- 国際共同第III相PROMINENT試験は、原発性膜性腎症(PMN)の成人患者を対象にfelzartamabの有効性と安全性をタクロリムスと比較
- PMNは腎臓に影響する希少な免疫介在性疾患で米国内の推計患者数は約36000人1、現在PMNを対象とする承認された治療薬は存在しない
- Felzartamabは開発中の抗CD38モノクローナル抗体で、多様な免疫介在性疾患に対する他の治療薬とは差別化の可能性を有する有望な治療薬候補
米マサチューセッツ州ケンブリッジ、2025年6月30日 – バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)は国際共同第III相PROMINENT試験で治験薬の投与を開始したことを発表しました。この第III相試験では、原発性膜性腎症(PMN)と診断された成人患者を対象に治療薬候補felzartamabの有効性と安全性をタクロリムスと比較して評価します。PROMINENT試験はPMNの成人被験者約180名を組み入れる計画で、2029年にデータのリードアウトを予定しています。PMNは抗体介在性の重篤な腎臓病で、ネフローゼ症候群の主な原因となり腎不全に至る大きなリスクを伴います。
Felzartamabは、多様な免疫介在性疾患において自己組織を誤って攻撃する自己抗体を産生する形質細胞を含むCD38陽性細胞を選択的に著しく減少させることが、臨床試験で示されている抗CD38抗体です。Felzartamabで重要なことは、PMN患者のうち最大80%が、CD38発現形質細胞により産生される抗PLA2R(aPLA2R)自己抗体を有すると推定されていることです。現在、PMNに対して承認された治療薬はなく、免疫抑制剤から化学療法まで幅広い標準治療が存在します。2
バイオジェンのウェストコースト・ハブのトップであるトラヴィス・マードック(Travis Murdoch)は、「私たちは腎不全に至る重大なリスクを伴う疾患である原発性膜性腎症を対象とする第III相試験を前進させる機会を心強く思います。本試験はバイオジェンが今年開始したfelzartamabの3つ目の第III相試験で、腎臓病患者さんのための新しい治療選択肢を開発するという私たちの継続的なコミットメントを裏付けるものです」と述べています。
PROMINENT試験は、中程度から高リスクのPMN被検者(新規に診断された被験者および再発した被験者を含む)を対象に、蛋白尿の完全寛解を達成した割合をタクロリムスと比較して、felzartamabの有効性と安全性を評価する、104週、無作為化、非盲検、国際共同多施設第III相試験(NCT06962800) です。主要評価項目は104週時点で完全寛解(CR)を達成した被験者の割合であり、被験者はfelzartamab投与群またはタクロリムス投与群に無作為に割り付けられます。本試験では抗PLA2R濃度に基づいて層別化し、抗PLA2R(aPLA2R)自己抗体陽性および陰性の両方の被験者を評価します。重要な副次的評価項目は血清抗ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)抗体に対するfelzartamabの影響と被験者報告アウトカムです。
ロサンジェルスのアカデミック・リサーチ・インスティチュートの所長で南カリフォルニア大学医学部のKeck‐University臨床教授を務め、第III相PROMINENT試験の治験総括医師であるモハメド・エル‐シャハヴィ医師(Mohamed El-Shahawy, M.D., MPH, MHA)は、「原発性膜性腎症は腎症の中でも手つかずの領域で承認された治療薬は存在しません。病原性抗体を産生する細胞を枯渇させるようにデザインされたfelzartamabの作用機序は、意義のある新たな治療選択肢を待ち望んでいる患者さんにとって大きな朗報です。私はバイオジェンがこの希少な腎臓病の研究を進めていることに感謝しており、本試験への登録が引き続き進むことを大いに期待しています」と述べています。
FelzartamabについてはこれまでにaPLA2R陽性のPMN被験者を組み入れた 2つの第II相試験、M-PLACE試験 (n=31) と NewPLACE 試験 (n=24) が実施されています。M-PLACE試験の最終解析では、ほとんどの被験者で投与後1週間以内にaPLA2R抗体価の低下(低下の中央値45%)が認められ、6ヵ月の投与終了時点で多くの被験者が奏効(50%以上の低下)を達成しました。さらに、felzartamabの投与により蛋白尿及び血清アルブミン濃度の改善が認められました。両試験において、治験薬投与下で発現した有害事象(TEAEs)の大部分は軽度から中等度とされ、PMN患者に対するfelzartamabの既知の作用機序と一貫していました。最も多く発現したTEAEは初回投与時の注入に伴う反応で、これらの重症度は大部分が軽症から中等症でした。
PMNを対象とするfelzartamabの第III相試験の開始に加えて、バイオジェンは今年felzartamabについて2つの第III相試験、成人腎臓移植患者の遅発性抗体関連型拒絶反応を対象とするTRANSCEND試験(NCT06685757)とIgA腎症を対象とするPREVAIL試験(NCT06935357)も開始しています。
Felzartamabについて
Felzartamabは成熟形質細胞に発現するタンパク質であるCD38を標的とする治療薬候補として開発中のヒトモノクローナル抗体です。Felzartamabはファースト・イン・クラスの可能性がある治療薬候補であり、広範な免疫介在性疾患に対するパイプラインとして有望視されています。 FelzartamabはCD38陽性形質細胞を選択的に枯渇させることが臨床試験で示されており、病原性抗体に起因する広範な疾患の臨床アウトカムを最終的に改善するような応用が可能であることを示唆しています。Felzartamabは当初、MorphoSys AG(現在はノバルティス社傘下のMorphoSys GmbH)により開発されました。そしてHuman Immunology Biosciences (HI-Bio) 社が全ての適応症を対象に、中国(マカオ、香港、台湾を含む)を除くすべての国・地域におけるfelzartamabの開発および販売する権利を独占的に取得しました。バイオジェンは2024年7月にHI-Bio社を買収しました。
Felzartamabは開発中の治療薬候補で、どの国・地域の規制当局からも承認されておらず、その安全性と有効性はまだ確立されていません。
原発性膜性腎症(PMN)について
PMNは抗体介在性の重篤な腎臓病で、ネフローゼ症候群の主な原因となり腎不全に至る重大なリスクを伴い、米国内の有病率は約36000人1と推定されます。ネフローゼ症候群の患者は、高レベルの蛋白尿に関連する非常に重篤な腫脹と倦怠を呈することが多く、感染症のリスクも増大します。PMNに対する承認された治療薬は存在せず、現在は免疫抑制剤から化学療法を含む標準治療が存在します。2 これらの治療法を用いても、患者の約3分の1は寛解を達成することができません。2
バイオジェンについて
1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体X, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。
- Based upon Kanigicherla. Nephrol. Dial. Transplant. 2016; McGrogan. Nephrol Dial Transplant. 2011; 36k represents the total number of diagnosed patients who are actively being managed.
- Dahan et al. (2017) Rituximab for Severe Membranous Nephropathy: A 6-Month Trial with Extended Follow-Up. Available at https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5198292/