本資料は、米バイオジェン社が 2025年6月12日(現地時間)に発表したプレスリリースの日本語訳として発表させていただくものです。内容につきましては原本である英文が優先します。

 

dapirolizumab pegolのSLEを対象とした第III相試験のデータを欧州リウマチ学会(EULAR)で発表:倦怠感の改善と疾患活動性の低下が示される

  • PHOENYCS GO試験において、dapirolizumab pegol(DZP)は倦怠感および疾患活動性の指標を含む複数の臨床評価項目で有効性を示した
  • DZPは、全身性エリテマトーデス(SLE)に多く見られる消耗性の症状である倦怠感(疲労)に関して一貫した改善を示した
  • 48週時点で「疾患活動性がない、または低いと判定された被験者」は、DZP投与群の方が標準治療群よりも多く、その差異は12週から認められた

ベルギー・ブリュッセル、米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2025年6月12日UCB(Euronext Brussels略称:UCB)とバイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は、Fcフリーの新規抗CD40L薬候補であるdapirolizumab pegol(DZP)の第III相PHOENYCS GO試験の追加の詳細な結果を発表しました。本試験において、DZPは、中等症から重症の全身性エリテマトーデス(SLE)患者の疾患活動性において有意な臨床症状の改善を示しました。主要評価項目である投与48週時の大英連邦ループス評価委員会疾患活動指数(British Isles Lupus Assessment Group:BILAG)2004に基づく複合ループス評価法(Composite Lupus Assessment:BICLA)評価において有意な臨床症状の改善を示しました。倦怠感および疾患活動性/寛解などの追加の臨床評価項目でも改善が認められました。これら結果は、スペインのバルセロナで開催された欧州リウマチ学会(EULAR 2025)の年次会議で発表されました。SLEにおけるDZPの安全性および有効性はまだ確立されておらず、世界のどの規制当局からもSLEに対する使用は承認されていません。PHOENYCS GOの結果を確認することを目的として、DZPの2つ目の第III相試験が進行中です。

スウェーデン・カロリンスカ大学病院リウマチ学准教授のイオアニス・パロディス博士は、次のように述べています。「倦怠感は全身性エリテマトーデスの一般的な症状でありながら、患者の生活の質に深刻な影響をおよぼす可能性があるため、依然として対応が困難な課題となっています。この第III相試験で観察された結果は、DZPの投与を受けた被験者が、現在の標準治療を超えて一貫した倦怠感の改善を達成する可能性があることを示しています」。

PHOENYCS GO試験に参加したSLE患者からの報告による倦怠感へのDZPの影響の解析では、標準治療(SOC)にDZPを追加投与した患者では、以下の2つの倦怠感評価項目で改善を示しました。

  • 投与48週時点での慢性疾患治療の機能評価(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy:FACIT)‐倦怠感のスコアの改善は、DZP投与群(ベースラインからの変化量、8.9)の方が、SOC単剤投与群(5.2、名目*p=0.0024)よりも大きかった。
  • SLE患者における疲労経験を把握するために最近開発された指標であるFATIGUE-PROを用いたところ、48週時点の身体的疲労(ベースラインからの変化量の群間差7.6)、精神的および認知的疲労(5.6)、ならびに疲労感受性(7.8)スケールにおいて、SOC単剤投与群と比較してDZP投与群でベースラインからの大きな改善が認められた(名目*p<0.05)。

オーストラリアのモナッシュ大学のモナッシュ健康リウマチ学ユニットのヘッドであるEric F.Morand教授(MBBS)は、「疲労感と寛解の両方に対応できることは、ループス治療における重要なアンメットニーズです。重要な治療目標は患者の生活の質を向上させるとともに、疾患寛解を通じて臓器損傷の長期的なリスクを減少させることです」と述べるとともに、「PHOENYCS GO試験において、DZPは患者の寛解および低疾患活動性の達成に有意義な影響を及ぼすことが示されており、グルココルチコイドへの曝露量を減少させながら疾患コントロールを改善するという素晴らしい可能性を提供しています。DZPは、本試験で認められた効果の幅広さから示されるように、SLEとともに生きる人々にとって重要な新薬となる可能性があり、2つ目の第III相試験の結果に期待を寄せています」と語っています。

追加解析では、ループス低疾患活動性状態(Low Lupus Disease Activity State:LLDAS)および疾患寛解(Definition of Remission in SLE:DORIS)の指標に改善が認められました。いずれの指標にも、必要な低用量グルココルチコイドの摂取に加えて、疾患活動性の評価が含まれます(LLDASでプレドニゾン7.5 mg/日未満、DORISでプレドニゾン5 mg/日未満)。

  • 48週時点において、低疾患活動性を達成した被験者の割合は、DZP投与群がSOC単剤投与群の2倍であった(それぞれ40.9%および19.6%;名目*p<0.0001)。LLDASを達成した被験者の割合は、DZP+SOC群の方がSOC単剤投与群よりも12週と早期時点から高かった(名目*p<0.05)。
  • 48週までの来院の50%以上で低疾患活動性を達成した被験者の割合は、DZP+SOC群では23.6%であったのに対し、SOC単剤投与群では15.9%であった(名目*p=0.1042)。
  • 48週時点において、DORISを達成した被験者の割合も、DZP投与群(19.2%)の方がSOC単独群(8.4%)よりも高かった(名目*p=0.0056)。

* 主要評価項目である48週後のBICLAの達成により評価した中等度から重度の疾患活動性の改善および主な副次評価項目のp値が0.1776を達成したため、以降のすべての副次および三次評価項目は記述的解析であり、名目上のp値が含まれています。

DZPの安全性プロファイルは概ね良好でした。安全性の結果は、過去のDZPの試験および免疫調節薬を投与したSLE患者の結果と一貫していました。試験治療下で発現した有害事象(TEAEs)が認められた被験者の割合は、DZP+SOC群の方がSOC単剤投与群と比較して高かった(82.6% vs.75.0%)。重篤なTEAEsの発現割合は、DZP+SOC群で9.9%であり、SOC単剤投与群の14.8%と比較して低かった。TEAEsによる投与中止又は試験参加中止は、DZPとSOCの併用投与を受けた被験者の4.7%(10例)およびSOC単剤投与を受けた被験者の3.7%(4例)で認められました。

PHOENYCS GO試験(NCT04294667)の被験者は、長期非盲検試験で追跡調査を継続します。DZPの2つ目の第III相試験であるPHOENYCS FLY(NCT06617325)が進行中です。

全身性エリテマトーデス(SLE)について
SLEは、自己反応性T細胞、B細胞および抗原提示細胞の活性化によって引き起こされる慢性、多因子性の自己免疫疾患であり、複数の器官系に症状が発現し、疾患期・再燃期と不活動期が交互に生じます1。また、発疹、関節炎、貧血、血小板減少症、漿膜炎、腎炎、痙攣発作、精神疾患など、さまざまな症状を引き起こす疾患です2。 SLE患者は、感染症や心血管疾患などの原因による死亡リスクが高くなります。
SLE患者の約90%は女性と推定され、その多くは15~55歳の間に症状が発現します3,4,5。 アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系、ネイティブアメリカンの人々は、より早期に発症し、より進行が早く疾患を発症するリスクが高いといわれています6,7。SLE女性患者の妊娠は高リスクであり、一般集団よりも母体および胎児の死亡率、罹患率が高くなります8,9

dapirolizumab pegolについて
dapirolizumab pegolは、開発中の新規ヒト化Fc遊離ポリエチレングリコール(PEG)結合抗原結合(Fab’)フラグメントです。dapirolizumab pegolはCD40Lシグナル伝達を阻害することにより、B細胞の活性化および自己抗体の産生を抑制し、1型インターフェロン(IFN)の分泌を抑制し、T細胞および抗原提示細胞(APC)の活性化を減弱させることが示されています10。 dapirolizumab pegolは現在、UCB社とBiogen社が共同して、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療薬として第3相臨床試験を実施しています11

UCB(ユーシービー)について
UCB(www.ucb.com)は、ベルギーのブリュッセルに本社を置くグローバル・バイオファーマで、ニュロロージーや免疫・炎症領域の重篤な疾患と共に生きる患者さんのより良い生活の実現を目指して、革新的な医薬品の研究開発ならびにソリューションの提供に力を注いでいます。約40カ国に拠点を置き、従業員数は9,000名あまりを擁しており、2024年の収益は61億ユーロでした。UCBはユーロネクスト・ブリュッセル証券市場に上場しています。

バイオジェンについて
1978年に設立されたバイオジェンは、多発性硬化症の広範なポートフォリオを有し、脊髄性筋萎縮症の最初の治療薬を製品化し、アルツハイマー病の病理に作用する二つの治療薬を共同開発するなど、数多くの革新的なイノベーションを生み出したグローバル・バイオテクノロジー企業です。バイオジェンは神経、神経精神、特定の免疫、希少疾患といった領域において画期的な治療となりうるパイプラインを進展させ、サイエンスを通じて人々に貢献するという理念を厳格に追求し、人々がより健康的に、持続可能で平等に生きていける世界となるよう取り組んでいます。バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体XLinkedInFacebookYouTubeをご覧ください。

参考文献
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  11. Clinicaltrials.gov (NCT04294667). A Study to Evaluate the Efficacy and Safety of Dapirolizumab Pegol in Study Participants With Moderately to Severely Active Systemic Lupus Erythematosus (PHOENYCS GO) 2023 [cited August 2024] Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04294667.Retrieved July 25, 2024
Biogen-267526