新たな「LEQEMBI CompanionTM プログラム」により、ナースエデュケーターが注射投与支援や投与管理ツールなどを提供し、レケンビによる全治療過程で当事者様への支援を拡充
LEQEMBI IQLIK は、2025年8月に米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得した、18カ月の初期治療後に在宅での継続治療を可能とする初めてかつ唯一の抗アミロイド療法
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:Christopher A. Viehbacher、以下 バイオジェン)は、このたび、抗Aβプロトフィブリル*抗体レカネマブ(一般名)の皮下注射(SC)製剤「LEQEMBI® IQLIK™」(レケンビ アイクリック)について、アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)または軽度認知症(総称して早期AD)の治療における維持投与として、米国で新発売したことをお知らせします。「レケンビ」による18カ月の2週に1回の静脈(IV)投与による初期治療後、10mg/kgの4週に1回のIV維持投与、もしくは「LEQEMBI IQLIK」による週1回の360mg皮下投与の維持治療に移行することができます。
今回の発売に際して、両社は、早期AD当事者様に「レケンビ」へのアクセスと支援を提供するというコミットメントに基づき、「LEQEMBI Companion™プログラム」を新たに導入しました。本プログラムは、「レケンビ」による治療の開始から維持治療に至る全治療過程を通じて、当事者様をサポートする支援を拡充することを目的としています。
「LEQEMBI Companionプログラム」は、現在提供している保険適用や自己負担額に関する情報提供や、経済的支援プログラムの案内に加え、新たに以下の支援を提供します。
- ナースエデュケーターによる対面またはオンラインでの注射投与支援:当事者様が「LEQEMBI IQLIK」による維持投与を行うことができるように支援します(ナースエデュケーターは投与支援のみで、治療に関する相談は医師とおこないます)。
- ウェルカムキットの提供:当事者様およびケアパートナーが在宅での注射投与に必要な情報や準備などを理解するための教育資材を含むキットを提供します。
また、当事者様とケアパートナーの治療過程を支援するデジタルソリューションとして「LEQEMBI Companionアプリ」を提供します。「LEQEMBI Companionアプリ」は、デジタルによる当事者様支援と服薬管理の分野で先進的なプラットフォームを有するMedisafe社と開発しました。本アプリには、投与方法に関する教材情報や、どの部位にいつ投与したかを記録するツールなどが集約されており、治療に役立つさまざまな支援を当事者様やケアパートナーにワン ストップで提供します。
さらに、保険未加入または十分な保険に加入していない当事者様に対しては、一定の経済的要件に基づき、エーザイの「Patient Assistance Program」を通じて、「レケンビ」と「LEQEMBI IQLIK」を無償提供し、薬剤の支払いが困難な一部の当事者様による「レケンビ」へのアクセスを支援します。
      ADは、アミロイド β 凝集体からなるアミロイドプラーク(老人斑)およびタウ蛋白の脳内 の沈着物から形成される神経原線維変化を病理上の特徴とし、プラーク沈着前に始まり、プラーク除去後も継続する進行性の神経変性プロセスを有する疾患です1-3。神経変性にはアミロイド β プロトフィブリルとタウの関与があるとされ3,4、「レケンビ」は、プロトフィブリルとプラークの双方をターゲットとする唯一のAD治療剤であり、その後のタウ蓄積にも影響を与えることが期待されます。
      ADの治療は中止すると、バイオマーカーの再上昇が生じ、臨床上の疾患進行の速度がプラセボ群と同等になると報告されています4,5。そのため18カ月の初期治療後も維持治療を継続するこは、ADの進行を遅らせ治療効果を延長させるために重要であり、当事者様が自分らしい生活をより長く続けることに貢献することが期待されています。
「LEQEMBI IQLIK」により、当事者様やケアパートナーが自宅で投与できるようになり、治療時間の短縮が可能になります。また、通院を気にせず治療を継続することも可能となります。さらに、「LEQEMBI IQLIK」によって、IV投与に関わる医療行為(点滴静注のための準備、投与に関わる看護師によるモニタリング等) が削減できるほか、新規の適格な当事者様が初期治療を開始するための点滴キャパシティが増加し、AD治療パスウェイ全体を効率化する効果が期待されます。
レカネマブは、エーザイが開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
* プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります4。そのメカニズムとして、不溶性アミロイドプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています5。
以上
参考資料
1.  レケンビについて
      「レケンビ」(一般名:レカネマブ、米国ブランド名:「LEQEMBI®」)は、バイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。「レケンビ」は、日本、米国、中国、欧州(EU)、韓国、台湾、サウジアラビア等、50の国と地域で承認を取得しており、10カ国で申請中です。18カ月間の2週間に1回の投与による初期治療後の4週に1回のIV維持投与について、2025年1月に米国において承認を取得し、5つの国と地域で申請中です。
      「レケンビ」のこれらの国における承認は、エーザイが実施したグローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータ等に基づくものであり、本試験でレカネマブは主要評価項目とすべての主要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました。
      Clarity AD試験において、18カ月間のレカネマブによる治療により、プラセボと比較して主要評価項目であるCDR-SBで、臨床症状の悪化を27%抑制しました。ベースラインにおける平均CDR-SBスコアは、両グループとも約3.2でした。18カ月時点でのベースラインからの調整最小二乗平均変化は、レカネマブ投与群で1.21、プラセボ群で1.66であり、変化の量は−0.45(95%信頼区間[CI]、−0.67~−0.23;P<0.001)でした。また、副次的評価項目の一つであるケアパートナーにより評価される日常生活動作スケール(ADCS MCI-ADL)では、18カ月時点でプラセボと比較して37%の悪化抑制を示しました。ADCS MCI-ADLスコアの18カ月時点でのベースラインからの調整平均変化は、レカネマブ投与群で−3.5、プラセボ群で−5.5であり、変化量の差は2.0(95%CI、1.2~2.8; P<0.001)でした。ADCS MCI-ADLでは、当事者様が服を着たり、食事をしたり、地域社会の活動に参加したりする能力など、当事者様が自立して生活する能力を評価します。レカネマブ投与群で最も多く見られた有害事象は(>10%)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(ARIAによる浮腫/浸出)、頭痛、および転倒でした。
皮下注射による維持療法の承認は、早期AD当事者様を対象とした臨床第Ⅲ相Clarity AD試験のコア試験に続く非盲検長期継続投与試験(OLE)のSC投与サブスタディに基づいており、複数の投与量が評価されました。18カ月間の2週に1回のIV投与による初期治療の後に、週1回の「LEQEMBI IQLIK」投与に移行することで、IV投与による維持治療の場合と同等の臨床上およびバイオマーカー上の効果を維持することが示されました。「LEQEMBI IQLIK」の安全性は、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験のOLEの一環として、600名を超える当事者様を対象に評価されました。検討された全てのSC投与量について、安全性プロファイルは、IV投与と同様であることが示されましたが、重要な違いとして、全身性のinfusion reactionは、IV投与で約26%で発現した一方、SC投与では1%未満でした。360mgの週1回のSC維持投与を受けた当事者様におけるARIAの発現率は、18カ月の初期治療後もIV投与による継続治療を受けた当事者様において報告された発現率と同等であり、治療を受けていない当事者様のARIAの発現率とも同様でした。
2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する優性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。
2.  エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
      エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
3.  エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
      2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。
4.  エーザイ株式会社について
      エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
      また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
       エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントX、LinkedIn、Facebookでも情報公開しています。
5.  バイオジェン・インクについて
      1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
      バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体X、LinkedIn、Facebook、YouTubeをご覧ください。
- LEQEMBI (lecanemab-irmb) injection, for intravenous use [package insert]. Nutley, NJ: Eisai Inc.
- Iwatsubo T, Irizarry M, van Dyck C, Sabbagh M, Bateman RJ, Cohen S. Clarity AD: a phase 3 placebo-controlled, double-blind, parallel-group, 18-month study evaluating lecanemab in early Alzheimer's disease. Presented at: CTAD Conference; November 29-December 2, 2022; San Francisco, CA.
- Hampel H, Hardy J, Blennow K, et al. The amyloid-? pathway in Alzheimer's disease. Mol Psychiatry. 2021;26(10):5481-5503.
- Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z
- Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.