発症早期に治療開始したアミロイド低値群では、「レケンビ」による長期の継続治療により、MCIから中等度アルツハイマー病への進行を最大8.3年間遅らせる可能性を示唆
米国で申請中の「レケンビ」初期投与皮下注製剤に関する有効性と安全性に関する新規データをサイエンティフィックシンポジウムにおいて発表
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィーバッハー、以下 バイオジェン)は、このたび、第18回アルツハイマー病臨床試験会議(Clinical Trials on Alzheimer’s Disease Conference:CTAD)において、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル*抗体であるレカネマブ(一般名、製品名「レケンビ®」)の継続治療による疾患進行の遅延効果に関する最新の知見を発表したことをお知らせします。また、2025年8月に米国において維持投与の承認を取得し、11月に初期治療の生物製剤承認一部変更申請(sBLA)の段階的申請を完了した、皮下注製剤(SC-AI)に関するサイエンティフィックシンポジウムを開催しました。2025年11月に日本において皮下注製剤の申請を行いました。
アルツハイマー病(AD)は、Aβおよびタウを病理上の特徴とし、プロトフィブリルが惹起し、Aβプラーク沈着前に始まり、プラーク除去後も継続する神経変性プロセスによって引き起こされる進行性の疾患です1, 2, 3。「レケンビ」は、プロトフィブリルとアミロイドプラークの双方をターゲットとする唯一のアルツハイマー病(AD)治療剤で、その後のタウ蓄積にも影響を与えることが期待されます。
10年を超える長期のAD疾患進行とレカネマブの継続治療による遅延効果の推定(発表:12月3日午後2時40分 米国太平洋時間)
本解析は、Clarity AD試験の非盲検長期延長試験(OLE)と ADに対するモノクローナル抗体による16の臨床試験のデータを用いて、10年を超える長期のAD疾患進行とレカネマブの継続治療による遅延効果を推定したものです。本解析では、CDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)を用いて、治療継続により推定されるTime Savings(疾患進行の遅延効果)をADNI**(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)データを基にしたADの自然経過(未治療群)による低下と比較して評価しました。その結果、レカネマブによる治療をより早期に開始し、長期に継続することで、ADの進行を持続的に遅らせ、より長期間にわたり認知機能を維持できる可能性が示唆されました。
解析対象となった各グループの結果:
- ADによる軽度認知障害(MCI)から軽度ADへの疾患進行の遅延効果
- 未治療群におけるMCIから軽度ADへの進行期間は7.2年であったのに対し、レカネマブによる治療を中等度ADになるまで継続した場合のMCIから軽度ADへの進行期間は9.7年となり、2.5年の疾患進行の遅延効果が示唆されました。
- アミロイド低値群(早期治療開始患者:アミロイドPET <60センチロイド)では、レカネマブによる治療を中等度ADになるまで継続した場合のMCIから軽度ADへの進行期間は13.2年となり、6.0年の遅延効果が示唆されました。
- ADによるMCIから中等度ADへの疾患進行の遅延効果
- 未治療群におけるMCIから中等度ADへの進行期間は10.1年であったのに対し、レカネマブによる治療を中等度ADになるまで継続した場合のMCIから中等度ADへの進行期間は13.6年となり、3.5年の遅延効果が示唆されました。
- アミロイド低値群では、レカネマブによる治療を中等度ADになるまで継続した場合のMCIから中等度ADへの進行期間は18.4年となり、8.3年の遅延効果が示唆されました。
これらの結果から、より早期にレカネマブによる治療を開始することで、より大きな疾患進行の遅延効果がもたらされることが示されました。また、プラークが除去されて長い時間が経過した後でも、レカネマブによる治療を1年長く継続するごとに、治療を中止した場合と比較して、さらに疾患の進行を遅らせる可能性が示されました。
早期ADに対する初期治療のためのレカネマブ皮下注製剤:新たな選択肢による当事者様ケアの最適化(シンポジウム発表:12月3日午後3時10分 米国太平洋時間)
本シンポジウムでは、初期治療に焦点を当てたレカネマブ皮下投与の臨床開発プログラムに関する最新データとして、Clarity AD試験OLEにおける皮下注(SC)製剤を用いたサブコホート(n=273)の結果を発表しました。レカネマブの 週1回の500 mg(250㎎を2本)皮下注オートインジェクター(SC-AI)投与は、10 mg/kg隔週静脈(IV)投与と薬物暴露量において生物学的同等性(暴露比率104%、90%信頼区間:99.1%~109%)を示しました。
臨床データとモデルによる解析に基づき、脳内アミロイド除去効果や安全性(ARIA-E発現率)は、投与経路に依存せず、暴露量により説明可能であることが示され、レカネマブの週1回の500 mg SC-AI投与は、10 mg/kg隔週IV投与と同等の効果と安全性を持つことが示唆されました。 また、週1回の500 mg SC-AI投与によるARIA-E発現率(ApoE4の遺伝子型によらず12.4%、ApoE4ホモ接合群で30.9%)もIV投与と同等であることが予測されました。
レカネマブを既に投与された本サブコホートの500 mg SC投与群における全身性のInfusion reactionは0%でした。バイアルによる720㎎SCにより投与を開始した群では1.4%であり、IV投与群で見られるInfusion reaction(26.4%)と比較して良好な結果でした。また、免疫原性評価では、500 mg SC投与群における抗薬物抗体(ADA)陽性率は1.4%と低値でした。
これらの結果により、当事者様とケアパートナーの利便性を考慮して設計されたレカネマブのSC製剤は、従来のIV投与に対して、有効性を維持するとともに、安全性についても全身性のInfusion reactionの発現率を低減させつつ、同等性を示しました。
レカネマブは、エーザイが開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
* プロトフィブリルは、ADによる神経障害に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高いAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の変性を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります3。そのメカニズムとして、不溶性アミロイドプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞の変性や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています4。
** ADNIは、ADの発症を予測し、治療の有効性を確認する方法を開発するために2005年に開始された臨床研究プロジェクトで、健常高齢者、軽度認知障害(MCI)、軽症AD当事者様を対象に、複数年にわたる縦断的観察を実施しています。
以上