エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィーバッハー、以下 バイオジェン)は、このたび、米国食品医薬品局(FDA)が、抗Aβ抗体「レケンビ®」(一般名:レカネマブ)の週1回投与の皮下(SC)注射製剤「LEQEMBI IQLIK®」(米国製品名、「アイ・クリック」と発音)について、早期アルツハイマー病(AD)に対する初期療法としての生物製剤承認一部変更申請(sBLA)を承認したことをお知らせします。
「LEQEMBI IQLIK」はオートインジェクターを用いて投与され、初期療法による治療開始時から静脈内(IV)投与に代わる利便性の高い選択肢を提供します。今回、初期療法として承認されたレジメンは、250 mgの注射2本による合計500 mgを週1回投与するもので、投与はそれぞれ約15秒で完了します。「LEQEMBI IQLIK」は、IV投与もしくはSC投与による「レケンビ」の18カ月の初期療法終了後には、360 mgを週1回投与する維持療法としても使用可能です。従来の投与方法のIV投与に加え、初期療法・維持療法の全投与期間にSC投与を用いることが可能となり、またIVからSCに、あるいはその逆の投与への移行も可能で「レケンビ」の投与方法の利便性と簡便性が増すことが考えられます。
米国における「レケンビ」の適応は、ADによる軽度認知障害(MCI)または軽度認知症(総称して早期AD)の成人の当事者様です。ADによるMCIは、ADの症状が現れる最も初期の段階であり、もの忘れ、時間・場所などの認識がしづらくなること、言葉が思い出せないといった軽い症状として現れることがあります。
SC投与による初期療法の承認を支持する臨床試験
FDAによる初期療法としての「LEQEMBI IQLIK」承認は、複数の臨床試験で異なる投与量によりレカネマブの皮下投与を評価した包括的な臨床データに基づいています。早期ADの当事者様を対象とした、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験の18カ月間のコア試験に続く長期継続試験(Long-term Extension :LTE)内のサブスタディでは、以下の結果が示されました。
- 週1回のSC投与によりIV投与と同等の暴露量が確認され、臨床(有効性)およびバイオマーカー(アミロイド除去)に対するベネフィットも同等であることが示されました。
- SC投与によるARIA-Eなどの暴露量に関連する有害事象の発現率は、IV投与と同程度であることと想定されます。なお、「レケンビ」投与において、プラセボと比較して、ARIA-H単独(ARIA-Eを発現しなかった当事者様におけるARIA-H)の増加は認められていません。
- SC投与における安全性プロファイルは、概ねIV投与と同様でした。SC投与において注射に伴う反応は認められましたが、その多くは局所性であり、全身性は低頻度でした。
アルツハイマー病創薬財団(ADDF)の共同設立者であり最高科学責任者のHoward Fillit医師は、「「LEQEMBI IQLIK」が初期療法として承認されたことは、アルツハイマー病治療における新たな時代の幕開けとなるものです。当事者様とケアパートナーは、抗アミロイド治療の投与方法について、今回初めて、意味のある選択肢を持つことができるようになります。治療アプローチが拡大する中で、投与方法におけるイノベーションは、治療へのアクセス向上、併用療法に関する研究やプレシジョン・メディシンの推進に極めて重要な役割を果たします」と述べています。
AD治療パスウェイ全体にわたる治療の柔軟性拡大
「LEQEMBI IQLIK」が初期療法として承認されたことにより、当事者様およびケアパートナーは、AD治療の全過程を通じて在宅で投与可能な唯一の選択肢を利用できるようになります。これにより、さまざまな医療提供環境において、治療へのアクセスや治療提供を支援するとともに、以下のようなベネフィットが期待されます。
- 当事者様とケアパートナーの通院負荷の軽減
- インフュージョン投与および関連する医療資源への依存の軽減
- IV投与による治療の準備時間・投与時間の短縮、看護師によるモニタリング負担の軽減
- IV投与による治療を引き続き必要とする当事者様に対するインフュージョン キャパシティの確保
オートインジェクターの受容性に関する研究から得られた知見によると、早期AD当事者様およびケアパートナーの94%が、「LEQEMBI IQLIK」のデバイスを使いやすいと回答し、在宅での投与に対する高い満足度と自信が確認されました*。
当事者様へのサポート
LEQEMBI Companion™プログラムでは、保険適用の範囲や自己負担額に関する情報の提供にに加え、適格となる当事者様に対するLEQEMBI Copay Assistance Programをはじめとする、各種経済的支援プログラムをご案内しています。
さらに、薬剤費の負担軽減を必要とする一部の当事者様の「レケンビ」へのアクセスをさらに支援するため、エーザイの「Patient Assistance Program」では、一定の経済的要件等を満たす保険未加入の当事者様に対して「レケンビ」および「LEQEMBI IQLIK」を無償提供します。
「LEQEMBI IQLIK」の初期療法は、2026年8月下旬に米国で上市予定です。スペシャルティファーマシー(専門医薬品を取り扱う薬局)を通じて入手可能となります。
レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
* 早期AD当事者様50名と現在早期AD当事者様を支援しているケアパートナー50名を対象とした対面インタビューに基づきます。参加者は、針や薬剤を含まない訓練用オートインジェクターデバイスと注射パッドを用いた操作を行った後、「自己注射デバイスの使用はどの程度難しい、または容易でしたか」といった質問を含むコンピューター形式のアンケートに回答しました。
以上
参考資料
1. レカネマブ(一般名、製品名「レケンビ」)について
レカネマブは、バイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。「レケンビ」は、日本、米国、中国、欧州(EU)、韓国、台湾、サウジアラビア等、53の国と地域で承認を取得しており、6カ国で申請中です。18カ月間の隔週投与による初期療法後の 4 週に 1 回の静注(IV) 維持療法について、米国、中国、英国等、8カ国において承認を取得し、12の国と地域で申請中です。米国において、2025年8月に皮下注製剤「LEQEMBI IQLIK」による維持療法の承認を取得しました。日本においては、2025年11月に皮下注製剤の申請を行いました。中国においては、2026年1月に皮下注製剤の生物製剤ライセンス申請(BLA)が受理されました。また、2025年12月に中国において国家医療保障局によって新たに発表された「商業健康保険の革新的医薬品リスト」に、IV投与が収載されました。
「レケンビ」の承認は、エーザイが実施したプラセボ対照・二重盲検・並行群間・無作為化、グローバル臨床第Ⅲ相試験であるClarity AD試験のデータに基づくものであり、本試験において「レケンビ」は主要評価項目ならびに全ての重要な副次評価項目を統計学的に有意な結果をもって達成しました。主要評価項目は、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)でした。Clarity AD試験は、早期AD当事者様1,795人(レカネマブ投与群:10 mg/kg 隔週投与:898人、プラセボ投与群:897人)を対象とし、コア試験(18カ月)を完了した当事者様の95%が長期継続試験(LTE)への継続参加を選択し、そのうち478例が4年間治療を受け続けています。Clarity AD試験のコア試験において、「レケンビ」はCDR-SBにおける18カ月時点の臨床症状の悪化をプラセボと比較して27%抑制し、ベースラインからの平均変化量の差は、-0.45(P=0.00005)でした。
CDRスコアにおいて、記憶、地域社会活動、家庭および趣味に関する項目が0.5から1へ変化(悪化)するということは、当事者様が自立して最近の出来事を記憶し、日常生活や家事を行い、趣味や知的関心事を楽しむといった能力が、軽度障害の段階から自立した活動が難しくなる段階へ移行することを意味します。
また、投与開始3カ月時点から脳内アミロイドプラークの速やかな減少が確認され、18カ月時点ではプラセボに対して−59.1センチロイド(CL)の差が認められました(P<0.00001)*。さらに、「レケンビ」は4年の長期継続試験を通じて有効性を継続して示し、サブグループ解析では、治療を継続した「レケンビ」投与当事者様の81%が4年時点でも早期ADの病期にとどまっていました**。
コア試験とそれに続くLTEを通して継続投与を受けた当事者様のCDR-SBのベースラインからの平均変化量の差は、ADNIデータを基にしたADの自然経過による低下と比較して、3年間の投与時点では-1.01でしたが、この効果は4年間の投与時点でさらに顕著になり、-1.75までさらに拡大しました。また、BioFINDERデータを基にしたADの自然経過による低下と比較した場合では、3年間投与時点では-1.40でしたが、4年間投与時点で-2.17にまで拡大しました。なお、「レケンビ」投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒でした 。
| * | センチロイドスケール(CL)は、アミロイドPETにおいて用いられる指標で、0 CLはアミロイドプラークを有さない若年者の平均アミロイド量を基準とし、100 CLは中等度ADにおける平均アミロイドレベルを基準として設定されています。Clarity AD試験におけるベースライン時のセンチロイド値は約78 CLでした。プラーク陰性は、アミロイドPET陰性への転換(30 CL未満)として定義されます。 |
| ** | 進行リスク低下に関する事前規定サブグループ解析では、疾患の進行をKaplan–Meier解析に基づき、CDR-SBスコアが9.5以上に達し、中等度または重度の認知症段階に移行した時点と定義しました。 |
2. プロトフィブリルについて
プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主な役割を果たす、最も毒性が高い可溶性のAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります1。そのメカニズムとして、不溶性アミロイドプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています2。
3. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
4. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。
5. エーザイ株式会社について
エーザイ株式会社は、当事者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントX、LinkedIn、Facebookでも情報公開しています。
6. バイオジェン・インクについて
1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、当事者様の人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体X、LinkedIn、Facebook、YouTubeをご覧ください。
- Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021; 12:3451. doi: 10.1038/s41467-021-23507-z.
- Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer’s Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.