本資料は、米バイオジェン社が 2020年7月8日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

家族性ALSを対象とするTofersenの臨床第I/II相試験の最終結果を掲載ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)

  • Tofersenは、進行性の神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の中で、家族性ALSとして2番目に多いスーパーオキサイドジスムターゼ1(SOD1)ALSの治療薬候補として開発中
  • Tofersenのコンセプト実証・生物学的実証を達成した臨床第I/II相試験の最終結果は、現在進行中の臨床第III相VALOR試験にて研究を継続
  • バイオジェンは、ALSや他の難治性の疾患について、遺伝的原因をターゲットとする治療薬の開発に注力

米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2020年7月8日 – バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は、スーパーオキサイドジスムターゼ1遺伝子異常を伴う筋萎縮性側索硬化症(SOD1-ALS)の治療薬候補 tofersen (BIIB067) の臨床第I/II相試験のポジティブな結果が、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載されたことを発表しました。SOD1遺伝子の変異は、全ALS症例の約2%においてその遺伝学的原因であると考えられています。

バイオジェンのバイスプレジデントで神経筋疾患研究開発ユニットのトップを務めるトビー・ファーガソン(Toby Ferguson, M.D., Ph.D.)は次のように述べています。「特定の被験者群を対象としてSOD1のように遺伝学的に検証されたターゲットを評価することで、この重篤な疾患の治療法をより迅速に特定することができます。バイオジェンは、急速に進行する神経疾患であるALSの患者さんに治療薬をお届けするために、ALSの研究をさらに推進する所存です」。

バイオジェンは、ALS治療薬開発に関しては、臨床第III相EMPOWER試験の結果が思わしくなかったことにより、2013年にdexpramipexoleの開発プログラムを中止しましたが、引き続き投資を継続しています。バイオジェンは、必要とする患者さんに治療薬をお届けできる可能性を高めるという目標の下に、EMPOWER試験からの重要な学びを、家族性および他のタイプのALS治療薬候補の幅広いポートフォリオに応用してきました。応用された学びには、特定の患者さんのサブグループで遺伝学的に検証されたターゲットを評価すること、各々のターゲットに対して最も適切なモダリティを追究すること、鋭敏な臨床的エンドポイントを採用すること等が含まれています。

臨床第I/II相試験の結果
Tofersenの臨床第I/II相試験は、SOD1-ALSの被験者を対象に、安全性、薬物動態、薬力学および探索的有効性エンドポイントを評価した無作為化・プラセボ対照・単回および反復投与用量漸増試験でした。本試験の反復漸増(MAD)投与群では、SOD1-ALS の被験者は、tofersen (20 mg、 40 mg、 60 mg または 100 mg)、またはプラセボを12週にわたり投与されました。

本試験のMADパートでの主要目的はtofersen の安全性、忍容性および薬物動態を評価することでした。1回以上の用量のtofersenの投与を受けた被験者(n=38)の中で最も多く報告された有害事象は、頭痛、処置痛、腰椎穿刺後症候群、転倒でした。Tofersen群の5人の被験者とプラセボ群の2人の被験者が重篤な有害事象を経験しました。試験中にプラセボ群でALSに続発する呼吸不全による1例の死亡例が、またフォローアップ期間中にtofersenの治療群で肺塞栓症および呼吸不全による2例の死亡例(それぞれの用量は20 mgおよび60 mg群)が発生しました。

本試験の共同治験責任医師でワシントン大学医学部セントルイス校ALSセンター長のティモシー・ミラー, M.D., Ph.D. (Timothy Miller, M.D., Ph.D.)は次のように述べています。「『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載されたデータは、tofersenとALSのターゲットとしての遺伝子的疾患ドライバーの可能性を理解するための重要な一歩です。私たちはこれらの研究結果に勇気づけられており、SOD1-ALSの治療薬候補としてtofersenの有効性と安全性を引き続き評価していきます」。

本試験の副次的評価項目は、脳脊髄液(CSF)中のSOD1タンパク濃度のベースラインからの変化量でした。Tofersen 100 mgによる治療を3ヶ月間にわたり受けた被験者 (n=10) は、SOD1濃度の36%減少を示したのに対し、プラセボ群 (n=12) では3%の減少でした。

探索的指標では、プラセボ群と比較して、ALS機能評価スケール改訂版 (ALSFRS-R)、および肺活量およびハンドヘルドダイナモメーター(HHD)で計測した筋力の低下を抑制する数値的な傾向が認められました。85日時点までのALSFRS-R のベースラインからの平均的変化量は、48ポイントのスケールでtofersen 100 mg の治療群では -1.19 で、これに対してプラセボ群では -5.63 でした。探索的臨床評価指標全体におけるプラセボ群との違いは、主に急速進行性のサブグループによるものでした。

本試験の共同治験責任医師でマサチューセッツ総合病院ショーン・M・ヒーリー & AMG ALSセンターのディレクターであるメリット・セコヴィッチ医師(Merit Cudkowicz, M.D.)は次のように述べています。「SOD1-ALSはその急速な進行を確実に抑制または止める治療選択肢のない神経疾患です。非常に大きなアンメットニーズのあるこの領域に新たな治療選択肢をもたらすことを目標に、私たちはこの研究に注力しています」。

臨床第III相 VALOR 試験は現在継続中で、SOD1-ALS の成人患者さんを対象にtofersen の有効性と安全性をプラセボと比較して評価します。

Tofersenについて
Tofersen はSOD1-ALSの治療薬候補として評価されているアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)です。TofersenはSOD1メッセンジャーリボ核酸(mRNA)に結合し、リボヌクレアーゼH(RNase-H)による分解を起こしSOD1タンパクの産生を減少させます。Tofersenは臨床第I/II相試験で生物学的実証・コンセプト実証を達成しました。バイオジェンは開発提携およびライセンス契約により tofersen をIONIS Pharmaceuticals(アイオニス・ファーマシューティカルズ)社から導入しました。

筋萎縮性側索硬化症について
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす進行性の神経変性疾患です。ALSの患者さんは徐々に筋力低下し、話すことや運動する力と能力を喪失し、最終的には呼吸ができなくなります。複数の遺伝子における変異がALSの原因であることを示すエビデンスが集積されつつあります。ALSの全症例の2%を占めるSOD1-ALSはALSのサブタイプの1つです。ALSの家族歴がない症例においても、患者さんのALSがSOD1遺伝子変異によるものかどうかを遺伝子検査により判定できる場合があります。

バイオジェンについて
神経科学領域のパイオニアであるバイオジェンは、最先端の医学と科学を通じて、重篤な神経学的疾患、神経変性疾患の革新的な治療法の発見および開発を行い、その成果を世界中の患者さんに提供しています。1978年にチャールズ・ワイスマン、ハインツ・シェイラー、ケネス・マレー、ノーベル賞受賞者であるウォルター・ギルバートとフィリップ・シャープにより設立されたバイオジェンは、世界で歴史のあるバイオテクノロジー企業であり、多発性硬化症の領域をリードする製品ポートフォリオを持ち、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化いたしました。また、多発性硬化症および神経免疫疾患、アルツハイマー病および認知症、神経筋障害、運動障害、眼疾患、免疫疾患、神経認知障害、急性神経疾患および疼痛といった神経領域の研究においても最先端の活動を展開しています。バイオジェンは生物製剤の高い技術力を活かし、高品質のバイオシミラーの製品化にも注力しています。

バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体TwitterLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

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