エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とバイオジェン・インク(Nasdaq:BIIB、本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO:クリストファー A. ヴィーバッハー、以下 バイオジェン)は、本日、抗アミロイドベータ(Aβ)プロトフィブリル抗体「レケンビ®」(一般名:レカネマブ)の皮下(SC)注製剤「レケンビ®皮下注250 mgペン」について、日本において新投与経路医薬品として承認を取得したことをお知らせします。
「レケンビ皮下注250 mgペン」は、自己投与可能なオートインジェクター製剤で、週1回2本(合計500 mg)を投与します。本承認により、「レケンビ」による治療には、医療機関での2週に1回の静脈(IV)投与に加え、新たに週1回の在宅でのSC投与という選択肢が追加されました*。
「レケンビ皮下注250 mgペン」は、IV投与と比較して投与に必要な時間を短縮する(1本あたり投与時間は約15秒)とともに、在宅での投与が可能になることで、当事者様やケアパートナーの通院負担が軽減し、外出や旅行の制約が緩和されるなど、ライフスタイルに応じた治療選択が可能となります。「レケンビ」による治療の利便性と柔軟性が向上することにより、治療の開始および継続に際してのハードルの低減が期待されます。さらに、「レケンビ皮下注250 mgペン」は、点滴静注キャパシティの確保や看護師によるモニタリングといったIV投与に関わる医療資源の削減につながります。これらにより、アルツハイマー病(AD)治療パスウェイ全体のさらなる効率化に貢献することが期待されます。なお、ARIA(アミロイド関連画像異常)のモニタリングについては、IV投与と同様に、治療開始前および治療開始後の所定の時点でMRIによる確認を行います。
ADは、Aβおよびタウを病理上の特徴とする進行性の疾患です。ADでは、プロトフィブリルが関与する持続的な神経毒性プロセスが、Aβプラークの蓄積前から始まり、プラーク除去後も継続します1, 2, 3。「レケンビ」は、プロトフィブリルとアミロイドプラークの双方をターゲットとする唯一のAD治療剤です。
今回の承認は、「レケンビ」SC製剤として世界で3カ国目の承認となります。本承認は、ADによる軽度認知障害(MCI)および軽度認知症(総称して早期AD)当事者様を対象とした「レケンビ」の臨床第Ⅲ相Clarity AD試験の18カ月間のコア試験、ならびにそれに続く長期継続試験(LTE)における複数の皮下投与サブスタディから得られたデータ、そのモデリングとシミュレーションの統合結果に基づくものです。本サブスタディにおいて、週1回のSC製剤 500 mg投与は、2週に1回のIV投与と暴露量の類似性が確認され、早期AD当事者様においてSC製剤はIV製剤と同様の有効性が期待できることが示されました。SC投与における安全性プロファイルは概ねIV投与と同様でしたが、注射に伴う全身性反応の発現はIV投与に比較して低頻度(1.4%)**でした。
レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
* 本剤の在宅自己投与は、承認後、原則として60日以内に中央社会保険医療協議会で審議・了承の上、厚生労働大臣が定める保険医が投与(処方箋交付)できる注射薬リストに掲載された後に可能となります。また、本剤の自己投与にあたっては、以下の点に留意することが定められています。
- 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督の下で投与を行うこと。
- 自己投与の適用については、その妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、本剤投与によるリスクと対処法について患者又は家族・介護者が理解し、患者又は家族・介護者が自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導の下で実施すること。
**SC投与で新規にレカネマブ治療を開始された被験者における発現頻度として、バイアル製剤を用いたレカネマブ720 mg の週1 回SC投与から得られた臨床結果による。
以上
参考資料
1. 製品概要
- 製品名
レケンビ®皮下注250mg ペン - 一般名
レカネマブ(遺伝子組換え) - 効能・効果
アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制 - 用法・用量
通常、レカネマブ(遺伝子組換え)として500mg を、1週間に1 回、皮下投与する。
2. 「レケンビ」について
「レケンビ」(一般名:レカネマブ)は、バイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、Aβの可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。「レケンビ」は、日本、米国、中国、カナダ、欧州(EU)、韓国、台湾、サウジアラビア等、53の国と地域で承認を取得しており、6カ国で申請中です。2023年9月に日本において「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」の効能・効果で承認を取得しています。18カ月間の隔週投与による初期治療後の 4週に1 回の 静注(IV) 維持投与について、米国、中国、英国等、9の国と地域において承認を取得し、11の国と地域で申請中です。米国において、2025年8月に皮下注射製剤「LEQEMBI IQLIK®」(米国製品名、「アイ・クリック」と発音)による維持療法(360 mg)の承認を取得しました。皮下注射製剤による初期療法(500 mg)については、2026年7月に米国、同年9月に中国で承認を取得し、2カ国で承認申請中です。
2020年7月から、臨床症状は正常で、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベルおよび陽性レベルのプレクリニカルADを対象とした臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)とのパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)で行っています。ACTCは、National Institutes of Health傘下のNational Institute on Agingによる資金提供を受けています。また、2022年1月から、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する顕性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit、以下 DIAN-TU)が実施する顕性遺伝アルツハイマー病(DIAD)に対する臨床試験(Tau NexGen試験)が進行中です。本試験において、レカネマブは抗Aβ療法による基礎療法として選定されました。
3. プロトフィブリルについて
プロトフィブリルは、ADによる脳損傷に寄与し、この進行性の深刻な疾患の認知機能低下に主要な役割を果たす、最も毒性が高い可溶性のAβ種であると考えられています。プロトフィブリルは脳内の神経細胞の損傷を引き起こし、その結果、複数のメカニズムを介して認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります1。そのメカニズムとして、不溶性アミロイドプラークの発生を増加させるだけでなく、神経細胞やその他の細胞間のシグナル伝達に直接的な損傷を起こすことも報告されています。プロトフィブリルを減らすことで、神経細胞への損傷や認知機能障害を軽減させ、ADの進行を防ぐ可能性があると考えられています2。
4. エーザイとバイオジェンによるAD領域の提携について
エーザイとバイオジェンは、AD治療剤の共同開発・共同販売に関する提携を2014年から行っています。レカネマブについて、エーザイは、開発および薬事申請をグローバルに主導し、エーザイの最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行います。
5. エーザイとバイオアークティックによるAD領域の提携について
2005年以来、エーザイとバイオアークティックはAD治療剤の開発と商業化に関して長期的な協力関係を築いてきました。エーザイは、レカネマブについて、2007年12月にバイオアークティックとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得しています。2015年5月にレカネマブのバックアップ抗体の開発・商業化契約を締結しました。
6. エーザイ株式会社について
エーザイ株式会社は、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念とし、この理念のもと、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することをめざしています。グローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん領域」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患をターゲットに革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。
また、当社は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット(3.3)である「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に向けた活動に世界のパートナーと連携して積極的に取り組んでいます。
エーザイ株式会社の詳細情報は、https://www.eisai.co.jpをご覧ください。SNSアカウントX、LinkedIn、Facebookでも情報公開しています。
7. バイオジェン・インクについて
1978年の創立以来、バイオジェンは世界をリードするバイオテクノロジー企業で、患者さんの人生を変革し、株主や私たちのコミュニティに価値をもたらす新薬をお届けするために革新的なサイエンスを開拓しています。私たちは優れた治療アウトカムをもたらすファースト・イン・クラスの治療薬や治療法を推進するために、人類の生物学に対する深い理解を応用し、異なるモダリティを活用します。私たちは長期的な成長をもたらすために投資利益率のバランスを考慮した上で、果敢にリスクを取るというアプローチを採択しています。
バイオジェンに関する情報については、https://www.biogen.com/ およびSNS媒体X、LinkedIn、Facebook、YouTubeをご覧ください。
- Amin L, Harris DA. Aβ receptors specifically recognize molecular features displayed by fibril ends and neurotoxic oligomers. Nat Commun. 2021;12:3451. doi:10.1038/s41467-021-23507-z
- Ono K, Tsuji M. Protofibrils of Amyloid-β are Important Targets of a Disease-Modifying Approach for Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2020;21(3):952. doi: 10.3390/ijms21030952. PMID: 32023927; PMCID: PMC7037706.
- Hampel H, Hardy J, Blennow K, et al. The amyloid pathway in Alzheimer's disease. Mol Psychiatry. 2021;26(10):5481-5503.