マサチューセッツ州ケンブリッジおよび同州ベドフォード、2025年9月2日 – バイオジェン(NASDAQ略称BIIB)および、RNA医薬によって人体の可能性を引き出し、タンパク質の発現を回復させることに取り組むバイオテクノロジー企業であるストーク・セラピューティクス・インク(Stoke Therapeutics, Inc. NASDAQ略称STOK、以下ストーク社)は、ドラベ症候群に対する初の疾患修飾薬としての可能性を示唆するzorevunersen の第I/IIa相およびオープンラベル継続(OLE)試験のデータを発表しました。結果はポルトガルのリスボンで開催された第36回国際てんかん学会(IEC)で発表されました。データは現在進行中のzorevunersenの第III相EMPEROR試験で開発中のアンチセンスオリゴヌクレオチドである本剤の評価を進めることを支持しています。
グラスゴー王立子ども病院小児神経科のコンサルタント医師で、グラスゴー大学名誉教授でもあり、zorevunersenの治験責任医師を務めるアンドレアス・ブランクラウス教授(Professor Andreas Brunklaus)は次のように述べています。「ドラベ症候群による困難はけいれん発作に始まりますが、この疾患の自然な経過を研究すると、患者さんやご家族の日常生活におけるほぼ全ての側面に広範囲かつ生涯にわたる影響が及ぶことは明らかです。持続的な発作の減少と認知、行動およびQOLの改善が治療の1年目から現れ、2年目そして現在の3年目にも継続し、同時に総じて良好な忍容性が示されたことから、私たちはzorevunersenの疾患修飾薬としての可能性に自信を持っています」。
発表された第I/IIa相およびオープンラベル継続(OLE)試験のデータは、4年以上にわたるzorevunersenの臨床経験を表しています。一連の全試験において大運動性発作頻度が大幅にかつ持続的に減少し、認知、行動およびQOLの継続的な改善が示されました。これらの効果は抗けいれん薬の標準治療レジメンを上回るものでした。Zorevunersenはこれまでに700回以上投与されています。
当初の治療期間(第I/IIa相試験)における有効性の結果
第I/IIa相試験ではzorevunersenの最大投与量70mgまでの単回および複数回の投与について安全性を主要評価項目とし、大運動性発作頻度への効果は副次評価項目として評価されました。用量との相関がzorevunersenの複数の用量(30mg、45mg、70mg)で治療を受けた被験者で示されました。最初に70mgを2回または3回投与された被験者(n=10)で発作頻度の最も大きな減少が認められました。発作頻度減少率の中央値は84.8%で、28日ごとの発作のない日数増加の中央値8日は、最後の投与から3か月後に認められました。また、第I/IIa相試験で70mgからzorevunersenの投与を開始した被験者が、Euro-Qol-5D Youthの構成要素であるEuroQol 視覚的アナログ尺度(EQ-VAS)で評価されたQOLのアウトカムで最も大きな改善を示しました。
治療継続期間(3年間のOLEs)における有効性の結果
第I/IIa相試験での治療後、94%(80名中75名)の適格基準を満たした被験者はOLEsで治療を継続しました。これら被験者の77%(75名中58名)が3年の間、引き続き本試験に参加しています。総じて、大運動性発作頻度の減少はOLE試験の3年間を通じて持続しました。発作頻度が最も大きく減少したのは第I/IIa相試験での投与開始用量が70mgの被験者でした。
OLE試験では全被験者の神経発達、機能、臨床状態およびQOLを評価するために標準的な評価スケールが用いられます。コミュニケーション、運動スキル、社会化機能および日常生活における変化を測るためにVineland Adaptive Behavior Scales 第3版 (Vineland-3) が用いられました。Vineland-3のサブドメインは素点で測定され、各被験者のOLE登録時のベースラインと比較されました。OLEsで4か月ごとにzorevunersenの投与を受けた被験者で継続的な改善が示されました。3年間を通じて、8つの主なサブドメインで素点にして4.3から9.7ポイントの改善がデータで示されました(表出型コミュニケーションで7.6ポイントの改善、受容型コミュニケーションで6.1ポイントの改善を含む)。介護者はVineland-3のサブスケールで1から3ポイントの素点の変化は意味があるとしています。また被験者はEQ-VASで評価したQOLが3年間に18ポイント改善し、その改善が持続していることを経験しました。EQ-VASは検証済みの視覚的アナログ尺度で健康の度合いを0から100(考え得る最悪の状態を0、最善を100)で評価します。
安全性データのサマリー
81名の被験者が少なくとも1回のzorevunersenの投与を受け、安全性が評価されました。Zorevunersenは第I/IIa相試験およびOLE試験を通じて総じて高い忍容性を示しました。治験薬に関連する治療中に発生した有害事象(TEAEs)は、第I/IIa相試験の被験者の30%(81名中24名)、OLE試験の被験者の53%(75名中40名)で認められました。最も多い治験薬関連のTEAEはCSFタンパク質の上昇で、第I/IIa相試験被験者の14%(81名中11名)、OLE試験被験者の44%(75名中33名)で報告されました。CSFタンパク質の上昇 (>50 mg/dL) は第I/IIa相試験被験者の42%(81名中34名)、OLE試験被験者の86%(72名中62名)で報告されました。関連する臨床症状は認められませんでしたが、1名の被験者がCSFタンパク質レベルの上昇により治療を中止しました。治療中に発生した重篤な有害事象(TESAEs)は、第I/IIa相試験被験者の22%(81名中18名)、OLE試験被験者の29%(75名中22名)で報告されましたが、SUSARsを経験した1名を除いて全てが治験薬とは関連なしと評価されました。
全ての発表内容はストーク・セラピューティクス社のウェブサイトの「Investors & News(投資家向け情報とニュース)」のページからダウンロードすることができます。
Zorevunersenの第I/IIa相試験とオープンラベル継続試験について
2つの第I/IIa相のオープンラベル多施設共同試験が実施され、難治性の高いドラベ症候群の2歳から18歳の患者 (N=81) におけるzorevunersenの効果が評価されました。主要評価項目は安全性プロファイル、血漿薬物動態(PK)、そして単回および複数回の投与におけるzorevunersenの脳脊髄液(CSF)への曝露でした。副次評価項目はけいれん性発作頻度のベースラインからの変化率、全般的な臨床状態、およびQOLでした。第I/IIa相ADMIRAL試験は神経発達状況(認知および行動)をVineland Adaptive Behavior Scales 第3版(Vineland-3)で測定し、変化を評価する探索的評価項目を含みました。これらの第I/IIa相試験は2023年11月に完了しました。
第I/IIa相試験での治療を終え適格基準を満たした被験者は2つのOLEs の1つで4か月ごとにzorevunersen の投与を継続しました。第I/IIa相試験で最後の投与を受けてからOLEの最初の投与を受けるまでに少なくとも6か月の期間が開いていました。主要評価項目はzorevunersenの複数回投与における安全性プロファイルです。副次評価項目はPKパラメーター、けいれん性発作頻度のベースラインからの変化率、全般的な臨床状態の変化、およびQOLのベースラインからの変化です。探索的評価項目として、Vineland-3で測定する神経発達状況の変化があります。OLE試験は継続中です。
ドラベ症候群について
ドラベ症候群は、重度の反復性発作と重大な認知および行動障害を特徴とする重度の発育性てんかん性脳症です。ドラベ症候群のほとんどの症例はSCN1A遺伝子の1コピーの変異が原因であり、脳の神経細胞におけるNaV1.1タンパク質のレベルが不十分になることで発症します。90%以上の患者さんは既存の最良の抗けいれん薬による治療にもかかわらず発作が継続します。ドラベ症候群の合併症はしばしば患者さんや介護者のQOLの低下を招きます。発達障害や認知障害は、多くの場合知的障害、発育遅延、運動や平衡障害、言語および発話障害、成長障害、睡眠異常、自律神経系の失調、気分障害を含みます。一般的なてんかん患者の集団と比較して、ドラベ症候群の患者はより高いてんかんによる予期せぬ突然死(SUDEP)のリスクがあります。ドラベ症候群は世界中で発症しており、特定の地域や民族集団に偏在しているわけではありません。現在、米国 (約16,000人)および英国、欧州連合主要4か国、日本を合わせて最多で38,000人がドラベ症候群に罹患していると推計されています。1
Zorevunersenについて
Zorevunersenは、SCN1A遺伝子の非変異(野生型)コピーから脳細胞内の機能性NaV1.1タンパク質の産生を増加させることでドラベ症候群の根本原因を治療するように設計された、開発中のアンチセンスオリゴヌクレオチドです。この高度に差別化された作用機序により、抗けいれん薬で達成される以上に発作頻度を減少させ、神経発達、認知、行動を改善させることを目指しています。Zorevunersenは疾患修飾の可能性を示唆し、FDAとEMAから希少疾病用医薬品の指定を受けています。またFDAはzorevunersenを小児用希少疾病用医薬品に指定するとともに、機能獲得型と関連しないSCN1A遺伝子の変異が確認されたドラベ症候群の治療薬として画期的治療薬(ブレークスルーセラピー)に指定しています。ストーク社は、ドラベ症候群に対するzorevunersenの開発および商業化に関してバイオジェン社と戦略的提携を結んでいます。本提携のもと、ストーク社は米国、カナダ、メキシコにおけるzorevunersenの独占的権利を保持し、バイオジェン社はそれ以外の地域における商業化の独占的権利を有します。
EMPEROR試験について
第III相EMPEROR試験(NCT06872125)は、機能獲得型に関連しないSCN1A遺伝子変異が確認されたドラベ症候群の小児(2歳以上18歳未満)を対象に、zorevunersenの有効性、安全性および忍容性を評価する国際共同二重盲検シャム対照試験です。被験者は8週間のベースライン期間の後、1:1の割合で無作為に割り付けられ、zorevunersenの髄腔内投与またはシャム対照投与を52週間受けます。オープンラベル継続期間によって、全ての被験者は52週間の試験期間の後にzorevunersenによる治療を受ける機会があります。本試験の主要評価項目は、28週における大運動性発作頻度のベースラインからの変化率で、zorevunersen群とシャム群を比較します。主な副次評価項目は大運動性発作頻度に対する効果の持続性、およびVineland-3のサブドメイン(表出性コミュニケーション、受容性コミュニケーション、対人関係、対処スキル、個人スキルを含む)によって測定される行動および認知の改善です。追加の評価項目は、安全性、医師による全般改善度(CGI-C)、介護者による全般改善度(CaGI-C)、EuroQol視覚的アナログ尺度(EQ-VAS)、およびベイリー乳幼児発達検査(BSID-IV)が含まれます。EMPEROR試験は米国、英国、日本で開始され、欧州でも計画されています。EMPEROR試験についての詳細は公式サイト https://www.emperorstudy.com/ およびhttps://clinicaltrials.gov/study/NCT06872125 をご覧ください。
バイオジェンについて
1978年に設立されたバイオジェンは、数多くの革新的なイノベーションを生み出し、株主や私たちを取り巻くコミュニティに価値を創出するグローバル・バイオテクノロジー企業です。私たちはファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を前進させ、優れた成果を提供するために、人のバイオロジーに対する深い理解を応用していきます。バイオジェンに関する情報については、バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体 X, LinkedIn, Facebook, YouTubeをご覧ください。
ストーク・セラピューティクスについて
ストーク・セラピューティクス(Stoke Therapeutics、NASDAQ略称STOK)は、RNA医薬品で人体が持つ潜在力を活用することで、タンパク質の発現を修復する技術に専念するバイオテクノロジー企業です。特許で保護されているストーク社のTANGO(Targeted Augmentation of Nuclear Gene Output=核遺伝子アウトプットの標的増強)アプローチにより、ストーク社はタンパク質を自然発生の濃度に選択的に回復させるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASOs)を開発しています。ストーク社の開発中の最初の医薬品である、zorevunersenはドラベ症候群の患者において疾患修飾の可能性を示しており、現在第III相試験を通じて評価されています。ストーク社の当初の重点領域は正常なタンパク質濃度が50%程度まで喪失(ハプロ不全)することで発症する中枢神経系および眼病に関連する疾患です。他の臓器、組織、系統でも概念実証が確認されており、同社独自のアプローチの幅広い可能性が支持されています。ストーク社はマサチューセッツ州ベドフォードに本社を置き、同州ケンブリッジにもオフィスを構えています。同社についてのより詳しい情報はhttps://www.stoketherapeutics.com/ をご覧ください。
- Based on Stoke Therapeutics’ preliminary estimates, which scaled annual incidence to prevalence using country-specific live birth rates over the past 85 years and adjusted for Dravet-specific mortality. The estimate is based on incidence rates published by Wu et al., Pediatrics, 2015.