和泉 みちこさん

一歩踏み出して外の世界とつながれば、
病気にかかわらず素敵な人やコトに出会える

病気の発症を機に、それまでの自分の殻をやぶり、人とのコミュニケーションや行動範囲を広げていった和泉さん。自分らしく、心地良くいられる環境を自ら切り拓いていく姿はポジティブさに満ちています。

右半分の顔面神経麻痺、右耳の突発性難聴、急激な食欲減退……体の不調が立て続けに起こり、数軒の病院を受診しました。最初は何の病気かわかりませんでしたが、最後に受けた総合病院にいらした看護師さんが私の症状を聞いて、もしかしたら多発性硬化症(以下、MS)じゃないかと言ってくださり、すぐに MRIを撮ったらMSということが判明しました。

MS?なんで私が?好きなデザインの仕事ができなくなるんじゃないか、家族ともこれまで通りに過ごせなくなるかも……と、入院後は三日三晩泣き続けました。でも4日目の朝、「このままではダメ。外(社会)とつながりたい。仕事をしよう!」と思い、主治医の許可をもらってノートパソコンを買いに行き、すぐに仕事ができるよう準備しました。メソメソしてしまうときもありましたが、家族や友だち、仕事先の方々から、「そのままで良いよ。病気だからって何も変わらんやん」「待っとるよ」と、あたたかい言葉をかけてもらったのは本当にうれしかったです。

MSは私の個性のひとつ。そう思えるようになったのは、地域で行われていたMSの講演会で、同じ患者さんや専門医の先生に出会えたことが大きいです。インターネットの検索画面だけでは、間違った情報や怖い言葉も多く見受けられ、落ち込むことが少なくありません。だから、今ひとりで悩んでいるMS患者さんには、オンラインの患者会や講演会などに参加し、同じ患者さんと症状のことを情報交換したり、専門医から最新の治療について話を聞いたりすることをお勧めしたいです。私はひとりじゃない、と元気をもらえ、それがきっと心の安心材料になるはずだから。

MSになる前は、母だからこうしなければ、仕事も家事も完璧にこなさなければ、やりたいことは我慢しなければと自分に言い聞かせていました。でも病気になったことで、来年のことはわからないから、やりたいことは今やろう!と、考えを切り替えました。家事も根を詰めず、ほどよく手抜きをしたりして。難病だからといって自分を卑下したくありません。……こう書くと強いですねと言われそうですが、どうなるかわからない病気が怖くて仕方なく不安で、弱虫です。それだからこそ気持ちを切り替えて、こういう自分もありかなって、楽しんで生きていきたいと思います。

撮影:国分真央 MAO KOKUBU
フォトグラファー。東京都出身。広告、PR、CDジャケット、書籍表紙など、
Instagramを中心に幅広く活躍中。