事者様中心の早期AD治療と米国における価格設定アプローチについては、こちら(日本語)をご覧ください。

      レカネマブは、エーザイが開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

*プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります8。そのメカニズムとして、不溶性アミロイドプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています9

*2 ADNIは、ADの発症を予測し、治療の有効性を確認する方法を開発するために2005年に開始された臨床研究プロジェクトで、健常高齢者、軽度認知障害(MCI)、軽症AD当事者様を対象に、複数年にわたる縦断的観察を実施しています。

*3 BioFINDERは、MCIの当事者を対象として、スウェーデン・ルンド大学を中心に行われている、神経変性疾患の早期診断と病態解明を目的とした長期間の大規模な前向き研究です。ADの他にもパーキンソン病などの疾患に焦点を当てており、参加者は定期的な臨床評価、認知機能検査、脳のイメージング(MRI、Aβ PET、タウPET)や、血液・脳脊髄液(CSF)バイオマーカーの採取などを受けます。

*4 ヒューマンファクター研究は、人間の認知特性や身体的・精神的特性、それらに影響を与える環境、組織、システム、制度などを総合的に分析し、ヒューマンエラーの発生メカニズムを解明して、安全・快適・効率的なシステムや作業環境の構築をめざす実践的な科学分野です。本ヒューマンファクター研究では、「LEQEMBI IQLIK」が想定される使用環境下で安全かつ効果的に使用できることを検証するために行いました。

以上

参考資料

1.  レケンビについて
      「レケンビ」(一般名:レカネマブ、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)は、バイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています1。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし2、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります。そのメカニズムとして、不溶性Aβプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています。
      「レケンビ」は、日本、米国、中国、欧州(EU)、韓国、台湾、サウジアラビア等、48の国と地域で承認を取得しており、10カ国で申請中です。18カ月間の2週間に1回の投与による初期治療後の4週に1回のIV維持投与について、2025年1月に米国において承認を取得し、9つの国と地域で申請中です。

      「レケンビ」のこれらの国における承認は、エーザイが実施したグローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータ等に基づくものであり、本試験でレカネマブは主要評価項目とすべての主要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました。
      Clarity AD試験において、18カ月間のレカネマブによる治療により、プラセボと比較して主要評価項目であるCDR-SBで、臨床症状の悪化を27%抑制しました。ベースラインにおける平均CDR-SBスコアは、両グループとも約3.2でした。18カ月時点でのベースラインからの調整最小二乗平均変化は、レカネマブ投与群で1.21、プラセボ群で1.66であり、変化の量は−0.45(95%信頼区間[CI]、−0.67~−0.23;P<0.001)でした。また、副次的評価項目の一つであるケアパートナーにより評価される日常生活動作スケール(ADCS MCI-ADL)では、18カ月時点でプラセボと比較して37%の悪化抑制を示しました。ADCS MCI-ADLスコアの18カ月時点でのベースラインからの調整平均変化は、レカネマブ投与群で−3.5、プラセボ群で−5.5であり、変化量の差は2.0(95%CI、1.2~2.8; P<0.001)でした。ADCS MCI-ADLでは、当事者様が服を着たり、食事をしたり、地域社会の活動に参加したりする能力など、当事者様が自立して生活する能力を評価します。レカネマブ投与群で最も多く見られた有害事象は(>10%)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(ARIAによる浮腫/浸出)、頭痛、および転倒でした。

      2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。

2.  エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
       エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。

3. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
       2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。

4.  エーザイ株式会社について
       エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
       また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
       エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントXLinkedInFacebookでも情報公開しています。

5.  バイオジェン・インクについて
       1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
       バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体XLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
  1. LEQEMBI (lecanemab-irmb) injection, for intravenous use [package insert]. Nutley, NJ: Eisai Inc.
  2. Iwatsubo T, Irizarry M, van Dyck C, Sabbagh M, Bateman RJ, Cohen S. Clarity AD: a phase 3 placebo-controlled, double-blind, parallel-group, 18-month study evaluating lecanemab in early Alzheimer's disease. Presented at: CTAD Conference; November 29-December 2, 2022; San Francisco, CA.
  3. Hampel H, Hardy J, Blennow K, et al. The amyloid-? pathway in Alzheimer's disease. Mol Psychiatry. 2021;26(10):5481-5503.
  4. Eisai presents long-term administration data of lecanemab at the Alzheimer's Association International Conference (AAIC) 2024. Available at: https://www.eisai.co.jp/ir/library/presentations/pdf/4523_240731_1.pdf
  5. McDade et al. Lecanemab in patients with early Alzheimer’s disease: detailed results on biomarker, cognitive, and clinical effects from the randomized and open-label extension of the phase 2 proof-of-concept study. Alzheimers Res Ther. 2022 Dec 21;14(1):191. doi: 10.1186/s13195-022-01124-2.
  6. Cohen S., et al. J Prev Alzheimers Dis.2022;9(3):507-522.
  7. Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z.
  8. Morris JC. Neurology. 1993;43(11):2412-4.
  9. Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.
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