北林 恭子さん

MSの経験を人生に生かさないともったいない!
患者さんや家族で悩みや気持ちを分かち合える場づくりが夢

とにかくエネルギッシュな笑顔とトークが魅力的な北林さんは、お子さん二人を育てるお母さん。病気になったことをすべて受け止め、それを否定せず前向きに暮らす姿勢は、主治医の先生のあたたかいサポートや、ご家族とのにぎやかな日常があるからと語ります。

31歳のとき、朝起きたら右目が見えなくなっていました。その日のうちに総合病院に行って神経内科で髄液検査をしたところ、多発性硬化症(以後MS)と診断され即入院。その後再発を繰り返し、目の他にも足や口が思うように動かせなくなるなど症状が重くなっていきました。

当時は様々な症状が重なる中で、「私はこの先どうなるんだろう」という不安な気持ちが膨らむばかり。その反動から、MSにまつわる知識を詰め込み、医学的な専門書まで読みあさっていました。そんな私に、当時お付き合いしていた今の夫が「先のことを心配するよりも、起こってから考えた方がいいよ」と一言。その言葉にハッとしました。確かに時間がもったいないし、心も疲れるばかりだと。それを機に、先々のことを考えすぎるのをスパッとやめました。

私が前向きにMSと向き合えるのは、心強い味方がいるから。その一人は心から信頼している主治医の先生です。常に患者第一で動いてくださり、どんな質問にも答えてくれます。結婚後、胎盤剥離で子どもを亡くし心が折れていたときも、わざわざ病室に会いに来てくれて「よく頑張ったなあ…」とやさしく声をかけてくれました。その言葉にどれだけ救われたことでしょうか。人として尊敬できる先生だからこそ、安心して治療を受けることができます。
そして何よりも心の支えであり、張り合いになっているのが家族です。子ども二人はアレルギーがあり、給食で食べられないメニューが多いので、なるべくみんなと差異のないような除去食を作って毎朝持たせています。病気で倒れてる暇なんてないんです(笑)! そして口数は少ないけれどいつも話をちゃんと聞いて病気を理解しようとしてくれる夫にも感謝しています。

100人患者さんがいれば、100通りの症状があるのがMSです。私はこの病気になったからこそ、悩みを抱える人の気持ちを考えられるようになったり、じっくり話を聞いたりすることができるようになりました。この病気の経験を何かに生かさないと、もったいないと思うんです。だから、いつかMSやその他の難病患者さん、介助するご家族の方々も気兼ねなく気持ちを吐き出して、「また明日から頑張ろうね!」と励ましあえる集いの場を作りたいと思っています。「心のバリアフリー」が今の私のテーマです!

撮影:国分真央 MAO KOKUBU
フォトグラファー。東京都出身。広告、PR、CDジャケット、書籍表紙など、
Instagramを中心に幅広く活躍中。